掲載日:2008年08月20日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
一昔前にくらべると随分と落ち着いた感があるクルーザーカテゴリ。90年代には国内でも中型、大型を含めて数多くのモデルが全メーカーでラインナップされていた。現在では国内販売モデルでこそクルーザーの数は抑えられているが、アメリカでは今でも人気は高い。国内販売モデルでは5種類しかないクルーザーが、アメリカで20種類以上のラインナップがあるのだ。中でもいわゆる“国産アメリカン”と呼ばれるモデルの源流はハーレーにあり、その母国アメリカでは今、空前のクルーザーブームの最中。メーカーが販売する車両をベースに、著名なカスタムショップが製作する車両が信じられない価格で飛ぶように売れている。TV番組でもチョッパーなどのカスタムを取り上げており、メーカーが製作する車両もその影響を大いに受けているのだ。
今回ご紹介するヤマハ「XV1900CU RAIDER(以下、レイダー)」は「メーカーが製作したカスタム車両」と言っていいほど思い切ったデザインをしているモデルで、細部の作り込みを見れば「よくもここまで…」と驚かされてしまう。日本では登場から間もなく、まだまだ知られていないモデルだが、このモデルの魅力について紹介したい。
レイダーのベースとなったのはヤマハクルーザーの頂点に位置するロードライナーシリーズ(日本ではXV1900A Midnight Starが逆輸入されている)だ。同じ空冷Vツインの1854ccを心臓部に持つものの、インジェクションシステムを熟成させ、マフラー形状に工夫を凝らした結果、より太い低速トルクを発揮するエンジンとなっている。極太の210mmリアタイヤや寝かされたフロントフォークから“走らない”バイクとの印象を受けがちだが、そこはさすがヤマハ。フォークを寝かせると必然的にキャスター角とトレール量が大きくなり、極端に切れ込んでしまう不自然なハンドリングになってしまう。しかし、レイダーではトップブリッジとアンダーブラケットのオフセット量を変更することで自然なハンドリングを確保している。寝かされたフロントフォークと新設計のリアアームで1799mmと直進安定性の高いロングホイールベースを実現しながらも、ただの直線番長ではないコーナリング性能を実現しているのだ。
また、メーカーが“完成されたカスタムスタイル”と謳うスタイリングもレイダーの特徴だ。210mmというワイドリアタイヤに、各部におごられたクロームパーツの数々。スポーツバイクとは違い、クルーザーでは「いかに魅せるか」も求められるのだが、乗り手の所有感を満足させる隙のない完成度だ。特にそれを感じさせるのがハンドルクランプの鋭角的なデザイン。機能的には何ら影響を与える部分ではないが、走行中に視界に入るパーツだけにデザイン性の高い凝った作りとなっている。アメリカが主戦場のモデルだからこそ、ここまで遊び心のあるデザインが実現できたのだろう。国内販売モデルではまず見られない造形だ。また、ハブ部が星型の形状となったホイールは、ノーマルパーツではなく、後付けのカスタムパーツと見まごうデザインとなっている。ハーレーを中心としたアメリカのカスタム市場の中で、どのようなパーツが評価されているのか、しっかりとマーケティングを進め、チョイスされたホイールデザインだ。