ホンダ フォルツァZ ABS
ホンダ フォルツァZ ABS

ホンダ フォルツァZ ABS – スポーツできる実用品

掲載日:2010年05月20日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

スポーツできる実用品
フォルツァZ ABS

「道具としては優れている」。経験豊富なライダーがビッグスクーターを語る時によく聞くフレーズである。この言葉にはさまざまな意味が含まれていると思われるが、「1台あるととても便利だけど、2輪車としての面白みに欠ける」というのがその真意ではないだろうか。確かに、通常のバイクと比べると弱々しい後輪の駆動力や、小径タイヤがもたらす不安定感は2輪車を操る面白さをスポイルしていると言えなくもない。しかし、このキャラクターを薄めることはスクーターとしての気軽さや敏捷性を捨てることでもあり、それでは実用的な乗り物としての地位が危うくなる…。

こうしたジレンマを抱えつつも、その先進的なスタイリングや実用性、カスタムの可能性などを敏感に察知した柔軟なライダーを中心にビッグスクーターは大ヒットに至った。そしてそれをきっかけに各メーカーの開発も加速。スクーターの弱点を克服したモデルが続々とデビューしているというのが現在のビッグスクーターシーンである。

こうした流れの中で中心的な存在となっている1台が、今回テストしたホンダのフォルツァZ ABSである。このモデル最大のトピックは、後輪駆動力を自在に操れる多彩なモードを搭載した「SマチックEvo」だ。果たして、進化したオートマチックトランスミッションがフォルツァの走りをどのように変えたのか。早速検証してみよう。

ホンダ フォルツァZ ABSの試乗インプレッション

ホンダ フォルツァZ ABSの画像

ホンダの意欲作フォルツァZ ABSは
ロードスポーツ兼ツアラー兼実用車

スマートカードキーを携帯し車両に接近するだけでイグニッションのオン・オフ、各種ユーティリティスペースの開閉が可能となり、さすがに最新ビッグスクーターの高い利便性を意識させるフォルツァZ ABS。フロント収納スペースは引き出し式の左右2分割タイプで、収納物の出し入れや確認がとても便利だ。また、ビッグスクーターでは重要なファクターとなるシート下収納スペースは広大で、63リットルもの大容量を確保している。しかし、もはやこういった利便性だけではセールスポイントとはなり得ないというのが現在のビッグスクーターである。肝心の走りを早速味わってみよう。

ホンダ フォルツァZ ABSの画像

キー操作することなく始動したエンジンに若干の戸惑いを感じつつも、走り出すとエンジンがとてもマイルドに調教されていることが分かるフォルツァZ ABS。経済走行の「Dモード」であれ、加速重視の「Sモード」であれ、通常走行をカバーするモードを選んでいる限りエンジンの整然とした吹け上がりと快適性が印象に残るだけで、ほとんどドラマチックな要素はない。しかし、最初の交差点を曲がっただけでハンドリングが格段に進歩していると感じた。旧来のスクーターが小径リアタイヤをアウト側に振り出すようにしてコーナーリングしていたように感じるのに対して、フォルツァZ ABSはその感覚が少ないからだ。車体を倒し込む時の軸やリアタイヤ接地面の無用な動きが抑制されグリップ感も安定しているため、通常のロードスポーツバイクに近いコーナーリングが味わえるのだ。また、全速度域でコンバインドABSの出来の良さが際立っている。これは通常のアンチロックブレーキに左レバーを引くと前後連動して作動するコンビブレーキシステムを組み合わせたもので、程よく前輪に配分された制動力がフロントまわりのフワフワ感を押さえ込んでくれるため、いざと言うときの急制動のみならず、すり抜けなどの低速走行時でもスクーターとは思えないほどの安定走行が可能だ。通常の走行では右レバーの必要性を感じないぐらいなので、イージーなライディングを基本とするビッグスクーターにはとても相性の良いシステムだと思う。

そして、このフォルツァZ ABSが本領を発揮するのは、アクセルを思い切って開けることができるワインディングや高速道路である。右手のモード切り替えスイッチにて選択可能となる「Aモード」では自動的に負荷を判断して最適な駆動力が得られるポジションへシフトするため、流れの速い郊外や高速道路のクルージング、山沿いの坂道などでもストレスを感じることがない。また、より積極的にエンジンの高い回転数を使用するS7モードやマニュアルモードを選択すれば、レブリミット付近までキッチリとエンジンの全回転域を使い切ることができるため、従来のスクーターとは別次元の速さが味わえる。選択したモードやポジションによってはエンジンブレーキのバックトルクも適度に発生し、走り慣れたワインディングをスポーツバイクのように駆け抜けることすら可能だ。これほどスポーティな味付けのエンジンとトランスミッションを組み合わせているのだから当然車体側への要求も高くなるが、高速走行でもビシッと安定している走りっぷりから十分な車体剛性が確保されていることが感じ取れる。それに加えて前述のナチュラルなハンドリングとコンバインドABSが組み合わされているのだから、その走りはもはやスクーターという枠を超えていると言っても過言ではない。

ホンダ フォルツァZ ABSの特徴は次ページにて

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索