『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流カスタム(ハイカムの勧め) #09(最終回)

掲載日:2014年12月10日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

寒い冬も深まり、もう雪が降り始めてるところもありますが、実はこの時期、レースが終わると同時に来年に向けてのテストや試作のオンパレードとなり、11月から3月の開幕までが最も忙しく、勝負の時期でもあるのです。

さて、前回は私の大好きなカムギアトレインについてお話をさせて頂きましたが、カムシャフトを含めるシステムとしては絶対に外すことが出来ない機構があります。近代のモータースポーツでの頂点の技術は、何と言っても圧搾空気を使ったニューマチックバルブシステムという最高の技術です。今回はそのニューマチックバルブシステムについてお話をしたいと思います。

ニューマチックバルブシステム最大の特徴とメリットは、高回転化と高バルブリフト化を可能にすることです。コイル式の金属バルブスプリングが存在しない事により、往復運動部分の質量が小さくなり、ガス圧を高める事により小スペースで大きな反力が得られます。圧搾空気を制御し、その圧力でエンジンバルブを作動させる画期的なシステムなのです。

従来のバルブスプリングを利用した物には、バルブサージングを気にしないといけません。しかしニューマチックバルブではバルブサージングをあまり考慮する必要がないのです。往復運動部分の質量が小さいため、同回転数、同カムプロファイルであれば、バルブスプリングエンジンより摩擦損失が小さくなります。

この最高の技術が皆さんの目の前に最初に現れたのは、1990年のF-1(ルノーに採用された)だと思います。2輪ロードレースの最高峰MotoGPでは、2002年にアプリリアがニューマチックバルブスプリングのマシンを走らせたのが始まりです。2007年にはカワサキもシーズンを通して使用し、シーズン終盤にはヤマハも特定のレースで使用しました。

バルブスブリングが無いので反発力や抵抗が無いはずですが、始めてこの事実を知った時の私は「えぇっ!本当ですかそれ?」という感じでした。そのようなものが制御可能なのでしょうか?つくづく技術の進歩は凄いと感じました。モーターサイクルの進化はまだまだ止まりません。こうしてレースからストリートへ技術の受け渡しがされるんですね。

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