AUTO MAGIC / CBX(1000) カスタム写真
AUTO MAGIC / CBX(1000) カスタム写真

ホンダ CBX(1000)

掲載日:2010年12月13日 プロが造るカスタム    

時代を先駆けるショーモデルにFI+ツインターボをセット

4輪車の世界では一般化しているFI=フューエルインジェクション燃料供給という技術も、2輪界では遅れること約20年、ようやく2000年代に入って徐々に純正採用を増やし、2010年の今ではほとんどの新型車で使われるようになった。これにしても、1990年代当時は、2輪では1980年代カワサキのdfiやホンダRVF/RC45など以外では、まだまだ一般には遠い話だった。

 

同様に、1980年代初頭にホンダ(CX650/500ターボ)/ヤマハ(XJ650ターボ)/スズキ(XN85)/カワサキ(750ターボ)と国産4メーカーがこぞって手を付けたターボ=過給も、同じ排気量でパワーの上乗せが可能という魅力を実現しながらも、補機類が複雑化するという理由などにより、自然吸気に回帰していく。もう少し説明しておけば、ターボエンジンはスロットル開度やエンジン回転数、そして負荷のかかり方などにより、必要とされる空気(酸素)やガソリンの量が大きく変化し続ける。このため、自然に乗れるような違和感のない過渡特性もしっかり制御するにはコンピュータを使うFI=電子式フューエルインジェクションシステムが有用なのだが、とくに2輪では4輪のようなスペースがないことを中心に補機類が複雑になってしまう。センサ類にしても配線にしても燃料ポンプやECU(コンピュータ)にしても、少ないスペースに収めること、そして耐振動や耐水といった耐候性を高いレベルで要求されることもあり、積むこと自体が今より大変難しくもあった。

 

キャブレターでの対応も可能ではある。実際、ドラッグレースではターボエンジンにキャブを組み合わせる例は見られるし、工夫の末に負圧キャブ+ターボを公道で実用化した例もある。先述の市販車でも、XJ650ターボは負圧キャブ+ターボ(ほかはFI)だった。だが'90年代当時、2輪にFIを使用する例は量産車、アフターマーケットパーツともに前例が極めて少なく、流用するにしてもコンピュータ技術が絡んでくるため、ひと筋縄にはいかなかった。2輪におけるターボチューンが少ない理由のひとつには、こういう難しい事情があったのだ。

 

そしてこのオートマジックのCBX。これは当時のそんな高いハードルに挑んだマシンだ。元からの並列6気筒という希少なレイアウトのエンジンに、ターボを2基装着したツインターボに電子式フューエルインジェクションを組み合わせて採用しているのが最大の特徴だ。FIの制御ユニットには4輪用の市販アフターマーケットパーツを流用。この制御ユニットは外部スイッチによって比較的簡単にセッティングができるのが利点だが、もともと2輪での使用を想定していない(トルク特性や仕様回転域の違い等がある)ため、セッティングは大変だったという。それ以外にも問題点の対策があったとのことだが、しかし、そうした苦難や試行錯誤も含めてカスタムは楽しいのである。それが、このような前例のない領域へのチャレンジであれば、なおさらのことであり、ショップにとっては培ったノウハウが今後の大きな財産になるのだ。

 

“ないものを作り上げていく”。バイクカスタムを考える、手がける上で一番の根底にあるこの考えを、当時の東京モーターサイクルショーに向けて投じたオートマジック。車両メーカーが世界各地のショーで披露するプロトタイプモデルやコンセプトモデルも、この範疇に入るだろうし、同様にプロショップや熱意のある個人ビルダーが手がけるカスタムも、そんな考えから作られていく。走るかどうかはさておいても、技術や造形といった面で、後々各方面で参考になることも多いし、多くのライダーの記憶に長くとどめられることも少なくはない。このバイクのことを覚えているライダーが多いのは、そんな熱いスピリットを、車両から思い切り感じ取ることが出来たからだろう。

オートマジック CBXの詳細写真は次のページにて

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