【2014 マン島TTレース】 世界最速に到達した神電の軌跡

掲載日:2014年06月24日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/小林 ゆき  取材協力/マン島TTレース公式サイトチーム無限・神電參公式サイト

一般的なバイクにおける“タンク”部分からアンダートレイまで、実はぎっしりずっしりとバッテリーが積まれている。TT直前に行われたキャドウェルパークの事前テストでウィリーをするジョン・マクギネス選手。

神電零・神電壱・神電貳・神電參
マン島TT Zeroで優勝するまでの変遷

2014年のマン島TT Zeroでついに優勝&準優勝を成し遂げた日本の『チーム無限・神電參』。その道のりはけっして平坦ではありませんでした。

“雷”から“静電気”に至るまで、自然界にある電気の全てを司る神の力を受けてレースに挑む、という意味を込め、“神電(SHINDEN)”と名付けられたマシンは、2年目の2013年には“貮”、2014年は“參”と、そのバージョンアップを示す漢数字が付与されました。

実は、この神電には神電“零”とも言うべきプロトタイプが存在していました。テストが始まったのは2011年の真夏。プロジェクト自体が始まったのは2010年秋のことですから、実に4年もの時間をかけた取り組みだったのです。

そんな神電の進化を、今回は写真で振り返ってみましょう。神電壱と神電貳は、ぱっと見にはさほど違いはありませんが、神電壱はバッテリーの存在を感じさせるエッジや膨らみがある一方、神電貳は全体的に丸みを帯びたデザインとなり、風力的な試行錯誤が行われたことが見てとれます。神電參ではエクステリアデザインが大幅に変更され、シェイプされたデザインとなりました。本番で使用したカウルの形状は、国内テストで何度となく変更され辿り着いたもので、横風の強いマン島TTマウンテンコースにおいて大きな効果を発揮し、今回の優勝に貢献したと言えるでしょう。この国内テストは、開発ライダーの宮城光氏とともに行われました。

神電シリーズの大きな特徴は、カウルだけでなくフレームとスイングアーム、バッテリーケースに至るまでドライカーボンを使用しているということ。それだけにデザインの変更は簡単なものではありませんでしたが、“勝つために万全を尽くす”その一心で、神電參が誕生したのです。

フォトTOPICS(写真点数/16枚)

01プロトタイプの製作から導き出された容量のバッテリーを搭載する神電(2012年初参戦時のマシン)。軽く100kg以上あるというバッテリーに対し、少しでも軽量化と十分な剛性が期待できるドライカーボンを採用することで、パワーウェイトレシオを高める作戦だ。

02正面やサイドから見ると、やはりバッテリー容量から来る車体幅の広さを感じさせる。水冷式モーターのため、ラジエターなどの装備もあり、そのぶん重量は重い。

03もともと3年計画だったチーム無限の神電プロジェクト。初年度はまず完走を目指していたことから、チームのメンバーは2位という結果にたいへん満足していた。

042013年、参戦2年目の神電貳。初号機と比べると、フロントカウルのノーズがクチバシのように出ているのと、フロントフェンダーがフロントフォークを覆う形状、アンダートレイがスイングアームを覆うような形状になっているのが特徴的。カウル内部の電装システム構成は、初号機と神電貳とでは大幅に異なる。

05神電貳は全体的に丸みを帯びた形状となった。TTの事前テストでマン島のジャービーエアフィールド・サーキットを快走するジョン・マクギネス選手。

06最終的に神電貳のテールカウルは蜂のお尻のような形状となったが、テールカウルは国内テストからもっとも時間をかけてテストした部分で、神電貳を見るとプロトタイプからはかなり変更されている。

072013年、参戦2年目はわずか1.6秒の僅差で2位となり、初年度とはまったく意味の違う2位となった。アメリカのモトシズ、そしてマイケル・ラッター選手の強さを見せつけられた格好だ。マクギネス選手の背後にいるチームメンバーの表情も険しい。

083年目の参戦となる2014年。4月にはジョン・マクギネス選手と新たに加入したブルース・アンスティ選手の来日テストが行われた。大幅にシェイプされたエクステリアが特徴的。外観だけでなく、バッテリーからモーター、電装システムに至るまで、ありとあらゆる部分に改良が加えられている。

09ペイント前の白いカウルだと、いっそうシェイプされたフロントカウルの形状がわかりやすい。とくにハンドル前部分の形状が大きく変更になっている。ちなみに、白く塗装されていると分かりにくいが、神電參のカウルもカーボン製である。

10“タンク”の上部にはわずかに凹みが作ってある。これは、直線でライダーが伏せてより空力抵抗を無くすためのデザインである。“高電圧作業中触るな!”の文字はマクギネス選手には読めず、彼のツイッター上で大喜利化していた。

11ステップ周りはこんな感じ。チェーンガード、ヒールガードもカーボン製を採用している。神電にはミッションが無いため、もちろんシフトペダルも無い。

12TT Zero独自のレギュレーションで、エマージェンシーのストップスイッチ、テールランプの装備が義務付けられている。ストップスイッチはキルスイッチのようなもので、ライダーやマーシャルの感電防止のため。テールランプは点滅間隔や面積も細かく指定されており、これは後続車からの追突防止のためである。

13ゼッケン番号上位のチームはテレビ放送用の車載カメラ搭載が義務付けられている。このため、神電參にはあらかじめGoProHero3+が収まるスペースが設計されている。神電參に合わせてGoProがカーボンカラーになっているのは、メカニックの手作業による。

14バイクがジャンプすることで有名なバラフブリッジを通過するブルース・アンスティ選手。バイクの重量を考慮し、なるべく飛ばない走りをして完走、入賞を目指したようだ。

15もう1人のチーム無限神電プロジェクトメンバー、宮城光氏のライディング。基本的な開発は国内での宮城氏のテスト走行により行われた。残念ながらマン島には来られなかったが、宮城氏のステッカーとともに、チームは3年目のTT Zeroを闘った。/p>

162014年メンバー全員の集合写真。ライダー、プロジェクトリーダー、チーム監督、設計、メカニック、広報、無限ユーロ代表、コーディネーター、総勢13人で2台を走らせた。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

2014 マン島TTレース 記事一覧
新着記事

タグで検索