『バイク乗りの勘所』

ちょい乗りがバイクを壊す

掲載日:2012年11月19日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

明け方の最低気温が5度を下まわり、朝練や早出のツーリングが辛い季節になってきた。とはいえ、私の住む京都府南部などでは、それなりに暖かい格好をすれば、苦痛というほどではなく、年内いっぱいくらいは “一大決心” をしなくてもバイクに乗れる。しかし、バイクにとっては、もうすでに、適温からは相当に外れた、極低温の環境なのである。タイヤしかり、エンジンオイルしかり、ブレーキしかり…。寒いほど望ましい箇所はひとつもないと言って過言ではない。

この時期は、朝イチの始動直後などに、マフラーから白煙がもくもくと出る。寒ければ寒いほどその量は多く、後ろから見ると煙幕のせいで車体が見えなかったりもする。白煙=水蒸気量が多いというのは、混合気の燃焼状態が良い証拠であり、悪いことではない。ところが、水蒸気=水だから、冷えると水滴になり、それが集まると水溜まりになる。排気管内に水が溜まれば、錆の進行は免れない。表面とは異なり、内壁にはメッキも防錆塗装もされていないのが普通だ。

排気管内に水が溜まらないようにする方法はひとつ。排気管全体の温度を上げ、内部で水蒸気が水滴に変わらないようにするしかない。気温や走り方で大きく異なるが、複雑な内部構造を持った消音器部分が充分に温まるには、5分や 10 分の走行では足りない。だから、ちょい乗りの繰り返しは、排気管内に水を溜めているようなものだと考えるべし。エンジン停止後に管内に残った水分を蒸発させるためにも、しっかり温度を上げた状態で走り終えるように心がけたい。

同様なことは、クランクケース内にも起る。こちらは主に、空気中の水分の結露によるものだが、エンジンオイルに浸かっていない部分に水滴が生じ、それが集まってオイルパンの底に溜まる。ちょい乗りでは気化させることができず、さらに、水蒸気がクランクケース内に侵入するから、状態は悪化の一途だ。結露によるトラブル防止のためには、極端な低温環境で保管しないのはもちろん、いったんエンジンをかければ、充分に温まるまで走り続けるのが望ましい。

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