『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流カスタム(ハイカムの勧め) #08

掲載日:2014年09月24日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

前回はカムチェーンのお話をさせて頂きました。今回は“カムギアトレイン”の話をさせて頂きたいと思います。

カムシャフトの最も優れた機構と言えるカムギアトレイン方式ですが、これはカムチェーンを使用せず、クランク軸の回転運動をギアを使って駆動させる、我々の憧れのエンジンと言えます。特にホンダ車の採用は古くからあり、コンペティションモデルではCR110、CR71、CR72、CR93等が存在します。一部は市販車も販売されましたが、皆さんの記憶に残る車両ではRC30やRC45ではないでしょうか。2000年モデルからは、ツインではRVF1000SP-1があり、ホンダ車はこの他にあと10機種くらい採用されています。

カワサキ車ではWシリーズのW800、W650、W400等がこの方式を採用しています(意外ですよね)。またドゥカティはかなり変形の傘ギアを使用したカムギアトレイン方式、“ベベル”を採用しています。全て個性的ですね。

カムギアトレインをもう少し詳しくお話しすると、4ストロークエンジンにおいて、燃焼室の吸気バルブや排気バルブの動きを司るカムシャフトを回転させる動力の伝達に、通常カムチェーンやベルトが使用されています。ギアを利用する方式では、カムチェーン等によく起こる伸びに対してタイミングの遅れが極めて少なく、ギアの磨耗による誤差などは、カムチェーンの伸びなどとは比較にならないことは明らかです。

特筆すべきは、フリクションが少なく、またカムチェーンの回転運動による遠心力の影響を受けないため、高回転時の馬力損失も極めて少なく、かつバルブタイミングの精度を高める事が可能な点です。そのため、レース用をはじめとした高回転・高出力型のエンジンでは信頼性や耐久性などの面で重要視され、高コストの方式にもかかわらずホンダ車で多く採用されました。代表的な機種のRC30やRC45などの市販車では斜歯(はすば)歯車や、2枚重ねのギアにバネでテンションをかけるシザーズギアが採用されています。現在市販車に採用されていないのは、単純にコスト面によるものです。それらを押して採用された機種には、設計者の強い思いがあったに違いないと推測されます。

逆に、カムギアトレインのネガティブな点は何でしょうか?上記のコスト以外では、重量的に若干カムチェーンの方が有利かもしれません。また、整備性ではカムギアトレインの方が難易度が高いと言えるでしょう。しかし、それでも私はカムギアトレインのネガなんて、コスト以外は全く無いと思っています。カムチェーンやタイミングベルトは必ず切れる恐れがあり、伸びが発生しますから。

魅力的なエンジンのお話でした。ではまた次回。

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