ホンダ CBR400F(1983)

掲載日:2014年04月11日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

HONDA CBR400F(1983)
エンジンも車体、足まわり系もハイテク満載の時代にホンダから登場した、
最強空冷ミドルネイキッドがこれだ。デザインの革新性も見逃せない。

前輪16インチの傑作車!

’81年に誕生したCBX400Fは30年も経過して今なお異様とさえ言えるほど高い人気を維持し続けているが、今回ご紹介するCBR400FはそのCBXのエンジンをベースに、REV機構を新採用して大幅なパワーアップを実現したモデルだ。

REVとはレボリューション・モジュレーテッド・バルブコントロールの略。エンジンの回転数に応じて、低中速回転域では2バルブのみ作動させて扱いやすく、高回転域になると、自動的に4バルブに切り替わってパワフルになるシステムだ。

さらに流入空気を整流して吸入効率を向上させたレゾナンス・チャンバーも採用。排気効率と静粛性を向上させた4→2→1→2の排気システムを採用することで、CBXの48馬力から58馬力へアップしつつ、60km/h定地走行での燃費も40km/Lと優れたデータを叩き出していた。

そのCBRがデビューした’83年12月のホンダといえば、HY戦争と呼ばれたヤマハとの熾烈な販売競争が終焉した頃で、同社からはMBX80インテグラやVT250Fインテグラ、CBX400Fインテグラなど、フルカウルモデルも投入された時期であった。また、スズキからRG250Γが登場して、レーサーレプリカモデルの需要が一気に拡大し始めていた時期でもあった。

これに呼応するようにホンダは、後にCBR400FにハーフカウルをセットしたCBR400Fエンデュランスを追加。さらに白/青/赤のトリコロールカラーでシングルシート&リヤカウル、白ホイールという、よりレーシーなスタイルのCBR400Fフォーミュラ3をラインアップに加えたのだった。ちなみにフォーミュラ3はシングルシート採用もあって、その乗車定員は1名と、過激なスタイルが話題になった。

さて、このCBR400Fの革新性は、エンジンばかりではなく、車体側にもあった。コンピュータ解析による軽量・高剛性な角型断面パイプのダブルクレードルフレームとNSコムスターホイールの組み合わせが織り成す操縦性はCBX400Fとはまったく異質なものだったのだ。

CBX400Fは低重心感が強く、前後のピッチングモーションも少なめ。対するCBR400Fは前後サスのストローク量がしっかりと感じとれるようなピッチングモーションの大きな動き。しかし、だからこそ路面から伝わる情報は豊か、という設定。左右へのロールもよりライダーの感性に沿った、ナチュラルな味付けへと変革していた。

前輪16インチのスポーツバイクとしては深いバンク状態での前輪の切れ込みが少なく、リヤサスの追従性も非常に優れており、もっとも癖のない操安設定の代表格であった。さらに強力になったストッピングパワーも含めて、スポーツするバイクとしての資質を大きく高め、このクラスでもっとも高く評価すべき乗車感であった。

スタイリングはあえてメカニズムむき出しの、機械的な美を訴求したもの。これも伝統美の進化形だったCBX400Fとは対照的で、他の競合車が存在しない先進性を誇っていた。

ヘッドライトを支えるステーもヘッドパイプ脇からセット。つまり、フレームマウントのヘッドライトとなるわけだが、これもCBRでは、独自のネイキッドスタイルを表す巧みな手法のひとつであった。さらにネイキッドなのにアンダーカウルを装備するという点も斬新。約2年後にヤマハはFZ400Nを、カワサキはFX400Rを。スズキはGSX400Xインパルスとネイキッドがリリースされたが、間違いなくそれはこのCBR400Fの存在感が影響していたはずだ。

フレームも、のちに本流となった直線ツインチューブフレームよりも、CBRのエンジン造形がアピールできるダブルクレードルフレームが、今見ても趣という点で、明らかに魅力的に映る。もちろん、空冷エンジンだから、という前提付なのだが。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

油圧ピストンを内蔵する2分割のロッカーアームを持つ、REVエンジン。高回転側では優れた吸排気効率を実現する4バルブ作動、低中速回転域では優れた充填効率を生みだす2バルブ作動となる。完全熟成された現在のCB400SF・SBにつながるルーツがこれだ。フレームもCBX400F時代までの一般的な丸形パイプとは大きく異なった角型パイプの取りまわしで、軽量性と高い剛性を確保。馬力上昇分に見合った仕様だった

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