AUTO STAFF SUEHIRO / ASS-TY001(RZV500R) カスタム写真
AUTO STAFF SUEHIRO / ASS-TY001(RZV500R) カスタム写真

ヤマハ ASS-TY001(RZV500R)

掲載日:2010年12月27日 プロが造るカスタム    

強度解析もすべて行った組立車の究極

バイクの要であるフレームを作る。コンストラクターあこがれの、そして究極のカスタムと言える。この前段階として別機種のフレームとエンジンを組み合わせることがある。スズキGSX1100Sカタナに油冷エンジンを搭載する、カワサキGPZ900Rニンジャに、ZRX1200Rに至るまでの以後の系列機のエンジンを積む。このような年代の近い同メーカーのモデルの場合はエンジンマウントがほぼ共通、あるいはエンジン自体のベースが近しいなど、比較的この手法を行いやすくしていた。だがまったく異なる車種でこれを行うこと、この手法を発展させたと取れる、オリジナルフレームを製作した上で完成車を作るというのは、大変に難しいことだ。

ただ積み替えを行いました、積みましたとするのは、完成度の点からももちろん無理がある。そのエンジンが載っても十分な強度があるのか、パワーに耐えるのか、重心等のバランスは大丈夫なのか……という問題もクリアしなければいけない。1990年代前半までは、こうした構造変更に対する要件が非常に厳しく、こと重要部位においては、ボルトひとつ変えるにも強度検討が必要だった。もちろんそうした検討を行って、それをクリアするのは重要だが、十分クリアできるのに壁のほうが高かったという時代でもあった。

そんな中ですべてを合法的に行い、“組立車”(メーカー以外の者が自動車部品を組み合わせて車両を製作する車両)として1995年に完成したのが、このRZV500Rだ。メイン部をスチールパイプ、スイングアームピボットをアルミとしたフレームをオリジナルとしてイチから製作。カスタム車ではなく、オートスタッフ末広というメーカーが手がけたコンプリートマシンと考えていいだろう。とは言え、足まわりパーツの多くはホンダCBR900RRやスズキGSX-R1100からの流用で、一部にはスクーター用パーツも使用されている。それでも雑多なものが集まった違和感がないのは、長年に渡って純正流用カスタムを手がけてきた同店ならでは。そういった要素も含めて、この車両は同店のノウハウが結集された成果とも言える(フレームに異材質を組み合わせたのも、それまでにないデータ取りが行えるから、という理由も含んでいた)。

そしてこの車両はフレーム番号ASS-TY001とした状態で晴れて正規車検を取得。メーカーで言う試作車と同様の少量生産車という扱いだが、当時もちろんそうした前例はなく、オートスタッフ末広ではフレームや足まわりを中心に応力や外力などに対する強度と安定性を検討/計算(提出書類で約100枚にも及ぶ)、国土交通省(当時運輸省)に受理された。車両メーカー以外では日本ではじめての例となったわけだ。この完成を受けて同店では後にTZR250フレーム+RZV500Rエンジンの“TZR500V4”やVFR400Rフレーム+NS400Rエンジンの“NC431V”等を製作(両車とも現在は販売を終了)、ユーザーに受け入れられる。

惜しむらくは排出ガス規制などが進んだ今ではこうしたフレーム製作や、組立車製作にも車体製造年の規制がかかることによって、搭載エンジンの自由度が失われてしまったこと(もし2010年の今オリジナルフレーム車を登録しようとしたら、2010年の排出ガス規制もクリアする必要がある)だろう。しかしオートスタッフ末広のトライは、2009年発表の前2輪・後1輪オリジナルリバース・トライク“ウロボロス”やオリジナルサイドカー“エマージ”に受け継がれて、花開いている。

オートスタッフ末広 RZV500Rの詳細写真は次のページにて

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索