『バイク乗りの勘所』

一度はやってみたい押しがけ

掲載日:2011年11月28日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

1980年代以前のロードレースは、押しがけスタートだった。ピットから出走してコースを1周してきたライダーは、スターティンググリッドに着くとエンジンを止め、選手紹介の後、マシンの脇に立ってスタートを待ち、シグナルの合図とともに一斉に押しがけでエンジンを始動してコースに向かって行った。スタート10秒前あたりからの静寂と、それを破る2ストエンジンの始動~半クラの音。これらを懐かしむ古いレースファンも多いはず。

押しがけはまた、選手にとっては勝負どころ、観客にとっては見どころのひとつでもあった。そして、ライダーによって、上手/下手(早い/遅い)の他に、カッコいい/カッコ悪いの差がはっきりしており、上手くてカッコいいライダーの押しがけは、それだけで充分に絵になり、ファンを魅了した。そんな姿を真似て、80年代のレーサーレプリカブームのときは、峠や街中で押しがけをする革ツナギ姿のライダーも珍しくなかった。

ロードレーサーが押しがけだったのは、もちろん、始動装置を持たないからだが、ストリートバイクでも、例えばバッテリー上がりなどでそれが使えなくなったとき、押しがけなら始動できることは多い。ただ、2ストのロードレーサーやそのレプリカと比べると、4ストのハイコンプレッションエンジン搭載車は、車重の差もあり、かなり押しがけしにくい。が、コツ(2速に入れる、など)さえつかめば、ストリートバイクならたいてい押しがけできる。

やってみようという人は、車重が軽めで排気量が大きめの単気筒車など、跨がらないと始動困難な機種を除き、最初は “エンジンの始動” と “シートへの跨がり” を、別々にやってみるのがいい。慣れないと転倒(向こう側に倒してしまう)の恐れがあるし、道路や交通の状況によっては危険でもあるから、練習は公道以外のところですべし。できるようになったら、1980年代の世界GPなどのビデオを参考に、さらにカッコよく秘技を磨いていただきたい。

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