オートスタッフ末広 / “TZR500V4”(RZV500R) カスタム写真
オートスタッフ末広 / “TZR500V4”(RZV500R) カスタム写真

ヤマハ “TZR500V4”(RZV500R)

掲載日:2011年03月16日 プロが造るカスタム    

オリジナルフレームのノウハウが
生きるアルミフレーム+V4エンジン

世界で戦うレーサー。2002年以降は4ストロークのMotoGPにシフトしたが、それまでの約25年、世界GPを戦う最高峰マシンと言えば、2ストローク500ccモデルだった。2ストロークスポーツモデルに乗るライダーはほとんど誰でも、自分のバイクの延長上にファクトリーレーサーがあるという意識を、少なからず持ってもいた。

 

そんな意識からか2ストモデルのカスタムは、そのファクトリー、あるいは市販レーサー的な思想をもって行われることが多かった。エキゾーストチャンバー、エンジン本体、キャブレター、もちろん車体まわりや外装も。メーカーでもその意識を叶えるべく、1980年代中盤には自社2ストローク500レーサーのレプリカと言える市販車を用意した。ヤマハRZV500R、スズキRG500Γ/400Γに、ホンダNS400R。ここでは割愛するが、各車のエンジン形式だけを見ても、その意気込みが高かったことが分かるほどのモデル群だった。

 

ただ、これらには見本となったレーサーのようには毎年変更は加えられなかった。そこで熱意のあるショップやユーザーが後になって、市販後のレーサーに準じたカスタム化を考えることとなった。オートショップ末広もそのひとつで、同店はかつてこの欄で紹介したように、各種工作機械はもとより応力測定装置までを備え、合法的に公道走行が可能な自社製フレームのマシン(ASS-TY001)を製作したことでも知られる。これを活用して作られたのが、今回紹介する“TZR500V4”だ。

 

全体を簡単に説明してしまえばヤマハの2スト250レプリカ、TZR250のフレームにRZV500Rの50度V4エンジンを積んだもの。もう少し掘り下げてみよう。水冷2ストロークV4エンジンを積んだのは、市販レーサーTZ譲りの後方排気パラレルツインを搭載していた、'89-'90TZR250のアルミデルタボックスフレーム。V4エンジンの幅自体は並列2気筒と大差はないため、フレームの主要メンバーに大幅な加工は必要とせず、V4のためにエンジン横にマウントされるキャブレターのための逃げカットを行う。またダウンチューブ追加やエンジンマウントの製作といった工程を経て、エンジンの換装は実現。

 

2本から4本に増えたエキゾーストチャンバーはもちろん末広によるワンオフがセットされるが、見て分かるように前側シリンダーのそれを右にまとめて出すため、スイングアームを'91TZR250R(V型2気筒エンジン)の湾曲型へと換え、十分なチャンバー容積とリヤサスペンションの作動量をする等の工夫が凝らされる。

 

前述のようにフレームの主要メンバーに大幅な加工を施さなかったことから、公認車検の取得は机上計算による強度算出申請で可能だったことも含めて、短い文章でこうして紹介すると、あたかもTZR250フレーム車体+RZV500Rエンジンの組み合わせが簡単なように思われてしまうが、これを容易に見せてしまうのは、末広の高い技術力と豊富なノウハウがあればこそ。強度算出にしても、かつての自社フレーム作製や多くのワンオフマシン製作という経験があってこそのもの。だからくどいようだが、誰でもがおいそれとハイ計算できました、となる世界ではないことも分かるはずだ。

 

オートスタッフ末広は今もさまざまなマシン作りを継続している。排出ガス規制等の影響で2ストロークで新作フレーム、というのは難しくはなったが、オーナーのための「世界で1台」というモデルを作るノウハウはある。もしあなたがそうした1台を作りたくなったら、1度相談してみることをお勧めしたい。このTZR500V4は、その見本となる1台だ。

オートスタッフ末広 RZV500Rの詳細写真は次のページにて

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