『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流カスタム(スイングアームの勧め) #04

掲載日:2014年06月11日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

スイングアームには、スチール、アルミ製問わず様々な形状が存在します。カスタムユーザーの年代によっては、片持ちタイプやブーメランタイプのスイングアームが思い浮かぶのではないでしょうか。

私にとってはヤマハのモトクロッサー、1973年に登場したYZのカンチレバータイプですね。このカンチレバー(Cantilever)タイプのスイングアームは、側面から見ると三角形なのが特徴です。リアサスペンションはピボット軸付近の車体フレームに一直線上に配置され、当時としては画期的な路面追従性能だった事は間違いありません。スイングアームの形状でリアサスペンションのパッケージが大きく進化し、現在に至っているように思います。

特に人気が高かった片持ちタイプのスイングアームは、マッシモ・タンブリーニが設計したDUCATI 916や、後々の1098等に採用され、純粋にスタイリング上の理由から採用されているのも見逃せない事実ですね。

レースの世界では、ホンダ NS500エンジンを搭載する1986年型のGP500マシンです。セルジュ・ロセ率いるフランスのelfチームが開発し、イギリス人ライダーのロン・ハスラム選手が年間ランキング9位となりました。そのほか、ホンダ VFR750R(RC30)/NSR250R/VFR800など、プロアームという名称で多くの機種に採用されてきました。また1987年の鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、ヤマハ YZF750(OW89)、TECH21の片持ちスイングアームを採用したマーチン・ウイマ/ケビン・マギー組が劇的な逆転優勝を見せ、印象に強く残っています。

ほかにもBMW R/Kシリーズ、耐久レースへの参戦を意として設計されたDUCATI 916やMVアグスタ F4シリーズなどがあります。マグネシウム合金製の中空断面スイングアームを採用し、バネ下重量の軽減をしていますが、あの形状からは通常のスイングアームに対して軽量化という優位性があるとは考えられません。ただし、同じ形状であれば、アルミで製作するよりも単純に比重の低いマグネシウムの方が軽量であると言えます。マグネシウムはアルミのだいたい2/3ほどですから。

片持ちスイングアームの問題は、片側だけでホイールを支えなければならないため、剛性不足になりがちです。両持ち式と同じ剛性を確保するために、より多くの材料を追加する必要があることからも、片持ちだからと言って重量的に優位ということはありません。むしろ重量増を招いてしまった感もありました。

利点としては、ホイールの装着がしやすいということ、それにデザイン性に優れていることでしょう。耐久レースなどでタイムの切り取りに有効とされたようですね。2012年の全日本選手権で、DUCATI 1198でJSBクラスに参戦していた須貝選手は、左右のコーナリングの違和感、剛性不足による悪影響のため、アドバンテージで片持ちスイングアームを両持ちタイプに改造したことがあり、結果的には大成功でした。

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