【スズキ バーグマン400 試乗記】ブームを乗り越え、スクーターに求められる資質を極めた大人のコミューター

掲載日:2021年08月31日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/佐賀山 俊行

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SUZUKI BURGMAN 400

ツーリングから通勤まで、あらゆるシーンで利便性に優れるビッグスクーター。そのなかでも、ワンランク上の乗り心地が評価されるのが400ccクラスだ。残念ながら現在国産モデルはスズキ バーグマン400が唯一のモデルとなってしまったが、熟成を重ねた400ccビッグスクーターとはどのようなものなのか、試乗してみた。

スズキ バーグマン400 特徴

華美な装飾や機能を廃し
スタイリッシュかつ実用性に溢れる

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2000年代はじめに巻き起こったビッグスクーターブームを、僕は今でもよく覚えている。というのも、当時僕はこの業界に入ったばかりで、日に日に街中に増えていくスクーター、毎年のようにモデルチェンジを繰り返すニューモデル、アフターパーツメーカーだけでなくショップ単位で発売されるカスタムパーツ、さらには僕が当時勤めていた出版社ではスクーター専門誌を創刊させるなど、ブームが生まれる勢いというものをこの目でじかに見たからだ。

当時はヤマハがマジェスティやグランドマジェスティ250/400、マグザム、ホンダがフォルツァやフュージョン(復刻版)、シルバーウイング400/600など、そしてスズキはスカイウェイブ250/400/650を主なモデルとしてラインナップしていた。ちなみにカワサキだって、スズキとのOEMでスカイウェイブをベースにしたエプシロン250なんてモデルを出していたのだ。それはもう、錚々たるラインナップといっていいだろう。

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ところが現在のラインナップを見てみると、なんとも寂しいかぎり。国内メーカーで250ccフルサイズを出しているのはホンダとヤマハのみで、それも1車種ずつとなっている。そして400ccクラスに関していえば、バーグマン400のみという状況だ。ちなみにホンダ フォルツァもヤマハ XMAXも、かつてのロー&ロングなクルーザースタイルではなく、ショートボディーのスポーティーなモデルとなっており、そういった意味では、かつての「ビッグスクーター」の佇まいを今に残しているのは、まさにバーグマン400のみと言っていいだろう。

しかし、これは裏を返せば、ビッグスクーターが淘汰されていくなかで、バーグマン400だけはユーザーのハートを掴み、生き残ることができたということ。では、バーグマン400が生き残った理由、そして魅力とはどこにあるのだろう。

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バーグマン400に搭載されるエンジンは水冷DOHC4バルブ399cc単気筒。最大トルクは35N・mで、最高出力は29PS。十分なトルクと、スクーターとしてはハイパワーともいえる出力は申し分なしといえるだろう。さらにデュアルスパークテクノロジー、つまりツインプラグ仕様とすることで、高い燃焼効率やスムーズな出力特性なども実現しているという。

さらに今回のモデルチェンジではトラクションコントロールを採用しているのもポイントだ。クラッチ操作やニーグリップによる車体操作ができないスクーターだからこそ、トラクションコントロールがあれば安心感は倍増。通勤などで雨の日などに乗ることも多いスクーターだけに、こうした装備は嬉しい限りである。

ほかにもスカイウェイブ時代から引き継いだカットフロアボードは、バーグマン400でも健在。足付きの良さに貢献している。

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かつてのスクーターブームでは、毎年のようにモデルチェンジが行われ、MTモードをはじめ、各車、派手な装備や機能をどんどん充実させていった。しかし、バーグマン400にそうした機能は見られない。つまり、バーグマン400の魅力とは、こうした無駄のなさ……スクーターが本来必要とされる機能や装備を絞ることによって生まれる気軽さや快適性にこそあるのではないかと、僕はあらためて思った。

そういえば、250ccフルサイズスクーターの代わりに台頭してきたのは、排気量150~160ccのミドルスクーターである。これらのモデルもやはり、派手な機能を有さず、コンパクトな車体とパワフルなエンジン、そしてスクーターの利便性を追求したユーティリティー性能が魅力だ。ということは、バーグマン400とはその対極……つまり、400ccならではの大きな車体と積載力、トルクフルなエンジンによる余裕の走りという、多くの人が大型コミューターに求めるものを追求した結果ということになるのだろう。

スズキ バーグマン400 試乗インプレッション

シンプルかつ快適で、
利便性に優れたスクーター

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取り回してみると、意外と重量を感じたことに驚く。サイズ的に、なんとなく250ccスクーターと同じような心持ちで挑んだのだが、やはり400ccである。ちなみに車両重量は218kg。重いどころか、スカイウェイブ400に比べると軽量化を果たしているくらいだ。こちらの勝手なイメージ+ロー&ロングの低重心がそう感じさせるようだ。

