【2014 マン島TTレース】 電動バイクレース最高峰に挑んだチームたち

掲載日:2014年06月20日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/小林 ゆき  取材協力/マン島TTレース公式サイトチーム無限・神電參公式サイト

2014年4月22日、日本国内テストのために羽田空港に降り立ったジョン・マクギネス選手(写真右)とブルース・アンスティ選手(写真左)。マクギネス選手は8耐参戦も含め、これが4回目の来日。ブルース選手はまったく初めての来日ということで、五月飾りに興味津々だった。

2台体制で3年目を迎えたチーム無限・神電參
立ち向かう古参チーム・新参チーム

チーム無限にとって、とても残念なニュースが飛び込んできたのは4月のこと。エントリーリストに、昨年までTT Zeroクラス4連覇を成し遂げたアメリカの『MOTOCZYSZ(モトシズ)』の名はありませんでした。

実は2013年、モトシズの代表でありエンジニアでもあるマイケル・シズ氏は、癌の治療を理由にマン島を訪れないと発表。かわりに父テリー・シズ氏がレースの行方を見守っていました。2011年のTT Zeroではモトシズが圧勝。そこに無限というライバルが現れ、昨年2013年はわずか1.6秒差で勝敗を分け、ようやくレースとしても面白いと言われるようになった矢先のできごとでした。

とは言え、今年もまたTT Zeroクラスに話題は欠きません。ある意味、対モトシズの代理戦争とも言える、ジョン・マクギネス選手と今年絶好調のブルース・アンスティ選手のチーム内対決。元モトシズのライダーだったマーク・ミラー選手が6速ミッション付きで軽量なR6のシャシーを用いたイタリアの『Vercar Moto』に移籍。1901年設立のベルギーのブランドを復活させた『Sarolea(サロリア)』。TT Zero参戦の経験豊富なキングストン大学やオハイオ州立大学、ブルーネル大学。地元マン島製の『MANTTX Racing』。エントリー11台(+欠番3台)のうち、予選出走は9台、完走6台というサバイバルが、ウィーク中に繰り広げられました。

今回は、チーム無限2人のライダーと、TT Zeroにエントリーした様々なマシンを紹介していきます。

フォトTOPICS(写真点数/25枚)

01袖ヶ浦フォレストレースウェイで事前テストのため来日したマクギネス選手とアンスティ選手。マクギネス選手はアルパインスターズのカンガルーレザー製のスーツにショウエイヘルメット、アンスティ選手はスコットのレザースーツにアライヘルメットを着用。日本式ピースサインを教わり、さっそく取り入れるなど、お茶目な一面を見せるマクギネス選手。

02マクギネス選手たっての希望で、ツインリンクもてぎにあるホンダコレクションホールを訪れた2人。現代のTTレース、あるいはレースシーンの発展に貢献したのは、間違いなく1959年マン島TTレースに初参戦したホンダによるところが大きい。2人は時間いっぱいまで展示を見入っていた。

03魚系と青菜系が苦手だというマクギネス選手のために、木更津の鶏料理専門店へ。畳敷きの小上がりで正座やあぐらに四苦八苦するご一行。右から、マクギネス選手、北アイルライドから来た公道レースカメラマン、スティーブン・デイビソン氏、Mugen Euroのコリン・ウィッターモア氏、アンスティ選手。

042012年、TT Zero走行前に熱視線を送っていたアンスティ選手。昨年も一昨年も足しげく無限のテントを訪れ、はっきり乗りたいとは言わないものの、電動モーターのラジコンヘリコプターが趣味であり、EVには詳しいことをチームにアピールし、今年2台体制となったチーム無限のライダーの座を射止めた。

05今年、絶好調を維持するアンスティ選手は、TTの前哨戦である北アイルランドの公道レース『ノースウエスト200(NW200)』のスーパースポーツクラスで優勝。TTレースでも、スーパーバイクでは惜しくも4位だったが、スーパースポーツで2位、スーパーストックで3位、TT Zero直後に行われたスーパースポーツ2でも2位を獲得するなど、表彰台の常連となっていた。

06絶好調のアンスティ選手は、マクギネス選手のTTラップタイムレコードを破り、平均時速132.298マイル(211.6768km)を記録した。また彼は2010年、アイルランドの公道レース『アルスターグランプリ』で平均時速133.977マイル(214.36km)を記録。これはクローズドサーキット含めサーキットにおける世界最速の平均時速記録である。

07現役選手としては最多のTTレース20勝をあげているマクギネス選手。ジョーイ・ダンロップ選手の26勝まであと6勝まで迫り、まさに生きるレジェンド的な存在である。圧倒的な人気を誇り、どこに行ってもすぐに人だかりができてしまう。

