『ウェア屋さんのひとりごと』

バックプロテクターについてのお話

掲載日:2011年11月24日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

ライディングウェアに標準装備されているプロテクターでは、ダメージを受ける可能性の高い肘や肩に、グレードの高いプロテクターが採用されている場合が一般的です。対して背中や胸に関しては、オプションで任意に装着するといったウェアが殆どですが、この部位の重要度が低いのかというと決してそうではありません。腰を強打し、脊髄に障害を受けた事による下半身不随や、胸部に大きなダメージを受けた事による死亡率は頭部に次いで高く、これらの部位にも安全性の高いプロテクターを使用すべきなのは言うまでもありません。本来であれば、これらの部位も十分なプロテクターを標準装備にしたいところですが、硬さや装着方法等、様々なタイプや価格帯のプロテクターが存在することもあり、アップグレードに関してはユーザーの判断に委ねているというのが現状である反面、未だに必要性を感じていないユーザーが多いのも事実です。

今回はバックプロテクター(背中)についてのお話ですが、レースの現場では20年以上も昔から必需品で、今年からは一定の面積を硬質シェルで覆うプロテクターの使用が義務付けられました。ちなみに前にもお話した通り、硬いシェルが必ずしも高い安全性を持つという訳ではないので念のため…。

さて、背中に大きなダメージを受ける代表的なケースとしては “ハイサイド” による転倒が挙げられます。レース経験の無い方にとって縁が無い様に思われるケースですが、実際はそうでもありません。路面温度が低くなるこれからの季節、特に走り出して間もない時はタイヤの温度も低いため、交差点での立ち上がりで不意にアクセルを開けてしまいタイヤがスリップ。「あっ」と思ってアクセルを戻した瞬間にタイヤがグリップして反対側へ飛ばされる。これが典型的な “ハイサイド” ですが、速度の速い遅いに関係なく、アクセルのオーバーアクションによって簡単に起こり得るアクシデントです。このケースでは背中から路面に落ちる事が多く、バックプロテクターの能力が不充分だと、特に背骨に対して大きな衝撃が伝わってしまいます。

そのほか、通常のスリップダウンによる転倒でも、転がった先に存在する縁石やガードレールに背中から衝突するという場合が考えられます。この様な場合、衝突する相手の形状が鋭利である事も多く、平らな路面以上に大きなダメージを受け、背骨や脊髄の損傷という可能性が非常に高いと言っても過言ではありません。さらに、その先で起こりうる自身への障害を考えると、背中のプロテクションが如何に大切なものであるかを考えさせられませんか?

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