スズキ GSX250E/ES/カタナ(1980)

掲載日:2014年02月05日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI GSX250E/ES/カタナ(1980)

400ccクラスと共用車体に排気量の小さなエンジンを積んだバイクが多かった、当時の250cc「重い、遅い」が定番だったが、国産では唯一、スズキが専用シャシー車で気を吐いた。GSX250E はその代表作だった

GSX400Eとスタイルはほぼ同じだがエンジンとフレームがまったく別物。
250専用へのこだわりは、充実した装備にも表れていた。

秀作4スト250ツイン

スズキは'80年代に入って、ますます4ストローク・スポーツへの情熱を傾けた。GSX1100Sカタナがその象徴だが、4気筒モデルの充実だけではなく、並列2気筒車でもDOHC4バルブ方式を他のどこよりも積極的に採用して「4ストのスズキ」をイメージづけた。

今回、紹介する1980年登場のGSX250Eも例外ではない。ライバル他車がSOHC2バルブや3バルブのシリンダーヘッドを採用したのに対して、GSX250Eは4ストの並列2気筒250としては初のDOHCであり4バルブ採用であった。しかも、燃焼室を兄貴分のGSX400Eと同じようにTSCC(ツイン・スワール・コンバスチョン・チャンバー=2渦流燃焼室)を採用して、燃焼スピードのアップを狙うという新しい取り組みでライバルを引き離そうとさえした。

これはシリンダーヘッドにふたつのドームを持ち、各ドームに吸排気ひとつずつ、計4つのバルブを配し、これによって吸入と圧縮行程で混合気がふたつの旋回流となり、圧縮行程の終わりには、スキッシュエリアによって混合気はさらに渦流を強める。混合気の流れの高速化が燃焼スピードを高めるという理論だ。しかもDOHCゆえに点火プラグは燃焼室中央に配置できて、火焔伝播は最短距離ででき、燃焼時間短縮化に貢献するというもの。実際に、GSX250Eは中高回転の伸びが鋭く、低速回転時のデメリットが感じ取れないほど。高い完成度を見せた。

しかも、GSX250Eには400Eとは異なる250cc専用フレームを用意。400Eはダブルクレードルフレームだが、250Eはセミダブルクレードル型だった。これはステアリングヘッド下のダウンチューブが1本から2本に分かれアンダーループに至ることを指す。250ccのパワーに見合った、必要にして十分な剛性を確保して、素直な操縦性を見せつけた。

燃料タンクほか、外装パーツの大半を共通化しながら、専用フレームとしたのは軽量性確保のためだ。ちなみにGSX400Eは171.3kg。250Eは153.7kgとその差は大きく、400Eより17.6kgも軽く仕上がっている。

400Eとはエンジンとフレーム、タンク、サイドカバー、リヤカウル以外に異なる装備がいくつかある。アンチノーズダイブ機構ANDFが省略され 、ステップとタンデムステップをつなぐめっき製のステッププレートも省略。400Eのめっき製フロントフェンダーに対して250Eは車体同色のフェンダーだった。メーターまわりでは、ギヤポジションインジケーターも省略された。それでも必要にして十分な装備を持ち、独自性に富むGSX250Eのスタイルは400Eと同様に、今も存在感がある。

スズキは2ストのRG250Eが250専用設計による明確な車体軽量性を実現したように、コストアップを承知で4ストでも250cc専用の車体をGSX250Eに採用して、俊敏な走りを求めた。それだけ250ccクラスを重視していたことになる。当時の日本の4社は250ccクラスに傾注していたわけだが、とりわけスズキの250ccクラスは充実していた。

さて、このGSX250Eは'81年にANDFをセットしカラーチェンジ。'82年には早くも400と同様に車体系をフルチェンジ。エンジンはフルトランジスタ点火を採用した以外はほぼそのままだが、当時のGSXシリーズのトップモデル、カタナのネーミングを付与した。

また、この車体をベースに、トラディショナルスタイルのGSX250T、アメリカンスタイルのGSX250Lの兄弟車を加えた。スズキはこのほかに単気筒の GN250E、空冷2ストのRG250Eも用意。どのようなニーズにも対応できるラインナップとした。

メイン機種となるGSX250EカタナはANDF、ギヤポジションランプをセットし、燃料計を新たにセットしたメーターまわり、ハロゲンヘッドランプ、16L大容量の燃料タンクなど装備が充実したモデルだった。250ccの魅力が再発見されている現在だが、こんな秀作に今乗るのも乙なことかもしれない。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

右は初代GSX250E。’81年にマイチェン。’82年にはGSX250Eカタナとなり、’83年にはビキニカウル付き(輸出名GSX250ES)が加わった

フューエルタンク、サイドカバー、リヤカウルヘッドライトなど保安部品は400と共通だが、フレームはセミダブルクレードルのまったくの別物。エンジンはDOHC4バルブとセットでTSCC技術を投入。4スト車のマーケットでは後発メーカーだったスズキが、これを期にリーディングメーカーとして大躍進。後の油冷エンジンほか、250cc水冷DOHC4気筒車でも先駆者となった

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