08マクギネス選手は、3月のモトクロス・トレーニングで負った右手首舟状骨骨折がまだ完治しておらず、手首にボルトが3本入ったままTTレース出場を強行。TT Zeroレースまで7位、15位、9位と、彼らしくないリザルトが続いた。

09昨年まで4連覇の王者モトシズ(写真は2013年決勝直前のもの)。残念ながら代表のマイケル・シズ氏の癌闘病により今年はその独創的なマシンをスタートレーンで見ることはなかった。2010年のTT Zeroを征し、2011年にはモトシズのワンツー、2012年は3位となったマーク・ミラー選手は今年、ゼッケン6番の『Vercar Moto』に移籍し、TT Zeroに出場

10『ARC EV Engneering』はイギリスのEV関係会社で、2011年イギリスEV選手権のTTX75クラスのシリーズチャンピオンでもある。TT Zeroに参戦したマシンは今年、大幅にバッテリー容量を増やし、かつカーボンパーツを多用して軽量化をはかってTT Zeroに挑んだ。駆動系に一部ベルトドライブを使っているのが特徴的

11極限まで増やしたバッテリーをオリジナルのパイプフレームで支える構造になっている。残念ながらプラクティス、クォリファイ、決勝ともに完走することはできなかった。

12キングストン大学とEcotricity協同チームの『ION Horse』。ライダーはベテラン、ジョージ・スペンス選手。クォリファイは2回とも5位完走したが、残念ながら決勝では完走することはできなかった。

13ヤマハR6の6速ミッションを流用し、シフトペダルも付いているために、ぱっと見ただけではガソリンエンジンのバイクに見紛うイタリアVercar Moto。実はほとんど見た目は同じガソリンエンジンのR6をスーパースポーツ(600ccクラス)にもエントリーさせていた。

14おそらくTT Zeroの中では最軽量の部類に入るであろうVercar Moto。イタリアのバイクショップとレーシングチームが母体で、TTレースには2004年から、TT Zeroには2011年から参戦している。

15昨年までモトシズでTT Zeroに参戦していたマーク・ミラー選手(アメリカ)は今年、モトシズが参戦しないため、イタリアのVercar Motoとジョイントすることになった。カメラを向けたらまるで俳優さんのようにポーズをとってくれた。

16ベルギーのSaroleaは1901年創設の古いモーターサイクルブランドで、このTT Zero参戦でその名を復活させた。レトロなフォルムに現代的なカーボンエクステリアを多用しているのが特徴的。また、チームクルーもそこはかとなくヨーロッパの気品を感じさせる。

17Saroleaはプラクティス全て完走。決勝レースでは3位に誤認されウィナーズサークルに呼ばれるというトラブルも発生したが、実は3位のオハイオ州立大学とわずか0.37秒差という僅差で4位となった。

18アメリカはオハイオ州立大学のBuckeye Current RW-2.x。昨年はモトシズ、無限に続いて3位入賞。全て学生による手作りのEVバイクであり、手作り感が漂う、いい雰囲気を醸しだしている。

19オハイオ州立大学チームのライダーはイギリスのロブ(ロバート)・バーバー。2009年、第1回目のEVレース、TTXGPで優勝するなど、TT Zeroには毎年参戦しているTT Zeroのベテランライダー。

20RW-2.xのモーターは水冷と思われる。軽量化の穴や大きめのクィックファスナーなど、学生による手作りな雰囲気が見てとれるが、一方でトルク管理の確認用ペイントなど、きっちり整備されていることも伝わってくる。

21今年も参戦したブルーネル大学のマシンは、トライアンフのデイトナ675のフレームを流用することにより、コストダウンと軽量化をはかっている。イタリアのVercar Motoとともに、TT Zero最軽量の部類に入るであろう。

22モーターはインドのAGNI社製空冷モーターを使用。昨年までのモデルより一段と小型化している。カラーリングは昨年とほとんど同じだが、フェアリングの形状は若干異なるものになっていた。

23ライダーは昨年と同じくベテランのポール・オーウェン選手。残念ながら、今年はプラクティス・決勝ともに完走することができなかった。

24地元マン島から第1回目のTTXGPより出場し続けているMANTTXのマシン。シャシーはドゥカティ748Rを流用、モーターはツインモーターで6速ミッションを有する。

25MANTTXのモーターは、デュアルモーターを採用するという独特なレイアウトのため、他のマシンに比べてモーター部分が小さく感じる。

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