モトグッツィ V7III ミラノは上質装備が満たす所有感に加えて気軽に走り出せるナナハンツイン

掲載日:2018年08月28日 フォトTOPICS    

取材協力/ピアッジオグループジャパン
取材、写真、文/山下剛
構成/バイクブロス・マガジンズ

モトグッツィ V7III ミラノは上質装備が満たす所有感に加えて気軽に走り出せるナナハンツイン

モトグッツィのV7 IIIシリーズに特別仕様が追加された。「Milano(ミラノ)」と名づけられたこのV7 IIIは、高級感あふれるめっきパーツやアルミパーツと、シックなモノトーンの燃料タンクなどをあしらったメーカーカスタムマシンだ。

めっきパーツを主体として
高級感とシックさを実現した特別仕様

現在のモトグッツィV7シリーズは、2007年ミラノショーで初公開され、翌年デビューした『V7クラシック』が第1世代となる。ブレヴァ750やネバダに採用されていた744cc空冷V型2気筒エンジンと、鋼管チューブラーダブルクレードルフレームなど、長年に渡って熟成してきた車体構成を活かしたものである。そのうえでモトグッツィが1967年に登場させた初代V7(縦置きV型2気筒エンジン搭載市販車第1号)の意匠をモチーフとしたネオクラシック(あるいはヘリテイジ)としたモデルが現代のV7シリーズなのだ。

2011年にはエンジン搭載位置やステップ位置などを変更してライディングフィールを向上させるなどで進化させた『V7 II』となった。この第2世代ではABSとトラクションコントロールも搭載して安全性も高められ、より扱いやすいバイクへと進化した。

現行モデルとなる第3世代『V7 III』が登場したのは2017年。1967年のミラノショーで初登場して以来50年を迎えた節目の年だ。ユーロ4の排ガス規制に対応させるとともに、エンジン出力の向上や2段階調節が可能となったトラクションコントロールの装備などで、より快適かつ安全に走れるバイクとなった。

さて、ここで紹介する『V7 III Milano』は、冒頭で述べたとおり特別仕様だ。ベースとなったグレードは『V7 III Special』とされている。しかしこのグレードは現在日本未導入なので、日本でも販売されているベーシックグレード『V7 Stone』と比較するとその違いがわかりやすい。

ファッション発信の最先端の世界都市として認知されているミラノだが、モトグッツィ本社のあるマンデッロ・デル・ラリオからバイクで90分ほどの場所にある、モトグッツィにとってもっとも身近な大都市だ。

マンデッロ・デル・ラリオはアルプスの南端にあり、コモ湖というリゾート地にも近い。週末になればミラノのバイク乗りがツーリングにやってくるエリアだ。もちろん、世界最大のバイク展示会『ミラノショー(EICMA)』が開かれる都市でもある。

以下、写真とともに『V7 III Milano』の細部を見ていこう。

エキゾーストパイプからサイレンサーまですべてめっき加工されたマフラー。エンジンがブラックアウトされているため、マフラーの存在感がひときわ強調される。

フロントフェンダーは、アルミ製のショートタイプとしている。前端にはモトグッツィのロゴである鷲がプリントされる。

リアフェンダーもアルミ製だ。テールランプやウインカーはスチール製パイプステーにマウントされる。めっきされたグラブバーもミラノの特別装備。

車名が印字されるサイドカバーもアルミ製。肉抜きされた穴がカフェレーサームードを演出する。

ミラー本体とステーもめっきが施される。鏡面は横幅が大きく、後方視界を広く確保できる。

メーターは回転計が追加された2眼タイプ。どちらもアナログ表示の指針式で、速度計の下部にはギアポジションや距離計を表示する液晶パネルを装備。回転計には「made in Mandello del Lario」と、モトグッツィ本社工場がある地名が印字されている。

シートは側面に合皮、座面はタックロールとしたアルカンターラを用い、白いステッチをアクセントとした特別仕様。シート後端の「MOTO GUZZI」ロゴは印字ではなく刺繍だ。

燃料タンクは同形状ながら光沢のあるグレー。車体をモノトーンとすることで、ヘルメットやジャケットなどでカラーコーデを楽しみ、彩りある街に溶け込むバイクにしたい、という開発者の意図が伝わってくる。

エンジンバンパーとセンタースタンドはオプション。大きく張り出したバンパーは保護性能が高く、またサブライトやアクションカムのマウントを装着できるメリットがあるが、特徴的なエンジンを目立たなくしてしまうデメリットもある。

この記事の趣旨は車両紹介だが、せっかくなので簡単な試乗記も添えておこう。

モトグッツィというと、車両側面に張り出した空冷エンジンと、縦置きクランクシャフトという車体構成が注目される。スロットルをひねれば反力で車体が右へ傾くし、それでいて直進安定性が強い。また、エンジンという重量物が高い位置にあるため重心が高く、バイクをリーンさせていくとある地点からパタンと倒れ込んでいく。

たしかにこれらによるライディングフィールはモトグッツィらしさでもあるが、現行モデル、とくにV7 IIIにおいては巷間言われるほどクセの強いものではなく、試乗という短い時間でもすぐに慣れてしまうレベルのものだ。また、シャフトドライブ特有のテールリフト(加速時に尻上がりになる現象)はほとんど感じられない。スロットルを開けると右へ傾く特性も、急加速や強いエンブレを効かせたときに現れるくらいで、通常の加減速時にはほぼ感じられないし、特別に意識する必要もない。乗りにくさや扱いにくさはどこにもなく、ごく普通に乗れるバイクだ。

いや、V7 IIIはむしろ、各メーカーの現行モデルと比較しても乗りやすい部類のバイクなのだ。大型バイクの大排気量化が進むなか、750ccの排気量と2気筒というコンパクトなエンジンで、車体もスリムで比較的軽く、足つきもいい。押し歩くのも容易だし、ストップ&ゴーや小さなコーナーが多い市街地走行も気楽にこなせる。同排気量クラスのラインナップを見渡しても、実に貴重な存在なのだ。

空冷V型2気筒エンジンは2,000~4,000回転が常用域で、ここを使っているだけでも交通の流れを十分にリードできる。トコトコとやわらかな振動は心地よく、それでいてしっかりとトルクを生み出してくれる。トランスミッションは6速で、トップギアに入れて3,000回転で80km/h、およそ3,700回転で100km/hに達する(いずれもメーター読み)。大型バイクなのに52psという最高出力は非力に思えるかもしれないが、街乗りからツーリングまで楽しめるバイクとしては必要十分なパワーだ。

誤解をおそれずいえば、V7 IIIというバイクは「イタリアのSR」である。もちろん排気量も気筒数も異なるし、車重もちがえば価格もほぼ2倍だ。しかし、どんな用途にも使えて気軽に走れて、なおかつ親しみやすく扱いやすい車両特性は、ヤマハSRのそれと同じだ。車重はSRよりもかさむが、そのぶんエンジンパワーがある。そのゆとりは景色を楽しみながら走ることに使えるし、安全運転の集中力にもつながる。

モトグッツィは変わったバイクで乗りにくい。かつてはたしかにそうだったが、今や偏見である。それでいて「他の人が乗っていないバイク」という、バイク乗り特有の満足感を得られる。古い価値観をいっぺん取り去って、ニュートラルな気持ちで一度試乗してもらいたい。店頭やイベントの短い時間の試乗でも、V7 IIIの素性の良さをきっと体感できるはずだ。

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