ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター
ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター – スポーツする楽しさを体感できる

掲載日:2008年05月07日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

51年の歴史を持つスポーツスター
その魅力をご紹介します

今回紹介するXL1200Rは、30ものラインナップがあるハーレーの中では常に人気の上位にあるモデルだ。初代のスポーツスターは1957年、51年も前に誕生している。アメリカに進出して若者に人気を博していたトライアンフなどの英国車に対抗し、スポーツ性能を高めたハーレーとして開発されたのがスポーツスターのルーツだ。「スポーツ」という名を冠してはいるものの、現在の水冷4気筒スーパースポーツなどとは性能的には比べものにならない。しかし、100馬力を優に超えるバイクにはない何か、をスポーツスターは確かに持っており、ハイスペックなマシンがいくらでもある中でスポーツスターを選ぶユーザーが後を絶たない。また、スポーツスターを「ビックツインモデルの廉価版」と捉えて選ぶ人も多いのは確かだが、スポーツスターの魅力はビックツインとは別のところにある。ハーレーの中でも異質の魅力を持つのがスポーツスターなのだ。そのスポーツスターのフラッグシップと言うべきXL1200Rの魅力についてご紹介しよう。

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター 特徴

注目すべきなのは
足回りとブレーキの充実

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター 写真今回の撮影用に借りたのはディーラーの試乗車。そのため、エンジンガードが装備されているが、これはノーマルで装備されているものではない(純正オプションで購入可能)。実際のXL1200Rはもう少しシンプルなフォルムとなっている。2008年モデルのXL1200Rはエンジンなどの機能面に大きな変更はないが、スタイル面では従来の12.5Lタンクから17Lへと大柄なタンクが採用され、見た目の印象は大きく変わった。1200ccのスポーツスターモデルは4種類あるが、XL1200N以外の1200シリーズはすべて17Lタンクを装備している。一方883ccのシリーズは12.5Lタンクを装備するのが中心。トルクフルでロングツーリングを楽々とこなしてくれる1200シリーズの場合は、伝統的なスタイルを守り続けるよりも航続距離が重視されたのであろう。ブラックアウトされたOHV1200ccエンジンは、ビックツインのツインカムエンジンがその名の通り2つのカムで制御されるのに対し、バルブの開閉を4つのカムで制御する。これによりさらにスポーツ向きのエンジンとなっているのだ。この4カムがスポーツスターのエンジンの特徴。現在ではもはや高性能とは言えないが、1957年の初代スポーツスターの登場以来守り抜かれている伝統的な機構なのだ。スポーツスター独自のエンジンフィーリングはOHVエンジンとこの4カムによるところが大きい。

エンジンをブラックアウトする手法はXL1200Rでは2006年式モデルからの採用。メッキやポリッシュなどエンジンのルックスはモデルによって違いがあり、こういった外観の違いから車種選びを行うユーザーは多いだろう。ただし、スポーツスターはモデルによってブレーキや足回りにも違いがあるので注意が必要。もっとも充実した装備を持つのは1200シリーズではXL1200R、883シリーズではXL883Rだ。前後サスペンションの全長がもっとも長く、フロントにダブルディスクブレーキがおごられている。スポーツスターで“スポーツ”を楽しみたいと思うのならば、この2モデルの中から選ぶべきだろう。また、レイク/トレール(走りを左右する数値。フロントフォークの長さや取り付け角度によって変わる)も同じスポーツスターでもモデルによって違う。XL1200Rは1200シリーズの中でもっともフォークが立ったスポーツ向きの設定になっており、これも走行性能に影響を及ぼしている。

2007年モデルから吸気システムにインジェクションシステムが採用された。2008年モデルで2年目となり、点火タイミングなどのデータも熟成が進み、ノーマルのままでも味わい深いエンジンフィーリングとなっている。

インジェクション採用の1200cc

2007年モデルから吸気システムにインジェクションシステムが採用された。2008年モデルで2年目となり、点火タイミングなどのデータも熟成が進み、ノーマルのままでも味わい深いエンジンフィーリングとなっている。

