ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター
ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター

ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター – 新しいスポーツスターの定義

掲載日:2009年05月14日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

ブラック&グレーで全身を覆った
流行の最先端を行くモデル

「メーカーはどこまで作りこめるのか」。まるでそんな命題を与えられたかのように、ハーレーはここ数年、ファクトリーカスタムと呼ばれるカテゴリの車両を世に送り出している。ソフテイル・ロッカーCやクロスボーンズが代表的なモデルだが、スポーツスターファミリーにおけるファクトリーカスタムモデルといえば、XL1200N“ナイトスター”になる。2008年10月に登場したこのモデルは、ブラック&グレーのパーツを各所に装着しており、全体的にダークな印象となる一台に仕上げている。事実、各ディーラーの販売状況においても2年連続で好調を維持しており、ユーザーが求める姿を具現化したモデルといっていい結果を生んでいる。このスタイルが現在の流行であることを裏付けるかのように、2009年3月にはXL883シリーズでブラックアウトされたモデル「XL883Nアイアン」が登場した。そんな流行の最先端を走るナイトスターが、実際にはどれほどの魅力を秘めているのか、当編集部が試乗インプレッションを行った。

ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター 試乗インプレッション

ダークな風貌の中に隠された
新しいスポーツスターの定義

ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター 写真これまでディーラーで何度も目にしてきたナイトスター。実際にまたがってみると、確かに車高はかなり低い。スポーツスターファミリーの中でもっとも低いXL1200Lよりもローダウンされているということだが、173センチの筆者だと足がベタ着きで、ヒザにもかなり余裕がある。ハンドルの幅は肩幅より少し外に出ている程度で、小柄な日本人向けといってもいいポジショニングだ。次に車両の取り回しだが、重心が低いので車体全体のバランスがよく、同じスポーツスターの1200シリーズの中でも安定感に秀でている。取り回しを確認したところで、エンジンをかけて試乗開始。小気味いい鼓動とともに発進したナイトスターは、その車高の低さから、バランスのいいライディングが楽しめることを教えてくれた。走行時の目線はほかのスポーツスターと比べるとかなり低くなっており、自動車の運転席とほぼ並行といったところ。それゆえバンク角が浅く、コーナーリングの際はステップを擦ることもしばしばあるが、速度を抑えつつ、少しゆとりを持って曲がっていけば何の問題もない。

ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター 写真それよりも特筆すべきなのが直進走行の安定性だ。重心の低いコンパクトなボディは、高速道路におけるテスト走行においても抜群のバランス感覚を発揮した。この日はかなり風が強く、湾岸線に吹き付ける潮風は相当なものだったが、まさしく「地に足をつけた」走行で高速道路を巡行。横殴りの風を浴びても車体が大きく揺さぶられることはなく、まるでクルーザーに乗っているかのような気分を味わわせてくれた。深々と座り込めるローシートもクルージングの手助けとなっており、個人的には「スポーツスター版ローライダー」といった印象を抱いた。では、街乗りの場合はどうなのか。東京都内で市街地走行を行ったが、せいぜい3速までしかギアが上げられない渋滞路でも性能の高さを証明した。柔らかいハンドリングは状況に応じたスムーズな取り回しを可能にし、前後に装備されたディスクブレーキは急制動を行ってもブレーキのコントロール性がいい。「街乗りバイク」としても十分楽しめる一台だ。従来のスポーツスターとしての特性を生かしつつ、クルーザーとしての要素を加えたニュータイプのスポーツスター…。ナイトスターの試乗で感じた一番の魅力はこれだった。

ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター 特徴

レトロな雰囲気を醸し出す最新スタイル
オーナーを悩ませる完成度の高さ

ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター 写真2008年までスポーツスターファミリーといえば、883ccと1200ccの排気量別で、「ノーマル(※883のみ)」「ロードスター」「ロー」「カスタム」の計7類が基本モデルとなっていた。そこに現れたナイトスターは、これまでユーザーがオリジナリティを出すために施してきたカスタムを、ハーレーダビッドソン自らが手がけたファクトリーカスタムモデルとして登場したのだ。カスタムを前提にハーレー購入を考える人に対して新しい回答を提示したわけだが、ハーレーの長い歴史を紐解くと、このファクトリーカスタムは時代の潮流が生み出すスタイルであることがうかがえる。例えば、現在ダイナファミリーの中で長年にわたって親しまれているローライダーも、1977年に初めて登場した際はファクトリーカスタムモデルと呼ばれていた。今回のナイトスターも、時代が求めたスポーツスターの新しいスタイルなのだ。

ナイトスターの外装でもっとも目を惹くのが、ブラック&グレーにカラーリングされたパーツの多用だ。エアクリーナーなどのエンジンまわりやフロントスポーク、ハンドルバー、サイドミラー、ヘッドライトカバー、シフトレバー、さらに前後ホイールと、細かなパーツに至るまでダークなカラーリングにまとめられている。クロームパーツが多いことで知られるハーレーにおいて対極に位置するスタイルといえるが、これにより全体的にワイルドな雰囲気が漂い、ナイトスター独特の魅力を生み出している。フロントフェンダーサポートとベルトガードはパンチング(穴あき加工)されている点など、「分かる人にだけ理解してほしい」といった、ハーレー通に対するさりげないこだわりが垣間見える。さらにスタイリングを際立たせているのが、フォークブーツとフューエルタンク、そしてフロントフェンダーの3点だ。フォークブーツは純正パーツを標準装備したもので、ブラックアウトされたスポークホイールとともにヴィンテージテイストを演出している。フューエルタンクは883ccに装着されている容量12リットルのミニタンク。「よりスタイリッシュに魅せたい」というユーザーの要望を取り入れたカスタムだといえる。そしてフロントフェンダーだが、タイヤとのクリアランスを狭めることで、足回りをよりスリムに見せている。これは2008年ナイトスターから取り入れられたスタイルで、2009年モデルのスポーツスターファミリー全般に採用されることとなった。

車体全体のローダウンも、スタイリングを重視してのもの。前後にはショートタイプのサスペンションを装着。さらにローシートを取り付けることで走行時における加重の位置を低く保ち、走行時の安定感を実現。流麗なスタイルとの両立に成功している。そして見逃してはならないのがリアフェンダーだ。2009年モデルよりショートフェンダーに変更しているのだが、ここに取り付けられている「LED一体型ターンシグナル」は、ウインカーとテールランプが一体化した斬新な形状をしている。現在このパーツは、ナイトスターとXL883Nアイアンだけに使用されている。こうしたカスタム車両を見かけることはままあるが、これをメーカーが手がけ、なおかつノーマル車両として販売しているという事実に驚きを隠せない。従来のウインカーだと黄色一色に光るのみだが、ナイトスターのブレーキをかけてみると、ウインカー機能とは別に区分けされた部分が赤く輝く。視覚的にもブレーキランプと認知できるので何の問題もない。ほかのスポーツスターファミリーの中から選んだものにこのカスタムを施すことを考えれば、この一体型シグナルが標準装備されていることの魅力は大きい。「こんなカスタムをしたらカッコいいだろうな」というユーザーの想いを汲んだ、高い完成度を誇るスポーツスター・カスタム、それがナイトスターだ。

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SPECIFICATIONS - HARLEY-DAVIDSON XL1200N NIGHTSTER

ハーレーダビッドソン XL1200N ナイトスター 写真

価格(消費税込み) =
141万5,000円(モノトーン)
144万6,000円(ツートン)

車体全体がブラックアウトされたスポーツスター1200シリーズのニューモデル。ダークなイメージのスタイルに加え、ウインカーとテールランプが一体化した「LED一体型ターンシグナル」が注目を集める。

■サイズ = 全長2,245×全幅935×全高1,140mm
■ホイールベース = 1,510mm
■最低地上高 = 130mm
■加重時シート高 = 676mm
■タンク容量 = 12L
■エンジン = Evolution

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