カワサキ KL250R(1984)

掲載日:2015年07月03日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

KAWASAKI KL250R(1984)
今でこそ当然となった4ストオフロードモデル。
2スト並みのパワーや瞬発力は難しいと思えたが、それを可能にしたルーツがここにあった。

元祖水冷4ストオフ車!

今、世界中のオフロードレースで活躍しているのは、4ストローク単気筒だ。モトクロスは450ccと250cc、ラリーの世界も450cc。環境対応はあるにせよ、レースの世界、特にかつてのオフロードでは4ストでは走れないし、面白みも減るとさえ思われていた。それが今は4ストが当然。実際には1990年代中盤からの登場だったが、さらに遡ると、1980年代の技術革新に行き当たる。

高い出力を安定して出すためのエンジンの水冷化と、吸排気効率を高める4バルブ化。市販オフモデルでの先駆車になったのは、1984年3月デビューのカワサキKL600Rだ。大型オフも珍しい中、国産2輪車初の公道走行可能な水冷4ストオフ。単気筒で、少量限定販売のため当時から極めてレアなもの。その弟分として同年6月に登場したのがKL250R。4スト250クラス・オフロードで初の水冷車だった。

基本レイアウトやデザインは600Rとほぼ同じ。高回転化し出力を高めるためのDOHC4バルブに、理論上の振動をゼロとし滑らかなエンジンフィールとシャープな吹き上がりを実現する2軸バランサーを装備。吸気もレスポンスに優れるケーヒン製フラットバルブ負圧キャブ。

空冷SOHCだった先代KL250は22ps/2.1kg-mだが、KL250Rは28ps/2.3kg-mとパワー/トルクは大幅アップ。乾燥重量も乾燥でKL比1kg増に留まる117kgで加速も良く、高回転まで伸びた。最高速度自体は130km/h程度と特筆すべき値ではないが、高速走行安定性はクラストップレベルだ。

燃焼室は2枚の板を組み合わせて屋根を作ったようなペントルーフ型で、DOHCの利点となるセンタープラグ配置で効率良く均等な燃焼を狙う。出力アップと効果的な冷却には、シリンダースリーブ外に直接冷却水が触れるウェットライナーと、サーモスタット内蔵のツインラジエーターで対応。当時、オフ車ではセルなしが基本で始動はキック式。そこにKACR=カワサキ・オートマチック・コンプレッション・レリースという自動デコンプ(高まった圧縮を抜いてクランク回転力を保つ)を装備し優れた始動性を確保した。

フレームは当時一般化した高張力鋼管による、セミダブルクレードル型。先述のエンジンバランサーで振動にも対応していたから、軽量化できた。サブフレームはモトクロッサーでもようやく普及したボルト着脱式+アルミ角材製で、速さもイメージさせる。サスはフロントがエア併用φ38mmフォーク、リヤはガス/コイルスプリング併用のショックとボトムリンク式サスで、ホイールストロークは前後とも230mm。スイングアームは従来の丸型鋼管からアルミ製角形となり、調整の容易さを狙ってエンドはオープン型、チェーンプラーは段階式に行えるスネイル(カタツムリ)カム式を採用した。

2本リヤサスだったKL250からはモノサス化でギャップ走破時の安心感は一気高まり、大きなジャンプも飛べるほど。舗装路でも林道でも、ツーリング時の乗り心地は良くなったし、疲労も減らされた。また制動面も、フロントブレーキにはこれもオフモデルで採用され始めた油圧ディスクを使い、シンタードメタルパッドとで良好なタッチと制動力を提供(リヤはドラム式)した。

よく回る高出力エンジンに軽量で使いやすくしっかりした車体&足まわりによって、ダートから荷物満載のツーリングまで、多くのファンをKL250Rは作り出したのだ。

1980年代末からのエンデューロブームで2ストのレプリカ、KDX200SRを送り出した後にカワサキは、実質的なKL250Rの後継として1993年に“戦う4スト”KLX250SRを送り出す。これは大きく基本を変えないまま、セルを装備しFI化、今もKLX250として現役だ。そしてモトクロスの世界は、KL250Rのような装備を突き詰めた上で、4ストKX-Fシリーズが強力マシンとなった。そのルーツが、ここにあったというわけだ。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

1980年代はアメリカを本場として日本でもスーパークロスが大人気に。この時期は日本製モトクロッサーのブレーキ性能が大幅に上がり、公道走行車にも広く波及。従来のドラム式にはない高次元の走りに対応した。カタログでもコースを攻め込むライダーが主となっていたが、これは4ストのオフロードモデルでは珍しかった。それだけ自信があったのだろう

同時期に展開した輸出仕様は車名がKLR250。北米仕様は出力とトルクの表記はなく、ミリメートル(mm)、リットル(L)に代わりインチ(inch)とガロン(gallon)で各数値を記載。名称とカラーリング以外ではサイドリフレクター(北米仕様は必須)、ピリオンステップ取り付け方法(国内はスイングアーム直付け)が異なる。リヤサスは初期荷重と、伸び側4段の減衰調整機構をともに装備

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