マン島TT 2019、TT-ZEROクラスの表彰台を日本人エントラントが独占!

掲載日:2019年06月12日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/山下 剛

マン島TT 2019、TT-ZEROクラスの表彰台を日本人エントラントが独占!の画像

無限はワンツーフィニッシュを決めて6連覇を達成。マイケル・ラッター(#1)は18分34秒172(平均速度121.909mph)でコースレコードを更新しての優勝を決めた。

6連覇を達成した無限と
3位入賞の快挙を遂げたTEAM MIRAI

6月6日、マン島TTは全7クラスのうち5クラスの決勝レースが行われた。このうち、600cc4気筒で競う「スーパースポーツTT」と、2気筒650ccで争う「ライトウェイトTT」、そしてゼロエミッション(排ガスゼロ)クラスとなる「TT-ZERO」において、日本から参戦している3組が出場した。

マンクスGPに2回、マン島TTに2回参戦し、マン島でのレースで5年目を迎えた山中正之選手は、今年は体制を一新しての参戦。昨年までは自身がチームを率い、ライダーと監督を兼任していたが、今年はイアン・ロッカーが率いる「TEAM I.L.R.」にライダーとして加入。走ることのみに集中するだけでなく、ライトウェイトTTにも参戦してのマン島TTだ。

今年で8回目のマン島TTを迎える「無限」は、独自設計の電動スーパーバイク「神電八」での参戦。ライダーには昨年に続き、現役ライダーでマン島TT最多勝利を誇るジョン・マクギネス選手と、常にトップ10に名を連ねるベテランのマイケル・ラッター選手を起用し、6連覇を狙う。

2011年にTT-ZEROクラスに初参戦して以来、やはり独自設計の電動スーパーバイクでマン島に挑んできた「TEAM MIRAI」は、昨年リタイヤの雪辱を晴らすべく「韋駄天X改」を製作。ライダーにはイアン・ロッカー選手を迎えて表彰台を目指した。

今年のマン島TTは、練習と予選走行が5月25日〜31日、決勝レースが6月1日〜7日の日程が予定されていた。しかし雨や霧といった悪天候が続いたため、練習と予選走行6日分のうちで走行が開催されたのは2日間のみとなり、予選もままならない状況に見舞われた。さらに悪天候は決勝ウィークに入っても続き、度重なるキャンセルのため決勝レースはラップ数を短縮して開催されるなどの影響が出た。

これによって山中選手が参戦したスーパースポーツTTとライトウェイトTTは、本来4周で行われる決勝レースが2周に短縮。1周で競うTT-ZEROは練習と予選走行が2回しか行われないまま決勝レースを迎えた。

天候の回復を待ち続ける2週間を耐えた山中選手は6月3日、まずスーパースポーツTT決勝レース1に出場したが、2周目にマシントラブルによってコース終盤でストップ。リザルトは残せなかった。そして6日、スーパースポーツTT決勝レース2では、平均速度114.784mphで自己ベストを更新しての完走、45位となった。続いて行われたライトウェイトTTでは、平均速度110.192mph、23位での完走となった。

そして無限、TEAM MIRAIが出場したTT-ZEROは7チーム9台が決勝レースに参戦。無限はラッター選手が1番手、マクギネス選手が3番手、ロッカー選手は6番手でスタート。コース中盤のサルビーストレートにおける最高速はマクギネス選手はトップとなる176.14mphを記録。無限はワンツーフィニッシュと6連覇を達成し、マン島TTの記録をさらに更新する好結果を出した。

一方、最高速こそ他チームに譲ったTEAM MIRAIのロッカー選手だが、セクタータイムはスタート直後から順調に4番手を堅守し、コース終盤では3番手に浮上。そのままチェッカーを受けて3位を獲得。TT-ZEROでは日本勢コンストラクターが表彰台を独占する快挙となった。

