『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流カスタムパーツ造り(ADVANTAGE F.C.C.) #02

掲載日:2013年10月16日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

『ADVANTAGE F.C.C.』 (トラクションコントロール・クラッチキット)の製品特徴としては、まずフリクションのコンパウンドに、ペーパー系ケブラー配合のクラッチディスクを使用しています。路面に伝わるトラクション性能を特に重視した結果、繋がりはソフトでありながら、パワーをかけて加速状態で立ち上がるときに、しっかりと受け止められる優れた性能を持ち、路面状況をリニアにライダーへ伝えることが出来ます。その性能はロードレーシングのみならず、モトクロスのようなオフロードのレーシングシーンでも(砂の上においても)、グリップ力やアクセルに対する応答性(リアのスライドなど)、コントロール性能が、高い評価を得ています。耐久性能については使用状況により異なりますが、従来品の約3~5倍のロングライフです。

キット内容のうち、プレッシャープレートやハブのついたキットのコーティングは、機種により高耐久性が必要なものはカシマコートを施し、よりレース的要素を重視する物は油温を下げる事が出来る『ACC』(アドバンテージクールコーティング)を施しています。これらを施す事により “カジリ” や、“段付き偏磨耗” も防いでいます。ハウジングやハブをスムースに、フリクションなどが動き易くなっており、ジャダーの防止にも一役買っております。

クラッチスプリングについては、『KYB』、『SHOWA』 のサスペンションバネ専門工場で製作しています。今までクラッチの世界では、クラッチスプリングに対してあまりにアバウトな製品が多いように思われました。それはスプリング自体の製品的特性から製品を作るときの公差の数値が大きい事にも起因します。

アドバンテージでは長年にわたるサスペンションの開発経験を活かし、サスペンションスプリング専門工場でバルブスプリング材(SWOSC-V)を使用してクラッチスプリングを製作することにより、バネの傾き公差0.5度以下で、スペシャルショットピーニング加工を施すことで、機種専用設計(バイクのキャラクターや現状の直しによる理想的な数値設計)をノーマルのバイクのクラッチで再検証・設計しました。また、このバルブスプリング材に対しても、求めるレートに応じて応力を独自に設定し、エンジン内部で160℃にさらされた場合にクラッチスプリング(線材)垂が堕ない為にも有効な径を選択するわけですが、実際は細いピアノ線を在庫してるメーカーは限られております。しかしサスペンションメーカーならば潤沢な線材が確保されているので、最適な設計が出来ました。

油温によるバネレートの低下を少なく設計し、全て最適化。強化クラッチにありがちな「ただ硬くてクラッチが重い」というような状況を、根本的に打開しました。

最後にもうひとつ。クラッチを強く押し付けるとミッションに悪影響が残り、最悪の場合、ミッションの破損に至る事もあるので要注意です。

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