またがってみると、意外なほどコンパクトなことに、2度目の驚き。正直、フルサイズのビッグスクーターに乗ったのは数年ぶりなのだが、もっと大柄なものだと思い込んでいたが、バーグマンは適度にハンドルが寄せられ、シートとステップボードの位置関係も絶妙なようで、普通に椅子に腰掛けるよなポジションで座ることができた。ただし、僕の身長は161cmなので、大柄なライダーだと少し窮屈に感じるかもしれない。

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エンジンを始動して、いざ走り出す。さすが400ccのパワーはなかなかのもの。先ほど取り回しで感じた重さなどは微塵も感じられない(まぁ、もともと車両重量は218kgと、決して重いわけではないのだが)。走り始めのトルクが力強く、ストレスを感じない。デュアルスパークテクノロジーが効いているのか、レスポンスも良いし、吹け上がりも上々。ストップ&ゴーの多い街中でも、キビキビと走ることができる。そして、カットフロアボードと絶妙なシート形状のおかげで、信号待ちでもスッと足をおろせる。街乗りでは、この足の上げ下げのしやすさが重要だ。バーグマン400はコンパクトなライディングポジションも相まって、街乗りでは車体の大きさを一切感じさせない。

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そのまま高速道路に入る。ウインドスクリーンはコンパクトなフロントカウルに合わせたデザインだが、風防効果は十分なもの。両腕には当然、風が当たってしまうが、ヘルメット上部までしっかりプロテクション効果を感じることができた。これなら長距離走行でも疲労感はかなり少ないはずだ。

ハンドリングは軽快で、ワインディングもそれなりに楽しめる。それでいて直進安定性もしっかりしているので、高速道路でも不安はない。まさにオールマイティー!

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シンプルかつ快適で、利便性に優れたスクーター……だけどミドルスクーターは小さすぎる。バーグマン400は、そんなユーザーに自信を持っておすすめできる1台である。

スズキ バーグマン400 詳細写真

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左側にスピード、右側にタコメーターを備えたスポーティーなメーター周り。時刻や燃料残量、エコドライブインジケーター、トランクションコントロールインジケーターなど、車両の情報をわかりやすく得ることができる。

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ハンドル下の左右それぞれにグローブボックスを装備。左側は容量が少なく2.8L(0.5kg)、右側が3.5L(1.5kg)となっている。

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右側のグローブボックスは奥が深くなっているので、500mlのペットボトルなどを入れることができる。さらに奥には12V DCソケットを装備しており、携帯電話などを充電することが可能。

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フロントホイールのサイズは15インチ。ブレーキはダブルディスクで、ABSは標準装備となっている。

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クッション性に優れたシートは、長距離ライディングでも疲れが少なかった。バックレストの位置は2段階で調整が可能。ライダーの体格などに合わせることができる。また、前方を絞り込んだ形状にすることで、足付き性の良さを実現している。

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ブルーのダブルステッチ仕上げがルックスのアクセントとなっている。高級カスタムシートを思わせる意匠で、細かないながらもオーナーの所有感を盛り上げてくれるポイントといえよう。

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シート下トランクは42Lの容量を確保。フルフェイスヘルメット1個とジェットヘルメット1個、さらにグローブや雨具などのライディングギアを入れられる。

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スカイウェイブ時代からのスズキのこだわりが「カットフロアボード」。その名の通り、フロアボードの足もと付近を絞り込むことで、足付き性を向上させている。地味なようだが、めちゃくちゃ利便性の高いディテールである。

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大型サイレンサーは静粛性とともに見た目のアクセントにもなっており、シュッとしまったテールデザインとの対比で、メリハリのあるリアビューを演出している。カーボン調のガードもスポーティーだ。

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エンジンは水冷DOHC4バルブ399cc単気筒。最大トルクは35N・mで、最高出力は29PSとなっている。デュアルスパークテクノロジー(いわゆるツインプラグ)によって、スムーズな出力特性や高い燃費性能などを実現している。

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テールランプにLED を採用し、両端にウインカーを配置。テールカウルの形状を絞ることで、スタイリッシュなリアビューとなっている。

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車体右側下部にある三角形の穴は、「セキュリティゲート」と呼ばれるチェーンロックを通すためのもの。この穴に長めのロックをかけて、ガレージなどにある構造物に繋げば、盗難抑止効果を大きく高められる。

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