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3位を獲得したTEAM MIRAIは、岸本ヨシヒロさん(写真中央)が率いるプライベートチーム。昨年リタイヤの雪辱を晴らすべく改良を重ねた「韋駄天X改」と、TT職人ともいうべきベテランライダー、イアン・ロッカー選手(右から2人目)の堅実な走りが結実した。

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TEAM I.L.R.のパドックで顔を合わせ談笑する山中選手(左)と岸本代表(右)。

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今年はマン島TT常連チームである「TEAM I.L.R.」に加入しての参戦となった山中選手(左)。走ることのみに集中できるため肉体的にも精神的にもよゆうが生まれたそうだ。中央はイアン・ロッカー選手、右はチームスポンサーのマーク・カバーデール氏。

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MUGEN / Bathams Mugenのパドック。宮田監督(右から2人目)の表情には笑顔が見られるが、昨年は達成できなかったワンツーフィニッシュに向けてマシン開発とチーム体制を万全にして臨んでおり、気の抜けないレースウィークを過ごす。

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白い車体にブルーをあしらった神電八(#1)はマイケル・ラッター選手のもの。昨年の神電七からの変更点はモーターの出力向上の他、全体に渡って小改良が行われ、信頼性と堅実性を高めているそうだ。

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対して赤があしらわれる神電八(#3)は、ジョン・マクギネス選手用マシン。近年は怪我で出場を見合わせていたマクギネス選手にとって3年ぶりのTT-ZERO参戦となる。

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TEAM MIRAIが独自開発した電動スーパーバイク「韋駄天X改」は、NSF250Rのフレームを改良したシャシーに、ゼロ・エンジニアリング製モーターの改良版、独自設計のインバーターを搭載する。車格・出力ともにミドルクラスといえるが、制御系の信頼性を高めたことで完走、3位を獲得した。

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山中選手が走らせた2台のマシンはいずれもカワサキで、こちらはスーパースポーツTT参戦用のZX-6R。マン島TT常連チームのマシンに乗ることで、マン島TTならではのセッティングの妙を知ることができたそうだ。

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こちらはライトウェイトTT参戦用マシンで、ベースモデルはER-6。フロントの足回りにはGSX-R1000用が移植される他、スイングアームはヴェルシス650用に換装されるなど、マン島TT用チューンが施されている。

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TEAM MIRAIの韋駄天X改は、2回目の走行となった予選においてマシントラブルが発生。急遽、日本から予備パーツを持参したエンジニアがマン島入りしてマシンを修復した。

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予選走行後、充電をはじめとするメンテナンス中の神電八。バッテリー充電中は冷却のためのダクトが取り付けられる。

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6月6日、スーパースポーツTT決勝レース2、コース終盤のクレッグニバーを通過する山中選手。

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同日のライトウェイトTT、こちらはコース序盤のユニオンミルズを走行する山中選手。

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TT-ZERO決勝レース、6番手スタートながらコンスタントな走りで追い上げ、3位を獲得したイアン・ロッカー選手と韋駄天X改。

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TT-ZERO参戦は3年ぶりとなるジョン・マクギネス選手と神電八。決勝レースではブランクを感じさせない走りで2位を獲得した。

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1位でのチェッカーに向けてスロットルを開けていくマイケル・ラッター選手と神電八。昨年更新した自己記録をおよそ0.8秒短縮しての優勝を果たした。

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TT-ZEROで3位を獲得したイアン・ロッカー選手(右)と、TEAM MIRAIの岸本代表(左)。

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岸本ヨシヒロさんは2011年から独自開発の電動スーパーバイクでマン島TTに参戦。5度目の挑戦で表彰台を獲得した。岸本さんは6月30日にアメリカ・コロラド州で行われる「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」にはライダーとして参戦して優勝を目指す。

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マンクスGPに2度、マン島TTに3度目の参戦となった山中選手。参戦体制を一新して挑んだ今年は、これまでの課題を消化しつつラップタイムの自己ベストを更新。来年もマン島TTへの参戦を決意している。

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