レポート:バイクブロス・マガジンズ編集部  写真:山下剛  取材協力:株式会社SHOEI (SHOEI X-TWELVE スペシャルサイト) / チームスガイ

SHOEIの最新フラッグシップ「X-TWELVE」の開発プロジェクトにテストライダーとして参加したのが、JSB1000などに参戦している須貝義行選手(チームスガイ)だ。レース歴25年という豊富なキャリアを活かしてその開発に大きな役割を果たした須貝選手は、X-TWELVEを最も冷徹に判断してきたプロライダーの一人と言えるだろう。果たして、ついに完成したX-TWELVEを須貝選手はどのように評価しているのだろうか。(インタビュアー:バイクブロス・マガジンズ編集部 渡辺)

渡辺:須貝選手は開発ライダーとして携わり、 ブログからもSHOEIヘルメットに惚れ込んでいる様子が伝わってくるのですが、完成したX-TWELVEに関してはどのように感じていますか?

須貝:レースをやる身としては安全にかかわる問題でもあるし、装備品に関して本当に自分が気に入ったものだけを使いたいと考えています。X-TWELVEのプロジェクトに関しては開発ライダーとして参加しましたが、完成品を手にとってみると本当に細かい部分の形状にもひとつひとつちゃんとした理由があって、そういった部分からも作り手の熱意が伝わってくる。そういうところが気に入っているのです。

渡辺:SHOEIの開発陣にも伺ったのですが、評価の高かったX-Elevenをさらに進化させるというのは、開発ライダーとしても大変な作業だったのでは?

須貝:そうですね、X-Elevenの完成度はかなり高かったし、本音を言えばレースで使用していても不都合を感じることはありませんでした。だから、それ以上の製品を開発するとなると、本当に微妙な改良の積み重ねが必要になります。その点、SHOEIには「こんなものだろう…」という妥協の思考回路はなくて、どんな小さなリクエストにも毎回のテストで必ず応えてきてくれる。そうした地道な積み重ねがあってX-TWELVEが出来上がっているのです。

渡辺:レーサーそして開発ライダーとしてX-Elevenと比較するならば、具体的にはX-TWELVEがどのように進化したと感じますか?

須貝:不都合とまでは感じていませんでしたが、しいて言えばX-Elevenにも本当に細かい部分で「こうだったら…」という部分がありました。例えば、レース中のバトルともなれば接近した他車が巻き起こす空気の乱流で、ヘルメットがブレることがあります。これは本来仕方がないことなのですが、X-TWELVEはそうした現象が極めて少ない。内装のフィット感も高く風切音も静かなので、レース後の疲労感も違います。この空力特性のアドバンテージは、鈴鹿8耐のようにハードなレースではより明確になるでしょう。また、一般ユーザーであれば極端な話し、タンデムライダーであったとしても効果を体感してもらえるはず。このような空力性能を追求するために、テスト中は通常のライディングフォームから逸脱したポジションをかなり試しました。

渡辺:ベンチレーションが効くことで有名だったX-Elevenですが、X-TWELVEではどのような進化を遂げましたか?

須貝:ベンチレーションに関しては、X-Elevenの場合、少しでも前傾していれば換気性能は抜群なんだけど、角度が水平近くになると効率が微妙に落ちる傾向がありました。X-TWELVEは、誰がどんな乗り方をしても常に最高の性能を発揮するように設計されています。換気性能がヘルメットの角度に影響されないので、シールドの曇りもなんとなくスーッと取れるというのではなくて、いつでもスッと取れる。空気の流れがより明確に整理されて、顔周囲の空気が騒がしく巻くことがなので、レース中の集中力も違ってきます。これは結構凄いことなんですよ。現在のヘルメットはフィット感が高い分、ベンチレーションの設計はとてもシビアなのです。

渡辺:X-TWELVEは、目に見えないような部分、いわゆる感覚性能のようなものも追求されたのでしょうか?

須貝:もちろんです。例えば、レーサーの中にはヘルメットのシールドを下げるとスイッチが入るような人もいるようですが、僕はまったく逆。集中するためには余計な手間を省きたい。これまではスターティンググリッドで、気密性を高めるためにシールドを力を込めてグイグイと下げていました。しかし、X-TWELVEでは前後にスライドしつつ上下に開閉する可変軸WアクションのQ.R.S.A.(Quick Release Self Adjusting)システムを搭載したので、その手間がなくなり一段とコンセントレーションを高めることができるようになりました。第三者によるヘルメットの取り外しを容易にするE.Q.R.S.(Emergency Quick Release System)の存在も競技者の立場からは歓迎すべきことです。公道も同様ですが、サーキットでは何が起こるか分かりません。万が一の事態に備えたE.Q.R.S.は非常に心強い装備ですね。安心してレースに臨めます。

渡辺:最後に、これからX-TWELVEを手に取るであろうユーザーの皆さんに一言お願いします。

須貝: 大変な作業でしたが、X-Elevenを超えるSHOEI史上最高のヘルメットを開発するという目的は達成されたと思っています。SHOEIユーザーの皆さんは是非ともX-TWELVEを試してみてください。また、お気に入りのヘルメットメーカーはなかなか変更できないものですが、SHOEIユーザー以外の方にもこのX-TWELVEは試してみて欲しいですね。帽体を5サイズ設定としているので、これまでSHOEIのヘルメットが頭の形に合わないと感じていた人にもフィットする可能性は高いはず。僕は良いヘルメットとの出会いは「めぐり合わせ」だと考えています。空力、ベンチレーション、フィット感など、SHOEI史上最高の性能を是非とも体感してください。

装備品は自分が気に入ったものだけを使いたいという須貝選手。X-TWELVEからは作り手の熱意が伝わってくるという。

装備品は自分が気に入ったものだけを使いたいという須貝選手。X-TWELVEからは作り手の熱意が伝わってくるという。

地道な改良の積み重ねが不可欠だったというX-TWELVEの開発。各機能は須貝選手が入念なテストを行い“OK”を出したものだ。

地道な改良の積み重ねが不可欠だったというX-TWELVEの開発。各機能は須貝選手が入念なテストを行い“OK”を出したものだ。

スタイリッシュなX-TWELVEだが、全ての形状には合理的な理由がある。須貝選手も本当に気に入っているという。

スタイリッシュなX-TWELVEだが、全ての形状には合理的な理由がある。須貝選手も本当に気に入っているという。

グローブをした手でも開閉しやすいロアベンチレーションや操作感の良いシールドタブの形状など、細部にも徹底的なこだわりが感じられる。

グローブをした手でも開閉しやすいロアベンチレーションや操作感の良いシールドタブの形状など、細部にも徹底的なこだわりが感じられる。

良いヘルメットとの出会いはめぐり合わせ。だから、是非ともX-TWELVEを手にとって欲しいと語る須貝選手。

良いヘルメットとの出会いはめぐり合わせ。だから、是非ともX-TWELVEを手にとって欲しいと語る須貝選手。

前傾姿勢をとっていない状態でも、常に安定した性能を発揮するベンチレーション。レースに集中するための重要装備だ。

前傾姿勢をとっていない状態でも、常に安定した性能を発揮するベンチレーション。レースに集中するための重要装備だ。

レース中、他車が巻き起こす乱流に左右されない安定性を確保するため、さまざまなポジションで空力特性が検討された。

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