『ツーリングのつぼ』

世界1周の防寒装備

掲載日:2014年02月18日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

世界一周に使ったXLR250Rになると、ヤマハのYDだかホンダのCDだか、実用車の風防をステーごと無理やり取り付けていた。すでに興奮のあまり、見た目の美しさとか他人からどう見えるかなどを考える余裕はなく、必要だと思われる機能だけを考えてカスタムしたのだ。質実剛健・実用本位・低価格の3拍子が揃った機能美だと呼んでもらっても構わない。そしてXLRと希望を載せた船は、横浜港からカナダへ向けて出港した。

実際に風防は、小雪の舞うアラスカやアウトバーンなど高速道路を走る時に威力を発揮した。また、走行中にバッタや蝶の大群に遭遇した時、伏せていれば何とかなったこともあった。しかしその逆に、サハラ砂漠やジャングルなどでは蒸し暑さに苦しみ、常に強風の吹いているパタゴニアでは、路肩に停めたXLRが風にあおられて倒れてしまうこともあった。とまあ、おおむね便利だったが、転倒するたびに割れて小さくなったのは想定外だった。

その初代の風防は、南米からヨーロッパに空輸した時に粉々に割られてしまい、ロンドンのバイク屋の裏に捨ててあったジャイロキャノピーから風防だけ譲り受けて取り付けた。この2代目は、これまでの経験から、視線のちょっと上になるようにノコギリを借りて切った。このくらいの高さだと、走行風はヘルメットのてっぺん辺りに当たる。その時にメカニックから「電動ワイパーも付けるかい?」と言われたが、それは丁重にお断りした。XLRはバッテリーレスだからだ。

手元の寒さは、丈夫そうなスーパーの買い物袋を加工してハンドルカバーを作っていた。それならば、暖かい地域に到着したら捨てることができる。一度でもサハラ砂漠の真ん中でスタックすれば、真夏に冬用の装備は持ちたくないだろう。もし私と同じような経済力のライダーは、日本では10kgの米袋が最良だと思う。これほど丈夫で柔軟性がある素材を、再利用せずに捨ててしまうのはもったいない。濡らしてはいけない物(シュラフや昇給辞令など)の防水袋にもなる。ただし、これを会社で常用すると昇進にひびくので、やるのなら偉くなってからやろう。

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