『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流カスタム(ハイカムの勧め) #07

掲載日:2014年08月27日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

前回に引き続きハイカムに関わる重要な部品、カムチェーンのお話です。アドバンテージでは常にDID製品を使用しており、強化カムチェーンもそれは同じです。カムチェーンの構成部品は、プレートとローラーとピンの3種類です。アドバンテージではそれら全てを見直しました。

①プレートの形状は、通常多く使用されている瓢箪(ひょうたん)型から、耐久力をアップさせるために小判型と言われる形状に変更しています。

②ローラーはスプロケットが噛み込んで回る部分なので精度が重要です。通常は巻きブッシュタイプ(板をロール状に巻いてブッシュローラーとしてる)を使用していますが、回転抵抗の低減や強化を狙って、冷間鍛造で製造されるソリッドブッシュを採用しています。ソリッドブッシュによりカムチェーンを繋いでいるピン周りのローラーを一体成型する事で、継ぎ目の無い滑らかな表面と、優れた真円度を有する剛性の高いものです。このソリッドブッシュローラーを採用した結果、耐摩耗性及びローフリクション性に優れたカムチェーンが完成しました。

③チェーンを繋ぎ止めるピンに関しては、ダイハードα処理を施しました。ダイハードα処理はピンの表面に非常に硬い被膜を形成したもので、この被膜は内部に更に高硬度の炭化物を分散した形態となっています。これによりスタンダード品と比較して摩耗寿命が1.8倍以上という画期的な性能向上を実現しました。

④回転するカムチェーンの外周は各カムチェーンスライダーで押されているため、回転抵抗を受けてしまいます。その回転抵抗を落とすためにファインブランクカット(背面を磨く)とし、これにより回転抵抗を軽減させることに成功しました。

⑤見た目ではGOLD鍍金仕様になっており、カムチェーンでは初めての試みでした。

また、サイレントチェーンもオリジナル化しています。表面処理にはSV処理とダイハード処理を施した2種類を供給しています。表面処理技術SVはあらゆる使用環境で高い耐摩耗性を発揮するため、高性能・高強度のサイレントチェーンが誕生しました。

サイレントチェーンは通常のカムチェーンとはかなり違った構造になっています。ピッチが細かいことに加え、ピンと別の場所にスプロケットと噛み合う歯を作り、チェーンとスプロケットがギアのように次第に接触していくため、衝突するローラーチェーンより静かなサイレントと言う名称ではありますが、構造で静かなのではなく、オイルバスなので伸びが少なく、そう呼ばれているだけです。通常のカムチェーンはスプロケットで駆動を行うので多少伸びても使用できますが、サイレントチェーンはギア相手なので、伸びるともう使用が不可能(許容範囲はありますが)です。

メーカーにとってはエンジンの低騒音化、コンパクト化及び歯部の磨耗を抑制することができるサイレントチェーンは設計の自由度に貢献していると言えます。

ここで大きくまとめて言うと、ローラーチェーンタイプはサイレントチェーンタイプに比べピンが多いため、組み付け歪が少し多く、初期伸びは多いもののその後はローラー(軸受)があるため、運転における伸びは安定し、少ないと言えます。サイレントチェーンは初期伸びに関しては有効と言えますが、ローラーが無くピンが直接プレート圧入されるためピンに掛かる負担が大きくなり、最終的な伸びはサイレントチェーンの方が多いと言えます。

このように、カムシャフト交換をするのであればカムチェーンの同時交換をお勧めします。

以上、カムシャフトに大きく影響するカムチェーンのお話でした。ではまた次回。

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