【2012 マン島TTレース】 第11回 『チーム無限・神電』 TT Zero インサイドレポート

掲載日:2012年08月24日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/小林 ゆき  取材協力/マン島TTレース公式サイト

チームの集合写真の撮影中、茶目っ気たっぷりにポーズを取るジョン・マクギネス選手。いつ何どきもファンサービスに応じる親しみやすい人柄で知られます。

初参戦で2位獲得! けっしてなだらかではなかった
長い道のりをインサイドレポートします

マン島 TT レースの新たなカテゴリーとして4年前から始まった TT Zero クラス。排ガスゼロが条件の、事実上の電動バイククラスです。この TT Zero に今年から参戦したのが『チーム無限』。日本では現在、GT カーやフォーミュラニッポンなど4輪のレースチームとして知られていますが、かつてはモトクロスや鈴鹿8耐にもチャレンジしていたプロのレース会社です。

その無限で、マン島参戦の話が持ち上がったのは、遡ること2年前。若手のエンジニア育成を第1の目的として、2010年の TT パレードラップに無限が製作した MRV1000 というマシンが走ったことがきっかけで、マン島 TT レース参戦のアイディアが浮上しました。ちょうど、2輪も4輪も電装システムや電動化、ハイブリッド化などエレクトロニクス関連の技術開発は早急の課題だということで、TT Zero チャレンジには若手の電装系エンジニアを中心にチームが組まれました。

チーム無限というと4輪レースのイメージがあり、さぞかしクールにレースに取り組んでいるかと思いきや、案外その内実は泥臭く、ひとつひとつ丁寧に取り組んでいるといった様子が伺えました。チームのリーダーの宮田氏は、

「 “電欠” (バッテリーあがりのことをガス欠ならぬ “デンケツ” と呼ぶ)の夢で何度もうなされました」

と語っていましたが、完走、そして2位表彰台獲得という成績は、いつものクルマのレースとは一味も二味も違った感動を与えたようです。そんなチーム無限のエンジニアやメカニックの皆さんの素顔、そしてライダーのジョン・マクギネス選手の素顔を、当連載最終回となる今回、たっぷりお届けします。

フォトTOPICS(写真点数/41枚)

01この大きなボックスは、神電専用の工具ボックス。電動バイクなので、電気用の工具やテスターなど、レシプロエンジン用とはかなり異なるラインナップだそうです。

02なにはともあれ、テスト走行の前は必ずミーティングが行われます。仕切るのは年長のメカニックではなく、若手側のリーダー宮田氏。

03TT レースの前に、日本のもてぎや筑波、イギリスのキャドウェルパークでテストを重ねました。サインボードも神電専用です。

04ライダーとのミーティングもエンジニアの重要な仕事。聞き手は電装担当の吉見エンジニア。はじめは英語に四苦八苦していましたが、徐々に神電英語のような感じで、意思疎通を図れるようになっていきました。

05無限の TT Zero 参戦はイギリスでも大きな話題になっていて、テレビや新聞・雑誌の取材が殺到しました。全英をカバーする ITV4 の取材に応じるのは宮田エンジニア。このあと「ムービースター」というあだ名が付きました。

06電動バイクでもっとも大事な作業のひとつが、バッテリーマネジメント。電気は見えないうえにチャージも時間がかかりますから、たいへん神経を使う作業だったようです。

07電動バイクの難しさは、見えない電気をどう使いこなすかという点です。作業するときは、このように絶縁グローブを用います。

08準備万端と思っていても、何かしら不足するパーツは出てくるもの。そんなとき、手練のメカニックさんたちが活躍しました。現場でちゃっちゃとパーツを作っていたのは、かつて無限のモトクロスシリーズ参戦を支えた西田氏。

09エンジニアですから、調子の悪い湯沸かしポットもちゃっちゃと直すかと思いきや…。思いの外、手こずっていました。

10マクギネス選手はマン島 TT におけるスーパースター。モト GP におけるバレンティーノ・ロッシ選手のようなものですから、パドックに戻ってくるとご覧のような人だかり。中には我慢しきれずにテントの中に入ってきちゃう人も。

11マクギネス選手のツナギのお尻には、「Mc」+「ギネス」のグラス、そしてギネスの泡には TT マウンテンコースの図が。ギネスビールそのものはスポンサーではないみたいですけどね。

12マクギネス選手はスーパースターなので、このように事前テストにさえ、テレビの密着取材が入ります。

13スーパースターのマクギネス選手とはいえ、モーターサイクルニュース(新聞)に自分の記事が載っているのを見つけると、ものすごく喜んでいました。

14予選走行の直前、マクギネス選手がキャップとフードで変装(?)しつつスクーターでパドックテントの裏にやってきたのですが、このあと、調子こいてアクセルターンを決めようとして転倒してしまいました。TT コース走行中でなくてヨカッタ。

15チーム無限内では数々のチーム専用用語が生まれたのですが、「パンダタイム」もそのひとつ。“客寄せパンダ” の意味をイギリス人スタッフに教えたところ、えらく気に入ってくれまして、さっそくホワイトボードで活用していました。

