【ヤマハ YZF-R3試乗記事】第二世代に移行した、ヤマハ製パラツインスポーツ

掲載日:2019年06月27日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦  写真/井上 演

【ヤマハ YZF-R3試乗記事】第二世代に移行した、ヤマハ製パラツインスポーツの画像

YAMAHA YZF-R3

ライバル勢に立ち向かうため
車体を中心とした大幅刷新を敢行

近年になって覇権争いが過熱している、250~400ccスポーツの世界。ヤマハはこのジャンルに2014/2015年からYZF-R25/3を投入し、世界各国で好セールスを記録して来たものの、2017年にクラストップの性能を標榜するホンダCBR250RRが登場し、2018年にカワサキがニンジャ250/300のフルモデルチェンジを行ってからは、同社の優位は徐々に揺らぎつつあった。そういった状況を踏まえて、2019年型YZF-R25/3は車体を中心とした大幅な仕様変更を実施。アグレッシブなルックスからは、同社のこの分野にかける意気込みが伝わって来るけれど、新世代のヤマハ製250/320ccパラレルツインスポーツは従来型と同じく、速さだけに特化したモデルではないのだ。

ヤマハ YZF-R3 特徴

レースのノウハウを随所に投入しつつも
初代で掲げたコンセプトは不変

【ヤマハ YZF-R3試乗記事】第二世代に移行した、ヤマハ製パラツインスポーツの画像の試乗インプレッション

従来型とは異なる2019年型YZF-R25/3の特徴として、誰もがひと目で判別できるのは、YZR-M1やYZF-R1に通じるイメージを取り入れたフェアリングと、φ41mm正立式→φ37mm倒立式に変更されたフロントフォークだろう。とはいえ、フル液晶メーターや大胆な肉抜きが施されたアルミ製アッパーブラケット、グリップ位置が22mm低くなったハンドル、全高を短縮すると同時に幅広化されたガソリンタンク+カバーなど、実際の改良点は多岐に及んでいる。なおYZF-R3に限っては、前後タイヤがバイアスからラジアルに変更されたことも、運動性と快適性の向上という面では重要なトピックだ。

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車体まわりに数多くの改良が行われている一方で、パワーユニットは従来型を継承、というのがヤマハの公式発表で、R25:35ps/12000rpm、R3:42ps/10750rpmという最高出力にも変更はない。もっとも、すでに3月から国内発売が始まっている2019年型R25は、多くのライダーから“低中速トルクが太くなった”という声が挙がっているのだが、ライバル勢を打ち負かす手段として、安易にパワーアップを行わないところには、ヤマハの自信と良心が表れているのかもしれない。なおフレームに関しても、2019年型は従来型と同じスチール製ダイヤモンドタイプを採用している。

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ハンドルの取り付け位置がトップブリッジ上から下に移動したことで、2019年型YZF-R25/3のライディングポジションは、従来型より上半身の前傾が強くなっている。ただし、シート高は依然としてライバル勢より低い780mmだから、街乗りやツーリングに使っても、ツラさや難しさを感じる場面にはほとんど遭遇しない。なお2019年型YZF-R25/3のコンセプトは、「Ride the“R” Anytime」だが、初代の発表時に掲げた「毎日乗れるスーパーバイク」という基本理念が、揺らいだわけではないのである。

ヤマハ YZF-R3 試乗インプレッション

セローやスーパーカブを思わせる?
オールラウンダーとしての資質

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コレ1台ですべてOKなんじゃないか? 2019年型R3を体験した僕の頭には、思わずそんな言葉が浮かんだ。その印象は、何となくセローやスーパーカブに通じるモノがあって、R3のオールラウンダーとしての資質に、僕はちょっと感動してしまったのである。

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どこからどう語るべきかで迷うものの、新世代のR3で最初に述べておくべき要素は、倒立フォークとラジアルタイヤの採用、さらにはハンドルの変更などによって、前輪の接地感が増し、従来型を凌駕するコーナリングが楽しめるようになったことだろう。中でもコーナー進入時の安定感は抜群で、従来型と比較すればかなりの融通が利くし、体重移動を行った際のタンク側面のフィット感もすこぶる良好。例えばサーキットで誰かと勝負するとなったら、この特性は有効な武器になるはずだ。

