『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流 Z系改造論 #10(クロスミッション編)

掲載日:2014年04月23日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

今回は⑤の、各ベアリング類を見直し、ハイパフォーマンス&ローフリクションのベアリングを開発する、についてです。

④の、現環境を踏まえたストリート向けの“走れる”クロスミッション、に関しては『アドバンテージ流 Z系改造論 #07(クロスミッションのすすめ)』を、お読みください。

当社が使用しているベアリングは、主にNTN製品です。ベアリングの基本的な働きは、機械の摩擦を減らす事です。ベアリングが摩擦を減らすことで生まれるメリットは、非常に大きなものがあります。皆さんもご存知かと思いますが、摩擦を減らすことでエンジンや機械が働く効率を高め、エンジンが本来持っているパワーを最大限発揮できるようになります。ミッションを作ってパワーを上げる事はできませんが、抵抗が無くなれば、潜在的パワーをロス無く発揮できるというものです。当然、摩耗を減らせばエンジンなどの機械の寿命は長くなります。最も期待したいのは、焼付きを防いでエンジンやミッションをトラブルから守ってくれることにあります。

開発当初はボールの数が11個ほどありましたが、進化するうちに、またはテストを重ねるうちに、10年間で何と、11個→10個→7個となり、ベアリングを受けるチャンネルも大容量のものに進化しました。11個のボールで受け止めていたものを7個にするということは、一般的には体力が著しく落ちることを意味します。しかし、逆にこれだけボールの数が減るということは、抵抗も著しく減る、という素晴らしい結果も兼ねている訳です。さらに1gでも軽く、というのは永遠のテーマでもあります。これらを実現できたのも、焼入れ技術が当時と比べて数段進化したこともありますし、ベアリングというものは、そのボール素材だけでも毎年進化している、ということにもあります。毎年ですよ?これは非常に心強いことです。

つづいて⑥の、各メタルブッシュを、巻きブッシュから削り出しブッシュに交換する、について詳しくお話をしましょう。ミッションギアの中にはメタルが入っていますが、この挿入部分のメタル本体にも拘り、削り出しによる繋ぎ目無しのスリーブを製品化しました。この製造には非常に多くの数を要求されるため、(コスト面で)本当に悩みましたが、アドバンテージオリジナルの意味はここにお金をかけてこそなので、何とか1,000個単位ですが、惜しみなく(笑)投入する事にしました。

完成したスリーブを挿入するのも、焼入れが終わったミッションのスリーブ圧入面は再加工し、スリーブを圧入する数値まで研磨してから挿入します。これは焼入れをすることにより、歪が多少なりともあることを嫌っての事です。前述のベアリング同様に、ここでの精度は後々まで影響してくるのです。これらの回転する軸部分は、ミッションにとって命と言っても過言ではありません。言い換えればシリンダーとピストンのような関係ですから、クリアランスも重要です。ミッションは管理して組み込む、この繰り返しで製品化されていくのです。

ではまた次回。

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