バイクに乗ることの楽しさを原点回帰する方法。それはやはりシンプルな車体構成のチョッパーや、ボバーに乗ることだろう。そのためのカスタムワークに情熱を傾けるパーツ構成が見事なK&Wは、スプリンガーフォークの装着という方法にも、独自のノウハウを注入してきた。
スプリンガーフォークやガーダーフォーク等は、現在のテレスコピックタイプになる以前のサスペンション形式で、それが主流だったのは60年から70年も以前の時代である。元々普通の自転車にエンジンを取り付けただけだった最初期のオートバイに、最小限のサスペンション機能を持たす方法として開発されたのが各種のフロントフォークで、リアは長い間リジットのままだった。ヨーロッパ製、特にドイツのBMWは早くから前後サスペンション機能を開発したが、ハーレーがリアにサスペンションを装着したのは1950年代の後半である。そして最終スプリンガーフォークが装着されたのが1948年。それほど、古いテイストを持ったサスペンションがスプリンガーフォークなのだ。
現代のサスペンションと単純に性能比較することなどは意味がない。ではなぜ今この旧式サスペンションに魅力を感じるかというと、やはりそのルックスと、独特な乗り味に多くのライダーが引きつけられるということだろう。バイクに乗る目的に、絶対性能を求めるライダーはごく一部である。見方を変えれば、自分の求めている乗り味そのものが各自の絶対性能だということが本質なのだ。
部品屋K&Wは、国産アメリカンバイクを中心に、ハーレーやヤマハSR等のテイスティモデルをカスタムする上で、ハイセンスなクラシカルテイストを実現させるための様々なアイテムを数多くリリースしている。その中で、今回はフロントフォークのスプリンガーキットを制作販売することになったのだ。
カスタムバイクの方向性として極めてクラシカルな外観とテイストが味わえるスプリンガーフォークだが、実際の装着には様々な困難が障害となっていた。基本的に販売されているシステムが汎用品のために、装着するためのフィッティングパーツをワンオフで製作しなくてはならず、そのコストが大きくなりすぎ、結果、欲しくても夢のままで終わるということがほとんどだったのである。新車時からスプリンガーのバイクを購入するなどということは、ほとんどコレクターズアイテムのために現実的ではないし、現在のパーツを使用して制作するのも高額だったという現状。そんなユーザーのためにK&Wはフィッティングパーツを量産するという手法で、スプリンガーキットを販売。現在は、ヤマハのビラーゴ250やドラッグスター250と400。そしてホンダのスティード用、カワサキバルカン400用のラインナップを揃えている。セットされるのは、スプリンガーフォーク本体と、フレームに取り付ける際に必要なネックカップ上下、そしてステムベアリングである。ホイール周りのカラーは、様々なホイールチョイスに対応できるように、別注できるシステムを採用し、好みのスタイルで制作することが可能になった。その値段は、DNAフォークキットで「12万9,893円」74スプリンガーキットで「17万6,900円」(税込み)と極めてリーズナブル。従来の、すべてワンオフ制作でのセットアップでは考えられない値段設定となっている。
国産アメリカンバイクを利用してクラシカルテイスト満載のカスタムバイクを制作するのは、バイクならではの楽しみ方とも言える。たとえばクルマの場合、その根本的な車体構造が新旧で違い過ぎるので、現代車ベースで戦前のクラシックカースタイルを制作することは絶対に不可能である。もし、可能なクルマを考えるとすれば、未だにラダーフレームを採用しているトラックをベースにするしかない。それでもエンジン搭載位置などに問題が残るはずだ。その点、バイクは様々なテイストで自分の求めているスタイルや乗り味を創りだすことがまだまだできる。そんな夢を実現できるパーツとして、このスプリンガーキットは多くのライダーに歓迎されることだろう。
K&Wはショールームを持つようなショップではなく、工場然とした制作ファクトリーである。施設内には様々な大型加工機械が設置されていて、そのどれもがフル稼働状態だ。代表的なのは精密な3次元加工を可能にするマシニングセンターやCNC旋盤という最新機械。小ロッドでも均一なパーツを量産できる体制を整えて、様々なカスタムパーツを世に送り出しているのである。工場の2階はすべてパーツのストックヤードとなっていて、注文を受けたパーツは極めてスピーディーに発送が可能。その他、ワンオフ制作もできるという柔軟性も魅力である。最近、新たにパウダーコーティングできる塗装ブースも導入して、フレームやホイールの塗装も開始した。