『バイク乗りの勘所』

掃除のしすぎにご注意を

掲載日:2013年07月29日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

掃除は整備の第1歩…などと、よく言われる。確かに、汚れたマシンを掃除すれば異常に気がつきやすいし、汚れそのものがマシントラブルの症状のひとつであることも多い。しかし、度を越した掃除や、やり方を間違った掃除が、別の新たなトラブルの原因になることがあるので気をつけてほしい。最も多いのは、水洗いによって侵入した水分による錆の発生、電子機器の誤作動、粘着テープ類の劣化などである。水洗いのあとは、水気を完全に除去(乾燥)させておくべし。

ところが、水気を吹き飛ばし、乾燥させるのにエアガンを使って “プシュー” とやるのは、実はあまり感心しない。水滴が付いたままだと外装パーツに コーヒーリング ができやすいから、それを手っ取り早く防ぐためなら良いが、狭い隙間に入り込んだ水を吹き飛ばそうとしてエアを吹きつけるのは、水滴を細分化し、さらに奥に押し込むことにもなりかねない。そうなったら、もうエアガンでは手に負えず、洗車が終われば速やかにエンジンを始動し、熱で蒸発させるしかない。

エアガンの話をしたついでに触れておくと、水洗いをする・しないに関わらず、オイルシールやOリングの近くに高圧エアを吹きつけてはダメだ。一例を挙げると、ブレーキキャリパー。あたりに付着したパッドの摩耗粉を飛ばすためにエアを吹きつける。確かに、それだけでかなりきれいになる。しかし、高圧のエアに混ざった摩耗粉がピストンシールの隙間から内側に入り込むのは避けられず、ブレーキフルードの汚れやシールの損傷(シール不良による液漏れ)を誘発する。

他にも、研磨剤入りクリーナーによる塗膜の損傷(典型的な例はナンバープレートの文字かすれ)、パーツクリーナー(溶剤)による油膜の消失~錆の進行、拭き取りに使ったウエスの毛クズによるオイルシールのリップ切れ、除去した錆や埃が別のところに噛み込むことによる種々のトラブルなどなど、掃除なんかしなければ良かったのに…という例は多々ある。要は、たかが掃除と言えどもよく考え、中途半端になりそうなら最初からしないといった判断が大切なのである。

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