『バイク乗りの勘所』

飛ばしたい気持ちを抑える

掲載日:2015年01月13日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

ここ何年もの間、伊豆スカイラインを二輪車通行止にするかどうかの議論が続いている。原因は言うまでもなく、大型の二輪車による無謀な運転と、その結果として起こる事故の多さである。しかし、伊豆スカイラインを通行止にしたところで、問題は解決しない。無謀な運転も事故もなくなりはしないからだ。伊豆スカよりも、もっと交通量が多く、構造的にも危険な道路で同じような走りをすれば、事故や死傷者が増加するのは火を見るよりも明らかだ。

同じような事故は、頻度の差こそあれ全国各地の山道で起きている。そしてどの地域でも、警察が主体となって事故をなくすための取り組みが行われている。だが、取り締まりの強化や安全運転の指導などをいくらやっても、いわゆるイタチごっこでしかない。『飛ばす』目的で山道に集まるライダーというのは、麻薬中毒患者のようなものだから、そっち方面の専門家を交えて、取り締まりや指導、治療などの方法を考えるのが効果的ではないかと思う。

もうひとつ、山道を『飛ばして』事故を起こした場合の、現場の写真や動画などを繰り返し見せるというのも、『飛ばしたい』気持ちに対する有効なブレーキになるはずだ。路上に散らばったバイクの残骸や血痕などという生ぬるい物ではなく、俗にグロ画像と呼ばれる、凄惨な事故現場や負傷部位の写真や動画を見せればよいのだ。対象者の絞り込みが難しそうだが、当面は希望者および免停講習の受講者あたりを対象にして、徐々に拡大していけばいい。

これと似たことを、地元警察開催の『ライダーの意見を聞く会』で提案したところ、「見た人がPTSDになっても困る…」みたいな反応だった。しかし、大型バイクで山道を『飛ばす』こと自体、死と隣り合わせの行為なのだから、PTSDになる代わりに命を守れるのだと考えれば、躊躇する必要はない。職務上、画像や動画ではなく本物と接触する警察や救急関係者のことを考えれば、当事者たりうるライダーをPTSDから守ろうとするのは、おかしな話である。

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