掲載日:2020年07月01日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
SYM JOYMAX Z 250
2000年代初頭頃に大流行したビッグスクーターといえば、ロー&ロングなボディが特徴的だった。しかし昨今はショート&ハイトなヨーロピアンスタイルが主流となっている。ジョイマックスZ 250もその流れをくんでおり、ボディサイズは比較的コンパクトだ。
フロントフェイスは直線的にシェイプされたデザインと大きめのヘッドライトレンズの組み合わせで、都市にマッチするモダンな雰囲気だ。大きめのウインドスクリーンを配することで、スーツを着て街を走るコミューターとしての実用性と、高速に乗ってツーリングするなどの趣味としての楽しさ、そのどちらのシーンも似合うコミューター&クルーザーというイメージを醸し出している。
日本で販売されているSYMの250ccスクーターにはもう1つ、価格帯も高めで高級クルーザー志向の「クルージム250」という車種がある。それに比べるとジョイマックスZはスタンダードタイプといえるポジションだ。しかし、灯火類がテールランプのみにLEDを採用するなどコストを抑えた面はあるものの、USBアクセサリーソケット付きのグローブボックスや、2段階に高さ調節が可能なウインドスクリーン、液晶付きの多機能メーターパネル、ヘルメットが2個入る容量たっぷりのラゲッジボックス(内部照明付き)、ABS&前後ディスクブレーキなど、スクーターに求められる装備はきっちりと押さえているのだ。これだけの装備なら必要十分、いや、むしろそれ以上と言えるかもしれない。
跨がるとまず感じるのはシートの低さだ。外観の雰囲気からイメージするともっと戦闘的なポジションかと想像していたのだが、シート高は747mmで足つき性がとてもよく、ハンドルも手前に引かれていて、けっこうリラックスした姿勢で乗ることができる。タイヤサイズがフロント14、リア13インチということもあってか、見た目以上にコンパクト。ちなみに同じヨーロピアンテイストの250ccスクーターであるホンダのフォルツァはフロント15、リア14インチのタイヤを採用し、シート高が780mmもあるので、ジョイマックスZ 250のシートがかなり低いことがわかる。
エンジンをかけるとアイドリングは力強く、排気音にも迫力がある。最高出力は15.8kw(約21.5ps)とごく標準的な値だが、アクセルを開けると低めの排気音が響き、車体はグイと前に押し出される。とてもパワフルで小気味よい加速を味わえるのだ。ゼロからのスタートダッシュでアクセルを全開にすると、だいたい2秒ちょっとで60km/hに達し、そこからの速度の伸びもストレスがなく素直なもの。エンジンはまるでモーターのように滑らかに回り、振動もほぼなく快適だ。通勤・通学に使うとすると、渋滞時にクルマの間を縫うような走りでは原付2種や150ccクラスのような小回りのきく車種に分があるが、ある程度の速さで流れるバイパスなどでは、かなり戦闘力の高いマシンになるはずだ。
そのまま高速道路に乗り入れ、100km/h前後で流してみる。タイヤサイズが小さめなのが少し心配だったが、振動は少ないし、路面の荒れや少々横風が吹いたりしてもタイヤはピタリと路面に張り付き、車体はとても安定していて乗り心地も良好だった。何よりも恩恵を感じたのは、その大きなウインドスクリーンのおかげで、体に直接風が当たらないこと。当初はスクリーンを高い位置にセットしていたので防風効果が高いのは当然だと思っていたが、のちに低い位置で走行してみたところ、こちらでもかなり風を防いでくれるのを実感できた。これなら、長時間のライディングでも疲労度は少ないはずだ。
郊外のちょっとしたワインディングで中~高速コーナーを走ってみると、前後のサスはよく粘るうえに路面ショックの吸収性にも優れており、前後ディスクブレーキのおかげで制動力も十分。バンク角も37°と深く、かなりスポーティな走りを楽しむことができた。ライディングポジション自体はカリカリとした走りに向いた方向性ではなくリラックスした姿勢のため、「攻める」というよりは「景色なども楽しみながら、キビキビとした走りを堪能する」という感じだ。よっぽど登り勾配のキツい場所でもない限りコーナーでもたつくような非力感はないので、ツーリング時にもストレスのない走りが楽しめるはずだ。
パワフルでスポーティなエンジンと十分なユーティリティをあわせ持つジョイマックスZ 250は、実用性と趣味性がうまくバランスしたモデルとなっている。通勤・通学を楽にこなしてくれるのはもちろん、ツーリング時に軽快な走りも楽しめるマルチなスクーターだ。これでメーカー希望小売価格が45万円(税別)というのだから、文句なしに超お買い得な1台、と言えるだろう。