奥出雲「鉄のまほろば」を巡る

掲載日:2017年05月24日 ツーリング情報局中国エリア    

走行エリア/島根県  レポーター/Takeshi TAKANOさん
※このレポートは BMW BIKES Vol.76 (2016年09月15日発売)掲載の『BBC Report』を再編集したものです。

奥出雲「鉄のまほろば」を巡るの画像

「田部家の土蔵群」(雲南市吉田町吉田)。鉄山師・田部家(日本一の山林王でもある)の繁栄を偲ばせる白壁土蔵18棟が整然と並ぶ。鉄は北前船によって安来港から運ばれたという。

2016年に日本遺産に認定された
「たたら製鉄」の歴史を巡りました

今年の夏は涼を求めて奥出雲地方へ向かいます。実は、中国山地の日本海側に広がる「たたら製鉄」が、2016年4月25日に「出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~」として日本遺産に認定されたのです。見学を兼ねて涼しい高地ツーリングと洒落ました。

江戸時代、中国地方のたたら製鉄で作られた鉄は、日本の鉄生産の8~9割以上という圧倒的な量を占めていたのをご存知でしょうか。島根県の雲南市・安来市・奥出雲町は1987年から共同で「鉄の道文化圏」というプロジェクトを立ち上げて、周辺のたたらの歴史街道を「鉄の散歩道」(松江市を起点にしてぐるりと巡ると約150kmあります)と名付けてPRしています。この取り組みが評価されて文化庁が2016年に「日本遺産」に認定しました。

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「菅谷たたら山内」(雲南市吉田町吉田)。全国で唯一現存する過去に創業された菅谷たたら高殿(製鉄所跡)。奥出雲たたら御三家の一つ、田部家が1921年まで創業した所。山内はたたら従事者100人から200人規模の小さな鉱山町のこと。

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「鉄の歴史博物館」(雲南市吉田町吉田2533)。たたら職人の生活の様子や吉田町内の遺跡や荷札等を展示している。

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「日刀保たたら」(奥出雲町大呂)。日本美術刀剣保存協会が国内で唯一たたら製鉄を行う高殿、鋼造場等がある。毎年冬に各地の刀匠や日立金属グループの社員による3昼夜連続操業が3度営まれ日本刀の原料となる玉鋼を供給する。

たたら製鉄は大量の砂鉄を採取するため広い範囲で山を崩し、「鉄穴(かんな)流し」という水を使った分級選別を行い、下流に造られた比重選鉱施設で砂鉄を選別します。下流に流された土砂は田畑へ流入、川床を上げて洪水をおこす等の公害を起こしましたが、他方、山間地帯を埋めた土砂により新しい耕地(棚田)ができました。

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「鉄穴残丘」(奥出雲町一帯)。鉄穴流しで大量の砂鉄を採取の際、お墓や祠を避けて大地を削ったためラクダの背のように残った丘陵。奥出雲町の各地に点在する特異な風景。

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米子市と境港市に跨る弓浜半島(日本最大級の砂州)の波打ち際にある黒色の砂鉄。日野川上流域のたたら製鉄に伴う鉄穴流しで出た膨大な土砂で美保湾の外浜が形成されたという。前方は大山、周辺は白砂青松100選の景観。

奥出雲町周辺は、約500年にわたって鉄穴流しで丘陵を削り続けたので、眼前に広がる棚田は鉄穴流しによって生まれた特異な景観です。たたらに関する人達で出来た村や町、おいしいお米やお酒、神楽や芸能、温泉、お寺や神社等々の歴史や文化の施設や設備は、「鉄の散歩道」の周辺に大切に保存されています。雲南市や奥出雲町を中心に、壮大なスケールで行われた「たたら製鉄」は、まさに「鉄のまほろば」。ぜひ一度巡ってみる事をおすすめします。

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「道の駅 たたらば壱番地」(雲南市吉田町吉田4378-31)。雲南市吉田町が日本古来の製鉄技術である「たたら製鉄」で栄えた地であることからこの名がつけられた。中国横断自動車道 尾道松江線の雲南吉田IⅭを降りた所にある。

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「出雲たたら村」(雲南市掛合町多根)。劇団EXILEの出演、出雲市出身の錦織良成監督で映画「たたら侍」が来年公開予定で、ロケのセットをテーマパークとして7月15日~10月2日まで期間限定で公開している。

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