カワサキ Z400GP(1982)

掲載日:2014年02月21日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

KAWASAKI Z400GP(1982)
’80年代前期はエンジンの水冷化、車体の高剛性化、車輪の小径化、
モノサス化が一気に進んだ時期。そんな激動の時代の隠れ名車がこれだ。

変革期の隠れた名車

1982年に登場したカワサキZ400GPが放つ雰囲気は’79年登場のZ400FXとオーバーラップする。エンジンの外観とマフラーをブラックアウトしつつ、タンク前部までは角張った力強いスタイルを色濃く残すからだ。フロントフォークもリーディングアクスル型を継続し、大きめの車体サイズ感を醸す前輪19インチを採用した。

しかし、タンク後半からのデザインは明確な変化を見せた。Z400FXまではタンク、サイドカバー、リヤカウルがそれぞれ独立したデザインだったが、Z400GPはタンクとサイドカバーそしてリヤカウルまで流れるような、いわゆるストリームラインを採用。リヤサスを2本式ではなく、ユニトラック式モノサスとしたことでサイドカバーから後半の下部ラインが強調された。

エンジンとマフラーのブラックアウト化は、タンク、サイドカバー、リヤカウルの流れをより強調する手法と見ていい。ホイールは7本スポークから5本に変更。具体的に軽快感と軽量性アップに貢献するが、奇数のスポーク数で躍動感を出すという基本手法でもある。また、この変更はキャストホイールの黎明期からの最初の脱却時期にも重なった。安全性のための強度確保に伴う重さから解放され、またそれぞれのメーカーの個性(コムスターのホンダ、スパイラル状のヤマハ、星形のスズキ)が打ち出されて行った時期だ。

Z400GPはカウル未装着だったが、同時期のVT250Fがメーターバイザーとして申請し、カタナはスクリーンなしで認証を受けるなど、日本国内はカウルの規制解除にシフトする過渡期だった。同時開発の輸出用Z550GPではハンドルマウントのビキニカウルがセットされたが、Z400GPでも最初からビキニカウル付きをリリースしたかったのではないかと推測できる。

ともあれ、リヤサス・モノショック化やホイールの軽量化で、フロントブレーキのデュアルディスク化を果たしながら、Z400GPはZ400FX最終型(E4)より13kgもダイエットに成功していた。

しかも圧縮比アップ、ハイカム、ビッグバルブ化、メカニカルロス低減などエンジンのリファインは、リニアなスロットル・コントロール性など足まわりのグレードアップとシンクロしてコーナリング時の安心感と楽しさが大幅にアップ。反対にゆっくりした走行では19インチならではの大らかさとユニトラック式リヤサスのしなやかさは格別だった。

カワサキのオンロードバイクとして初の導入となったユニトラック式モノサスは、もともと同社のモトクロッサーKXシリーズからの技術還元。フロントに採用したイコライズドエアフォークとの組み合わせによって、優れた乗り心地と荷重がかかった時のしっかりした踏ん張り感を実現。まさにクラストップと言い切れる深い乗り味を示した。

当時はメーターまわりのデザインも変革期だった。速度計と回転計がふたつ並ぶ伝統的手法から、各種インジケーターをビルトインする一体型へ移行していったのだ。それは各車が前出のカウル装着を前提にした結果、とも解釈できた。カウルのないZ400GPでも燃料、サイドスタンド、バッテリー液、オイルレベルの警告灯を液晶表示。さらに、総合チェックによりひとつでもクリアされていない場合は、警告灯が作動するという万全の設定で先進性を主張したものだった。

さらに防眩・防震バックミラー、人間工学に基づく大型スイッチ、ウインカーポジションランプ、片方のバルブが切れても安心の2バルブ式テールランプなど安全面での配慮が精力的になされたのも時代の趨勢だったが特にZ400GPはその導入が鮮明だった。Z400GPは、その後わずか1年でGPz400へと移行したが、走りも装備も充実した内容を持つ秀作だった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

サイドカバーのエンブレムから、すでにフレームマウントのカウル付きGPz400を視野に入れた作りだったことが容易に創造できるZ400GP。カタログの反対面には全機種をラインナップ。Z750FX- III の後にはインジェクション装備のZ750GPがツインショックで登場した

エンジンだけではなくフロントとリヤサス、トリプルディスク、マイコン制御液晶モニター導入、ジュラ鍛セパレートハンドルなどの進化と装備、安全性向上などをアピールした。’82年3月デビューのZ400GPはレッド。5月にはエボニー(黒)の新色を追加。さらに限定2000台でライムグリーン仕様車がデビュー。ローソンレプリカのZ1000Rを思わせるカラーリングと段付きシートを装備していた

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