カワサキ ER-6n
カワサキ ER-6n

カワサキ ER-6n – 日本に似合うコンパクト・スポーツ

掲載日:2009年12月17日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

「Fun to Ride」がコンセプト
日本に似合うコンパクト・スポーツ

海外市場向けに国内に無いラインナップがあることは広く知られているが、その中には「何故日本向けとして発売されないのだろう」と思えるモデルも多い。その中でもカワサキの650cc並列2気筒エンジンを搭載したシリーズは、パワーや車体サイズが何とも国内向けにマッチするもので、常々日本市場にも正式導入されないものかと思っている。今回試乗するカワサキの逆輸入モデル「ER-6n」は、そのシリーズのベースとも言えるもので、つい最近モデルチェンジを行ったばかり。コンセプトである「Fun to Ride」はそのままに、スタイルがヨーロピアンテイストにマッシブな雰囲気を加えた姿へと生まれ変わったほか、フレームも前モデルのデザインコンセプトを受け継いだ形で進化を遂げている。特にルックスの変化は劇的なもので、柔らかな美しさを基調とした先代と異なり、明らかにストリートファイター然とした鋭さへと変化した。また、細部の変更も多岐に渡っている。スタンダードスポーツとして人気を博したER-6nのニューバージョンがどのような走りを楽しませてくれるか、早速インプレッションしてみよう。

カワサキ ER-6nの試乗インプレッション

カワサキ ER-6nの画像

毎日がもっと楽しくなる
等身大のウェルバランス

ER-6nを一言で表現するとしたら、自分の場合は「気負わないバイク」と言うだろう。内外で公開されているスペックを見るだけだと、正直な話圧倒的な高性能という類の車両ではないし、所有するだけで満足できる素養が強いわけでもない。しかし、毎日を共に過ごすバイクと考えるならば、レザースーツに袖を通さないと楽しめないスーパースポーツや、ひたすら距離を走ることによって性能の恩恵を感じるロングツアラーでなく、乗りたい時にすぐに乗れて、走るシチュエーションを選ばないバイクが良い。ER-6nはその役目に相応しい「高性能」を持っている。

カワサキ ER-6nの画像

パルシブな鼓動と低めの快音を奏でる並列2気筒エンジンのパワーは標準的だが、分厚い中速域のトルクは法定速度の範囲でもエモーショナルで扱い易く、ライダーが多少ラフに扱っても素直についてくるため、混雑する街中でストレスを感じ難い。かと言って過度にダルなこともなく、素早いスロットルワークを行えばスポーツマインドを刺激するレスポンスを返してくれる。コーナーリングについても同様で、ライダーがやる気を見せればクイックなハンドリングを楽しめるが、力を抜いて流したい場合は気の無い旋回にも付き合ってくれるのだから嬉しくなってしまう。ブレーキやサスペンションもそんなエンジン特性に合わせて整えられており、豪奢では無いが必要な性能が確保され、不満を感じることも無い。サスペンションは若干硬めに感じたが、インプレで使用した車両はまだ慣らし中とのことなので、おそらく乗り込んでいくことで良い方向に変わっていくだろう。今回の試乗では晴天だけでなく降りしきる雨の中を延々と走ったのだが、この許容範囲の広いエンジン特性のお陰で恐怖感が少なかったことも付け加えておきたい。それほどER-6nは柔軟で扱い易いのだ。

ER-6nの走りには、誰もがすぐに分かる強烈な速さや迫力、ラグジュアリーな快適性といったものは無いかもしれない。けれども、幅広いレベルのライダーを受け入れる「気負わなくても楽しめるバイク」という特性は、そういった象徴的なパフォーマンスに決して勝るとも劣らないはずだ。バイクを趣味の乗り物や日常の足といった言葉で断じるのではなく、肩の力を抜いて気軽に付き合いたいと思うライダーにとって、ER-6nは最適な1台。数字には表れない確かな高性能を持ったバイクと評価するのは、決して筆者のひいき目だけでは無いはずだ。

カワサキ ER-6nの特徴は次ページにて

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