『バイク乗りの勘所』

フロントブレーキのかけ方

掲載日:2013年01月07日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

スポーツバイクに乗っていて、最も気を使うのはブレーキングである。握りゴケという言葉があるように、ブレーキレバーを握ったとたんにフロントタイヤがロックしたり、ロックしたことさえわからぬままスリップして、そのまま路肩に直行、あるいは転倒というパターンが、オートバイの自損事故のうち、かなりの割合を占めている。幸い転倒には至らなくても、ライディング操作によって “ひやっ” とした経験の多くがフロントブレーキの操作ミスではないだろうか。

では、なぜフロントブレーキが難しいのか。それは、フロントタイヤが、常に強力な制動力を受け止めるだけのグリップ力を発生しているとは限らないからである。グリップ力が足りない状態で激しいブレーキングをするから、ロックやスリップするのである。逆に、充分にグリップ力を発生している状態では、“こんなに強く握って大丈夫なの?” と思うほど大きな制動力を与えてをも、ロックもスリップもせずに持ちこたえてくれる(もちろん、限度はあるが…)。

前後ブレーキのうち、フロントを主に使え…と、どこかで一度くらいは教えてもらったはずだ。これは、フロントフォークが縮み、リアショックが伸びることからもわかるように、ブレーキをかけると前輪荷重が増え、後輪荷重が減るのと関係している。荷重が増えれば増えるほど、タイヤが路面に強く押しつけられてグリップ力が高まり、強い制動力を受け止められるようになる。リアショックが伸びて浮き上がり気味の後輪では、充分な制動力を受け止められないのである。

だが、前輪も、ブレーキをかけた瞬間には充分なグリップ力を発生していない。だから、最初は、ほんの一瞬、軽く握り、グリップ力の高まり(フロントの沈み具合やタイヤの押しつぶされた感触)を確かめながら徐々に握り増していく。要は、制動力の上昇よりもグリップ力の上昇を、常に先行させるのだ。レバーは、握るというよりも、引く感じがいいかもしれない。ワシづかみにしている人は、レバーにかける指の本数を減らすのもひとつの方法だ。あとは練習あるのみ。

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