スズキ DR250S(1982)

掲載日:2014年02月12日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI DR250S(1982)
’80年代初頭から250㏄のオフ車は400㏄クラス以上のバイクたちに負けない存在感と
魅力を強くアピール。DRも例外ではなかった!

林道ツーリング最適車!

DR250Sは、スズキ初の4スト・250ccデュアルパーパス車として1982年にデビューした。同じ4ストローク単気筒エンジンを搭載するライバルは、ホンダXL250R、ヤマハXT250、カワサキKL250だったが、足まわり関連ではツインショックからリンク式リヤサスが一気に普及し始めた頃だ。

ホンダとヤマハを中心とした熾烈なバイク販売合戦となったこの頃は、中型・大型4気筒のニューバイクが矢継ぎ早にデビュー。一方で250ccクラスにも熱い視線が注がれていた。その代表格がロードスポーツでは2ストのRZ250であり、4ストのVT250Fだった。

この時期、250ccクラスでも2スト車はオン、オフ問わず水冷化の波が押し寄せた。ただ、4ストのオフ車では基本的にこの後も主流は空冷式だった。オンロード系の車体・足まわりでは250ccクラスでさえもアンチノーズダイブメカの採用や前輪16インチ化、前輪ディスクブレーキ装備の普及が進んだ時期。

そうした流れの中で誕生したDR250Sはデザイン的に大人しいこともあってインパクトは大きくなかった。だが、DR250Sに注いだスズキの技術は最先端を行くもの。例えばそれはTSCCと呼ぶメカだ。これはツイン・スワール・コンバスチョン・チャンバーの略だが、4ストローク部門への参入が日本の4社でもっとも遅かったスズキにとって、この機構への高い信頼性をまずオンロード系のGS、GSXシリーズで勝ち取ることに成功。

とりわけGSXで採用したTSCCをDOHC4バルブエンジンと組み合わせたことで、スズキはライバル他社を一歩リードする勢いを見せた。そしてこの流れを汲んでオフ系にも積極的に導入したわけだ。

TSCCは日本語で2渦流燃焼室を意味するものだが、ふたつのドームで形成された燃焼室形状によって作り出されるふたつのスワール(渦流)と、そのスワールをいっそう強化するスキッシュ効果によって、一般的な4バルブでは得られない、優れた吸入効率と燃焼効率を実現しようというもの。

レスポンスの良さと、高効率な燃焼による低燃費は実際のテスト走行で実感することができた。エンジン単体の装備重量38kgによる、車体の乾燥重量114kgというクラス最軽量も軽快な走りを支えた。’70年代に世界MXGPで破竹の勢いを見せたスズキゆえに「軽量性」は開発における最優先課題であり、すでに伝統にさえなっていた。

そして、リンク式リヤサスの導入は、当時のあらゆるバイクの操縦性を大幅に向上させた。ホンダはプロリンク式。ヤマハはカンチレバー式「モノクロス」という称号を使い、カワサキはユニトラック式と呼んだ。スズキはクッションユニット両端をフレームに固定しない独自のフルフローター式として、優れた作動性を発揮した。路面から伝わる情報がしなやかで荒れた路面でもまるでソファーに座っているような感覚だった。

スズキはこれを具体的に3Sと呼んだ。サスが沈み込む最初、ビギニングをソフトに。中間域ではスムーズに。そしてボトム付近ではストロングに対応する意味を込めたものだった。ちなみにサスストローク(アクスル・トラベル)は190mmで、クラストップのデータを誇った。ちなみにフロントサスは215mm。

のちにスズキはこのフルフローター式からE-フルフローター式へと変更後に一般的なリンク式へと進化させた。今振り返ると、当時のオリジナリティあふれるフルフローター式リンクサスは魅力的に見える。

バランサー装備のエンジンをフレームの強度メンバーとする、ダイヤモンド式を選択することでフレーム重量もわずか9.7kgを実現した。

DR250Sは、誰にでも扱いやすいエンジンと優れた乗り心地が魅力とし、林道を含めたロングランにもっとも適したオフ車だったのだ。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

国内ではDR250Sと同時にDR125Sもデビューした。合わせて250/125ともエンデューロ専用車のDR125とDR250を輸出用で発売。ED仕様はヘッドライト下にゼッケンプレートを配するカウルを装備した。なお、ED仕様に保安部品が付いた輸出車をSP250/125と呼ぶ。転倒ダメージ軽減のため、ハンドルバーに前ウインカーを装着した

リンク式リヤサス導入に際して、スズキがその第1弾としてリリースしたのがモトクロッサーRMシリーズに採用したフルフローター式だった。フリクションの少ないしなやかな動き方が特徴。接地感の高さと乗り心地の良さが誰にでもすぐに実感できるタイプ。後のGSX-R系にも採用された

フルフローター式サスはショックユニットを上下ともフレームに固定していないため、ショックを柔らかく吸収する特性だった。中でも作動初期の動きのしなやかさは、このサスの最大の特徴だった

BikeBooksで雑誌・電子雑誌をチェック!

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索