『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流 Z系改造論 #06(ケーブル編)

掲載日:2014年03月19日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

前回に続き、ケーブルについてのお話をしましょう。アドバンテージのケーブルは、特殊ポリプロピレンをワイヤー内部に仕込むことにより、インナーケーブルが滑り易く、抵抗が少なく、ローフリクションのワイヤーになります。軽快な動きも長く続きます。まさにハイパフォーマンス・ロングライフです。実際、当社のお客様で10年以上使用されてる方が何十人もいるほどです。スロットルワイヤーも同様です。結局、ケーブル類に最も求めるのは“操作性”、“ローフリクション”、“ロングライフ”という事に尽きますね。

過去にあったエピソードですが、当時の全日本選手権のトップカテゴリーは『TT-F1』でした。レース予選でライダーから「パワーもパンチも無い、何とかしてくれ」という要望がありました。当然、現場で出来る作業も時間も限られています。その時、私がたまたま新らしいステンレスケーブルを持っており、「ひょっとしたら効果があるかも知れない…」と、ステンレスケーブルを装着しました。

ライダーが何周か走り切った後で「何をしたん?めっちゃシャープになってかなりパワーが出てる!」と、驚いた顔で言いました。私はライダーには本当の事は言いませんでしたが、スロットルケーブルが特殊なものに変わっただけで、チューニングもしていないのになぜライダーはエンジンパワーが増幅したと感じたのでしょうか?なぜタイムアップする事が出来たのでしょうか?

実際にはパワーにも勝る事が起こっていました。スロットルワイヤーはキャブレターを開け閉めするために、スロットルを大きく絞ったり戻したりします。当時はキャブレターのリンケージの各受け部分にベアリングも無く、特殊な樹脂でフリクションロスを軽減させるということもあまりありませんでした。それが軽くなることによって、スロットルが幾分か早く開きます。その時に、ライダーは「あれ?パワーが出てる」と感じる訳です。

つまり、早くスムーズにスロットル全開となることで、ライダーは勘違いをしたんですね。しかし勘違いと言っても、実際にはほんの少しですが、マックスパワーに到達する時間が早くなり、結果的にタイムが削られることにもなります。タイムやスピードを競う競技の考え方は多数あり、多方向から考えていくのですが、荒っぽい言い方をすれば、ひとつのサーキットで勝つにはアクセルを何パーセント開けているか、開けられるか、です。そこに潜む無駄なものは取り除く事によって、トータルアベレージを上げていくことが可能になります。ライダーの環境面やマシン、多方面によるトータルな取り組みが必要なんですね。

必ず結果が要求される環境ならば、ライダー(の感覚)を騙してでも結果に結びつける。これもモータースポーツならではです。

これらの結果やノウハウを、一般の市販パーツに投入する事で劇的な変化をもたらす事も可能です。この様に、今回は操作系がかなり重要だということをお知らせさせて頂きました。ではまた。

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