スズキ RG250E(1978)

掲載日:2014年08月29日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI RG250E(1978)

RG250デビュー当時は、各社こぞって4スト路線を邁進中。中型クラスはパンチのある機種がなく、2ストのRG250の軽量でシャープな走りは刺激的だった。このカタログの表紙では世界GPで4年連続メーカータイトルを獲得し、チャンピオンマシンRGB500の血潮を受け継ぐ……と力説。当時のWGPが押し掛けスタートだったことも思い出す

4ストの台頭で人気が衰退する一方の’70年代後期の2ストスポーツ車。
だが、そんな時代の流れへの反攻を最初に見せたのがスズキだった。

2スト復権の先駆車

2ストスポーツの名車というと誰もがヤマハのRZ250を思い浮かべるだろうが、実は隠れ名車として忘れてはならないバイクが、このRG250だ。2ストならではのクォーンと唸る吸気音とシャープな吹き上がり……。現代でこそ、吸気音は厳しい騒音規制で消し去られ、多くの若輩ライダーにはイメージできない世界かもしれない。

高効率なエンジンにそぐわないテーマとして、抵抗低減=音の低減が進化して現在に至る。だがかつては、その吸気音そのものがバイクならではの大きなテイストでもあった。

この快感を’60年代からずっと愛し続けたライダーたちにしてみれば、1978年登場のRG250/Eは、大幅に吸気音が低減した象徴的な2スト・スポーツだった。静かに、それでもこの上なくシャープに駆け抜ける気持ち良さを提案したのだ。

それまでのスズキといえば’60年代半ばからのT20、T21、T250、GT250と2ストツインを送り出し、速さはライバルのヤマハやカワサキ以上。一般市販車初の6速ミッションと軽量性と高回転になるほどシャープ&極めて滑らかなエンジン回転フィールとなる味こそは最上であり、国外でも高い評価を受けた。

こうしたスズキの伝統とも言うべき2ストスポーツの歴史で空冷最後のモデルがRG250だった。

なんと言ってもRG250の魅力はそうしたスズキの伝統とも言える中高回転での刺激的な吹き上がり感。しかも乾燥重量124kgという徹底した軽量性から生まれるダッシュ力と旋回力は特筆に値した。飛ばさなくてもワクワクしてくる軽さが、誰にでも実感できたのだ。

’70年代後期といえば、バイク界を挙げての4スト化最中。オイルショックによる低燃費指向も関連して250や400ccクラスまで4スト化の波が押し寄せ、まさに2ストスポーツは絶滅の危機に瀕していた。そんな中でスズキはRG250誕生のためにあえて250cc専用のフレームを用意し、新設計エンジンを生み出したのだ。簡単に言えば、RZ250よりも早い時期から“走る”2スト250スポーツの復権を願ったバイクとも言える。

過去のT20以降の流れを汲むRG250のエンジンは、まず54mm×54mmのスクエア型というボア・ストロークの選択がなされ、後の水冷式RG250Γにも採用された。

ホンダのCR71、CB72、ライラック製LS18といった’60年前後の4スト代表機種のほか、’70年代からのヤマハはDX、RD、RZの流れでこの54mm×54mm型を採用。この定番のボア・ストローク比こそが長い間もっともバランスの良い黄金比として採用されたものなのだ。

こうした伝統技術に加えてスズキはトルクの充実と滑らかさのためにピストンバルブを止めてパワーリードバルブを採用した。エンジン始動のためのキックペダルはここで始めて一般的な右側にスイッチした。

フレームは350cc共用のダブルクレードル型から軽量化の軸となる250cc専用セミダブルクレードル型へ。スイングアームのピボット部にニードルベアリングを採用。単なるブッシュ・カラーから移行する時代だった。マフラーはクロームめっき仕上げだが、本体をよく見るとテーパー状に太くして再び細くする膨張型マフラー、後のチャンバー形状を先駆的に投入していたのだ。

RG250がデビューした’78年のスズキはGS400、550、750という4スト化へ全力投入の時代でもあったが、RG250はGS系には出せない独自の走りで、プロダクションレースでも大人気モデルとなった。RG250はデビュー後すぐに、GS系と同じ星形キャストホイール仕様の〝E〟を用意。スズキ製自転車にも採用されたこの形状は適切な弾性、高剛性を確保。重量は2kgアップしたが、時代は明らかにキャストホイール仕様に流れていた。

’79年には小変更を受けた。フロントブレーキマスターシリンダー変更、メーターやウインカーボディなどのめっきパーツの部分廃止と変更。ウインカースイッチ変更、速度警告灯廃止などだったが、シャープな走りの魅力はそのままだった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

初期型のスポークホイール仕様とキャストホイール仕様の〝E〟に対して1979年型はキャストホイール仕様の〝E〟のみ。カラー&デカール変更と本文中のほかに、エキパイとマフラーをつなぐフランジの形状、ブレーキホースの取りまわし、黒色処理の左右のレバーに変更された。オプションだったローハンドル(コンチネンタルタイプ)は継続。当時は北米仕様と同じサイドリフレクター付だった

当時、数ある2スト50ccの中でスズキの単気筒2ストエンジンはパワーリードバルブ(ピストンバルブとリードバルブの併用)によって実にパワフルでスムーズだった。このエンジンはマメタンやハスラー50にも採用されたもの。’79年からキャストホイール仕様となった新型RG50Eはフレームを変更せずにタンク、サイドカバー、リヤカウルを一新している。フロントディスクブレーキも変更。ブラック処理されたウインカーボディとマフラーによって精悍さを大幅にアップしている。それまでのサイドリフレクターは廃止された

スズキの2ストスポーツ路線は充実していた。その筆頭が高速道路も走れるRG185。シリンダーヘッド部をラムエアで効率よく冷却しようという異形のヘッドデザインをGT250と同じように設定。エンジン始動が容易なセルスターター・キック併用式。RG125Eはクランクケースが前出のRG185のベースになったもの。〝E〟だからキャストホイールを装備。角張ったメーター、ライトなどGSX750Eをイメージさせた。GP125は従来からのロータリーディスクバルブ式単気筒を搭載するスポーツ車

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