跨った当初は「ハンドル幅が広い」と感じるかもしれないが、慣れてしまえば快適でスポーツ走行を邪魔しない絶妙なポジションだということがわかる。ハンドル交換をするとしても、保管しておくべきだろう。

幅広のノーマルハンドル

跨った当初は「ハンドル幅が広い」と感じるかもしれないが、慣れてしまえば快適でスポーツ走行を邪魔しない絶妙なポジションだということがわかる。ハンドル交換をするとしても、保管しておくべきだろう。

肉厚だがシート前端の幅が詰められており、足つき性は悪くない。腰周りを優しく覆うようなシート形状はツーリングからスポーツ走行まで、状況に合わせて着座位置も容易に変更できる。

肉厚なノーマルシート

肉厚だがシート前端の幅が詰められており、足つき性は悪くない。腰周りを優しく覆うようなシート形状はツーリングからスポーツ走行まで、状況に合わせて着座位置も容易に変更できる。

かつてはダイナファミリーにも採用されていた伝統のヘッドライトバイザー。以前はポリッシュだった仕上げも現在はクロームメッキとなり、見た目にも高級感が漂っている。

伝統のヘッドライトバイザー

かつてはダイナファミリーにも採用されていた伝統のヘッドライトバイザー。以前はポリッシュだった仕上げも現在はクロームメッキとなり、見た目にも高級感が漂っている。

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター 試乗インプレッション

スポーツする楽しさを体感できる
イマドキ珍しいオーソドックスさ

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター 写真私は1997年式の1200ccのスポーツスターを長らく愛用してきた。前後サスペンションは現在のXL1200Rに近い仕様のため、今回の試乗はエンジンやフレームなどがどれほど進化しているのか、比較するにはいい機会となった。2008年モデルでタンクが大柄になったことについては、特に不満はない。そもそも1957年の初代のスポーツスターをはじめとして、それ以降も何種類もの大型タンクが採用されてきた歴史があるからだ。17Lタンクになったことで巡航距離は恐らく350kmほどになったのではないだろうか。それ以外にもタンク大型化のメリットはある。従来のタンクだと、スポーツスターは右側のステップがかなり外に出ているように感じていたのだが、17Lタンクだとフットポジションに違和感がないのだ。タンクは自然にニーグリップでき、国産バイクから乗り換えるユーザーも戸惑わないだろう。吸気システムにインジェクションが採用されているため、セルを回せばエンジンは一発で始動。試乗した日は気温が高かったこともあり、始動直後こそアイドリングが一瞬高くなったものの、すぐにアイドリングは落ち着き、マフラーは心地いい排気音を奏ではじめた。ノーマルマフラーの排気音は思ったよりは元気。以前、ビックツインを試乗したときは「静かなものだ…」と感じたものだが、この排気音なら不満はない。

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター 写真走りはじめると、エンジンはスムーズに回りはじめる。私のスポーツスターに初めて乗ったときは「このエンジン、壊れているのか?」と思ったものだが、不快な振動もなくトルクフルに回るエンジンへと進化している。昨年のXL1200Rよりエンジン回転がスムーズになっている気がするが、ノーマルのインジェクションデータが何度か変わっており、より熟成が進んだ結果なのだろう。わざとアクセルを全閉、全開にしてみると、タイミングが少し遅れてエンジンはスロットル操作に反応を示す。インジェクションでスムーズな反応ができないはずはないので、これはわざと以前のキャブレターモデルのような味付けにしているのだろうか。こういった細かなテイストにもこだわっているのだとしたら「さすがはハーレー」と言ったところだ。スムーズ過ぎないこの設定は個人的には気持ちよく感じられる。驚かされたのはワインディングを走ったとき、私のスポーツスターより綺麗にスムーズに曲がれたこと。スポーツスターはコーナリングに癖があったはずなのだが…。2004年以降のモデルではフレームが大型化され、各部の剛性は確実に向上している。足回りは決して高級なものではないが前後のバランスが取れており、これも乗りやすさに大きく貢献しているはず。例え高級品であっても、フロントとのバランスを取ってリアサスペンションを交換しないと、逆に乗りにくくなってしまうかもしれない。また、ホイールベースもわずかではあるが長くなっており、現行モデルの安定感はこういったところにも理由があるのだろう。XL1200Rは決してヒラヒラと走ることができるモデルではない。しかし、思った通りのラインで曲がることができる。しっかりとブレーキをかけ、ギアを落とし、乗り手が正確に操作してやればきちんと応えてくれるバイクだ。他メーカーのスポーツバイクには乗り手の技術をカバーしてくれる至れり尽くせりの機能を備えたモノも多いが、ライダーが操る楽しさをしっかりと感じられるのはXL1200Rの方が上。スポーツスターが人気なのはこの操作感にもあるのだろう。スポーツライディングを楽しむベースには最適なバイクだ。

