『バイク乗りの勘所』

アイドリングの下げすぎに要注意!

掲載日:2011年08月01日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

ドドッ、ドドッ、ドドッ…と、まるでクランクの回転が見えるような、いや、ただ回っているだけでなく、回転数の変動までわかるほどアイドル回転を低くしたマシンをよく見かける。確かに、鼓動感や排気音が大切な魅力の一部になっている単気筒や2気筒の場合、スムーズな連続音よりも荒々しい断続音のほうが心地よく、迫力があり、今にも止まりそうな低回転でも止まらずに延々とアイドリングできるのは、燃料系や点火系を含むエンジンの調子が良い証拠でもある。

しかし、いい気になってこれを続けていると、思わぬトラブルの元になることがある。そのひとつは、アイドル回転(=クランク軸の回転)を下げすぎると、クランクと連動して動いているオイルポンプの回転が下がり、油圧が低くなって生じる潤滑不良である。とくに夏場は、冬場よりもオイルの粘度が低下しているから、ただでさえ油圧が上がりにくい。そんな状態のエンジンに、今にも止まりそうなアイドリングを強いるのは、百害あって一利なし。

冷却という点でも、過度に低いアイドル回転は、冷媒(温度の高い部分から低い部分に熱を運ぶ)である冷却水やエンジンオイルの流量を低下させ、水温や油温の上昇を招く。とくに空冷エンジンの場合は、アイドリング=停車だから、走行風による冷却が期待できないので、エンジンオイルの循環によるエンジン内の冷却が欠かせない。上に書いた油圧と合わせて考えれば、油温上昇→粘度低下→リーク増大→流量減少→油温上昇…と、悪循環に陥ってしまう。

また、アイドル回転を下げすぎると、各部の振動が大きくなることが多い。その理由はさまざまだが、正規のアイドル回転数以上で有効な防振対策(エンジンのラバーマウント化やダンパーの設置など)が施されたマシンで、それらの効果が得られない低い回転数で運転を続けると、防振対策パーツの劣化が早まり、やがてエンジンや車体の各部に大きなストレスが加わるようになる。アイドリングを下げたい気持ちはわかるが、それには大きなリスクが伴うことをお忘れなく。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索