掲載日:2014年03月07日 絶版ミドルバイク
文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)
記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです
単気筒ロードスポーツは永遠に魅力的なジャンルだと思う。とりわけ250ccクラスは軽量コンパクトで操って楽しく、絶対速度に捕らわれずに、スポーツの本質が比較的安全な速度域で強く実感できるからだ。その上、優れた低燃費と低維持費という経済性まで持ち合わせている、まさに今なおバイクの本質を突いたジャンルと言い切れるだろう。
1980年登場のホンダCB250RSは、その代表だった。空前のバイクブームが始まり、女性ファンがその扱いやすさに飛びついた。ちなみに、この時期にホンダが用意していた他の4ストロードスポーツは並列2気筒のホークCB250NとCB250T。CB250Tの乾燥重量174kgに対して、CB250RSは128kg。46kgもの重量差は非力な女性ライダーには大きな説得力があった。ただしエンジン始動がキック式のみだったために、’81年にはCB250RS-Zという名称を持つセル始動モデルが登場。燃焼室形状の見直しなどによる馬力向上・燃費改善のほか、セミエアフロントサス、2ポットキャリパーとディスクローター形状変更、キー付き収納スペースを持つリヤカウルなど、質感と利便性も含めて商品性を大幅にアップ。
そして、翌’82年にはホンダの肝入りでVT250Fが俊足RZ250への対抗馬として登場。これで明確な馬力競争時代に入る中で、ホンダが次に用意した単気筒250ccスポーツが、’83年のCBX250RSだった。放射状のバルブ配置RFVCメカとDOHC化によって初代の25馬力から30馬力まで一気に引き上げた。真っ赤なフレームを採用して精悍なスタイルとなったCBX250RSは、初代RSが見せた車体のしなやかさは消え、剛性アップした車体によって路面からの情報がより鮮明に感じ取れるようになった。ベテランライダーの走行ペースではややもの足りない車体の印象だった初代RSと比較してCBX250RSの走りは、まさにモダンシングルとしての面目躍如であった。
ホンダはVT250FとCBX250RSの高いスポーツ性をツインとシングルでアピールする一方で、ユーザーニーズの多様化に対応すべく、CBX250RSベースでクラシカルな外装へのアプローチを実現させた。それがGB250クラブマンだった。
タンクからサイドカバー、そしてリヤカウルまでワンモーションで形成されたCBXのスタイルを止めて、GBではタンクはタンク、サイドカバーはサイドカバー、そしてリヤカウルはリヤカウルと独立させた古典的デザインを採用。後に兄貴分として登場するGB400および500のスタイルとつながるものだ。
真っ赤なシリンダーヘッドを持つCBX250RSのブラック塗装のエンジンは、GBになるとアルミの素材をそのまま表現した落ち着きのあるものへ。フロントフォークのアウターチューブはバフ掛けされたアルミ地肌のもの。昔ながらのフォークブーツもセット。
そして何よりも昔を知る熱きホンダファンが嬉しかったのは名車CB72(シービーナナニイ:ホンダ初の250cc並列2気筒スーパースポーツ)の雰囲気そのままの一文字ハンドルの採用と、古風ながらもキビキビした速さを継承していたこと。
GBは細部にわたる変更を受けつつ1997年の7代目まで進化したものの、今はなきモデルとなってしまった。外観が変わらなくてよいバイクは世の中にはいくつかあった。250ccクラスのその典型が、GB250クラブマンだったといえる。