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター こんな方にオススメ

足回りのバランスが良く
オールマイティに楽しめる

2004年以降にラバーマウントエンジンになり、ダイナファミリーと比較されることが多いスポーツスターだが「スポーツ」を楽しみたい人なら、迷うことなくXL1200Rを選ぶべきだろう。Vツインのバイブレーションを満喫するのならダイナファミリーの1584ccエンジンに軍配が上がるが、スポーツスターの魅力はエンジンフィーリングとスポーツライディングをバランスよく楽しめること。オールマイティに使いこなすには最適なバイクだろう。個人的な意見だが、スポーツスターはビックツインと比較して選ぶものではない。どちらかで迷っている人は最初からビックツインを選ぶべきだ。スポーツスターの比較対象になり得るのは…あえて言うならば、トライアンフ「ボンネビル」やヤマハ「SR」などか。こういったバイクとで迷っている人にこそXL1200Rはオススメしたい。また、他の1200シリーズとは足回りが違うため、スタイルだけではなく、スポーツ走行を楽しみたい人は迷わずXL1200Rを選ぶべき。

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター 総合評価

バイクの楽しさを教えてくれる
正常進化した現行モデル

ハーレーの不思議なところは、新しいモデルが常に支持されるわけではないということ。特にエンジン仕様などの変化はそれまでのユーザーから厳しい目で見られることが一般的だ。2004年にスポーツスターが現在のラバーマウントエンジンになったときも、ユーザーはフレームが小柄な旧モデルを懐かしんだ。しかし、今回XL1200Rに乗ってみて、現行モデルがいい方向に進化していることが確信できた。配線処理やプラスチック製パーツが増え、質感が下がった部分は確かにある。しかし、それ以上に“バイクを操る楽しさ”が増しているのだ。旧フレームのスポーツスターに乗る私は、旧いモデルの良さも重々わかっているものの、とっつきやすさは現行モデルの方が間違いなく高い。いきなり乗っても、それなりに走れてしまうバランスの良さも素晴らしい。「スポーツスターはバイク史に残る名車だ」と常々考えている私にとっては、より多くの人が楽しめるであろう、現行のスポーツスターは手放しで評価できる素晴らしいモデルだ。現行モデルに乗って「もう少しテイストフルなフィーリングが…」と思うのであれば、快適さには劣る旧モデルに乗ればいい。

SPECIFICATIONS - HARLEY-DAVIDSON XL1200R SPORTSTER 1200 ROADSTER

ハーレーダビッドソン XL1200R スポーツスター1200ロードスター 写真

価格(消費税込み) =
128万3,000円(モノトーン)

2008年式XL1200Rは17Lタンクが採用されたこと以外に大きな変化はないが、インジェクション採用2年目となり、ROMデータの熟成がさらに進み、その軽快な乗り味にさらに磨きがかかった。

■エンジン = Evolution 1,202cc
■最大トルク = 90Nm/2,900rpm

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