『バイク乗りの勘所』

プリロードを抜いてみませんか(1)

掲載日:2012年11月05日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

プリロード。またの名をイニシャル荷重。通称イニシャル。バイクの話にはよく出てくる、重要かつ基本タームである。にもかかわらず、正しく理解されていることは少ない。プリロードというのは、放っておくと伸び切るスプリングに、あらかじめ与えておく荷重のことだ。直立させて 1kg の重りを乗せると 1mm 縮むスプリングに 2kg の重りを載せれば 2mm、10kg だと 10mm 縮む。この比例関係は、どんなスプリングでもたいてい持っている、バネとしての基本的な性質である。

リアショックに、仮に自由長(荷重を与えないときの長さ)が 200mm かつ1kg の重りを乗せたときに 1mm 縮むスプリングが使われていたとしよう。普通のリアショックは、スプリングを何 mm か縮めてセットされている。で、自由長 200mm のスプリングが 190mm にセットされていたとすると、縮んだ長さは 10mm 。1kg で 1mm 縮む場合、10mm だと 10kg 。つまりそのスプリングは、あらかじめ 10kg の重りを乗せた状態で使われていことになる。プリロード 10kg というわけだ。

プリロードが 10kg かかったスプリングは、10kg 以下の荷重を与えても縮まない。10kg を超える荷重を受けてはじめて縮む。25kg の荷重がかかったときは、プリロードとの差の 15kg 分、そこからさらに縮む(自由長からだと、ちゃんと 25kg 分縮んでいる)。で、15kg 分縮んだスプリングは、10kg の荷重減が生じても縮んだままである。これに対して、プリロードを 20kg に増やせば、25kg の荷重を受けて縮むのは 5kg 分。10kg の荷重減が生じるとリアショックが伸びきってしまう。

走っているバイクのリアショックにかかる荷重は、路面の凹凸や加減速により、増減を繰り返している。そこで、荷重が増えた場合にのみ気をとられず、減った場合のことを考えてみてほしい。路面からの衝撃で縮んだショックがもとに戻るときや、フロントブレーキを強くかけたとき、リアショックにかかる荷重がプリロード以下になれば、ショックは伸びきってしまい、再びプリロードを超える荷重がかかるまでの間、リジッド(伸縮しない)になってしまうのである。

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