16作業や車検もない時間はパドックウォークに来たお客さんに車両を存分に見てもらう時間帯、「パンダタイム」となります。こんな風に食いつくように見つめる少年を見ると、日本からバイクを作って持ってきて良かったと喜びもひとしお。

17パンダタイムでは、日本から持ってきた神電特製ステッカーを主に子どもたちに配布しました。先生に引率されてやってきたのは、近隣の小学生たち。こんなところにマン島の深いバイク文化の片鱗を感じます。

18「モーターはAC? DC? バッテリーはリチウム?」など、エンスーな質問をぶつける少年。専門家の吉見エンジニアでさえたじたじでした。

19ライバルチームとのご挨拶もチームメンバーの重要な仕事(?)です。偵察(?)にやってきた 『モトシズ』 の若いエンジニアとがっちり握手する小山エンジニア。

20こちらはライバルではなく、実は以前、無限が何かとお世話になった 『CDレーシング』 の面々です。MRV1000 を走らせたとき、壊れたパーツの修理などでいろいろ助けて下さいました。

21レースをやっている人間にとって、車検がまずは緊張する瞬間です。どんなことでも見逃さないぞという ACU の車検官の目線に、さらに緊張が高まります。

22いよいよプラクティス(練習走行兼予選)のスタート。マクギネス選手のかたわらにいる女性は奥さんのレベッカさん。マン島 TT へはいつも家族で、キャンピングカーでやってきます。

23無事予選走行を終え、ピットロードを走って( “電欠” で自走できないチームもあった)帰って来ました。予選で1周完走することが予選通過の条件でしたので、まずはほっとした瞬間でした。

24予選を完走できたというだけのことなのですが、パドックテントはご覧のような喜びよう。普段の4輪のレースではあり得ない光景だとか。何しろこのわずか1、2周のために、2年の歳月を費やしてきたわけですから…わかります。

25予選の段階で目標の 100 マイルは越えませんでしたが、土曜日の貴重な予選1周がキャンセルされたため、確実に1周して決勝進出できるよう安全策をとりました。そのためこのようなリザルトになりました。

26今年の TT は天気に翻弄された2週間でした。というわけで、最後はてるてるぼうず頼み。決勝ウィークはどんよりとした天気が続きました。

27チーム無限が神頼みというのは意外な気もするのですが。増上寺の勝運祈願の御札が掲げられました。

28江島神社のお守りは武運長久を祈るもの。神様にも仏様にもすがっちゃいます。

29天候不順でなかなかレース進行が進まないためか、賑やかしにミニスカ・ニーソのモンスターギャルがパドックにやってきました。

30彼らはダクラスベイにあるインド料理店のオーナーと息子さん。店内の装飾看板を持ち出して、サインをもらったり、「パーティ、イカガッスカァ?」 と営業に廻ったり。ここのレストラン、結構おいしいんですよ。

31決勝直前のスタートレーン。セグウェイ・モトシズのマイケル・ラッター選手(元ライダーのトニー・ラッターさんの息子)とマクギネス選手、それに前人未到の TT シーズン5勝をあげたイアン・ハッチンソン選手が並んで談笑しておりました。

32無事に決勝レースをスタートしたマクギネス選手と神電。スタートしてしまえば、レースの様子は島内に流れるラジオの実況を聞くしかありません。

33レースの行方は、TT コースに数ヵ所設けられているセクタータイミングラップをインターネット上でチェックするしかありません。よって、チームのメンバーはパドックテントでパソコンに釘付けです。

34テレビ中継用のヘリコプターがバタバタとグランドスタンドに舞い戻ってきたことで神電がゴールに戻ってくるのを知り、なんとかシャッターを切った1枚です。写真右下の端っこにチラッと…。

35パルクフェルメでは歓喜の抱擁が続きました。無事完走に加えて、目標としてきた平均時速 100 マイル越えも達成することができました。

36ポーディアムではこの通り、マクギネス選手から優勝したラッター選手にシャンパンの応酬。仲がいいんですよね、この2人。

37おまけに、ラッター選手が獲得した 100 マイル越えの賞金1万ポンド(約 125 万円)の目録をマクギネス選手が「オレにもよこせ! いや、半分よこせ!!」なんていいながらじゃれ合ってたり。

38車両保管からマシンが帰って来ると、エンジニアさんたちは歓喜もそこそこに、まずはデータ収集と分析作業へ。決勝レースの貴重なデータが、来年の参戦への布石となるわけです。

39レシプロエンジンの平均時速 130 マイルに比べれば 100 マイルは遅いと感じるかもしれませんが、カウルに付着した虫の死骸からはそう簡単な数字ではないことが分かるはずです。マシンにかけられたレイは、本物の月桂樹の葉で出来ています。

40表彰式にて。プレゼンターはかつて TT などで活躍したフィル・マッカレン氏。長男・長女とともに壇上に上がったマクギネス選手は、 TT のシルバーレプリカと 100 マイルクラブトロフィーをこの TT Zero で獲得しました。

41さて、海を渡って日本に戻ってきた神電。2012年8月4日、5日にツインリンクもてぎで開催された “2&4” でお披露目走行が行われました。ライダーは開発ライダーの宮城光さんです。元レーシングドライバーの鈴木亜久里氏も興味津々。

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