『ツーリングのつぼ』

困難な焚き木

掲載日:2014年01月21日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

諸君は正月をいかが過ごしただろうか? 私は富士山麓の本栖湖のキャンプ場に行った。だが、先に到着していた友人たちは、「雪が積もっていて寒かったから」といった理由で予定より前に帰ってしまい、私が到着したら誰もいなかったのだ。あてにしていたのに、まったくもって身勝手な友人たちである。水道が凍っていて水が出ないのは想定済みなので持って行ったが、困ったのは薪だ。この状況で火の気がないとあまりに寒い。すでに陽は落ちているので、その辺りに落ちている枯れ木を集めるしかない。いつものように適当に木の枝を積んで、缶ビールの包み紙を焚き付けにしたら、火がつかない。雪のせいで木が湿っていたことが敗因だった。

次は慎重に、まず松葉を敷き、次に爪楊枝ほどの細さの小枝を大量に集め、その上に鉛筆くらいの枝を井ゲタに組み上げ、空気の通りが良くなるように積み上げた。火は酸素が足りないと燃えにくいのだ。消防士が主人公の映画『バックドラフト』で、火災している部屋のトビラを開けると同時に炎が燃え上がるアレと同じ原理、なのだろう、たぶん。

幸いだったことは、友人にあげようとして、古いバイク雑誌を持っていたコトだ。今後の業務に差し障りがあるので雑誌名は挙げないが、立派な造本の雑誌だ。それを破いて焚き付けにした。雑誌を造っている者として、それを燃やすという行為に罪悪感はあったが、他に選択肢はなかったのだ。すると白黒ページは素直に燃えたが、美女たちのグラビアページからは有害物質が出ているような匂いがした。もし中途半端にグラビアページが燃え残っていると、次に来た人があらぬ妄想を抱くかもしれないので、確実に燃やし尽くすことに気を配ったのは言うまでもない。

よくキャンプ場や雑貨屋で売っている薪は、充分に乾燥させてあるので、こんなに苦労はせず簡単に火がつく。ちなみに炭を使えば、煙も少なく調理もしやすいなど利点があり、その金額の価値はあると思う。

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