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とはいえ、それ以上に僕が感心したのは、ツーリングペースで走ったときの快適性と操る楽しさだった。まずは快適性について述べると、新設計のフェアリングが低中速域でも走行風を上手い具合に整流してくれるから、2019年型は長距離での疲労が少なくて済む。僕はルックスを見た段階では、2019年型のフェアリングはレーサー指向……と感じていたのだが、それは完全な誤解だったようだ。

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一方の操る楽しさについては、ムキになって高回転域を維持しなくても、十分にスポーツライディングが楽しめることが、僕にとっては嬉しい誤算だった。残念ながら従来型との差異は把握できなかったものの、R3のエンジンはミッドレンジで並列2気筒らしいパルス感を味わわせてくれるから、飛ばせない状況でもストレスが溜まりづらいのである。また、新たに導入されたラジアルタイヤのダンロップGPR-300は、快適性と操る楽しさの両方に貢献しているようで、R25とは一線を画する上質さを味わうことができた。そしてそう言った特性を理解した僕の中には、もっと長いスパンでこのバイクを堪能したい、という意識が芽生えて来たのだった。

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セローがオフロードを楽しめるオールラウンダー、スーパーカブが常用域に特化したオールラウンダーとするなら、R3はサーキットや峠道でスポーツライディングが楽しめるオールラウンダー、というのが僕の印象で、このバイクのオーナーになったら、相当に守備範囲が広い遊び方ができると思う。もちろんそういった資質は、兄弟車のR25にも備わっているのだけれど、排気量に余裕があるぶん、フトコロはR3のほうが広いのだ。

ヤマハ YZF-R3 詳細写真

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フロントにM字型ダクト、サイドにクロスレイヤードウイングを設置したフェアリングは、YZR-M1やYZF-R1の技術を転用して開発。空力性能の改善によって、最高速は約8km/h向上している。ヘッドライトはハロゲン→LEDに変更された。

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アルミダイキャスト製トップブリッジに施された大胆な肉抜きは、近年のMotoGPレーサーやスーパースポーツで定番になっている手法。セパハンの装着位置がトップブリッジ上→下に移動した結果、グリップは従来型より22mm低くなった。

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フル液晶メーターはMT-10がベース。タコメーターは視認性に優れるバーグラフ式で、ギアポジションインジケーターやシフトタイミングランプも装備する。速度の下には、水温とガソリン残量、その下には時計とオド/トリップメーターを表示。

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ストレートでの伏せやすさとコーナリング中のホールド感を考慮して、ガソリンタンク+樹脂製カバーは造形を全面的に刷新。従来型と比較すると、タンクキャップ位置が20mm低くなり、ライダーのヒザと接する部分は31.4mm幅広になった。

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180度クランクの水冷DOHC4バルブ並列2気筒エンジンは、従来型のスペックを継承。吸気系は、現代のこのクラスでは少数派になりつつあるホリゾンタルタイプ。エンジン前部には排気ガス規制に対応するためのキャニスターが設置されている。

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セパレート式シート+テールカウルの構成は従来型と同様で、タンデムシートの下にはETCユニットの収納を考慮したスペースが設けられている。R25と共通のシート高は、現代の日本製250~400ccスポーツモデルで最も低い780mm。

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サーキット走行を考慮して、ナンバープレート/リアウインカーステーは脱着が容易な構成になっている。テールランプは従来型と同様のLED。ウインカーはオーソドックなフィラメント式バルブだが、2019年型ではハザード機能が追加された。

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従来型と同様のステップは、スポーツライディング時のホールド感を意識した構成で、ブーツのソールとバーの食いつきはなかなか良好だった。フラットなヒールプレートはR3ならではの特徴で、R25は軽量化を意識した肉抜きが施されている。

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φ41mm正立→φ37mm倒立式に刷新されたフロントフォークは、緻密な減衰力が実現できるカートリッジダンパーを導入。F:φ298mmディスク+片押し式2ピストン/R:φ220mmディスク+片押し式1ピストンのブレーキは、従来型を継承。

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スチール製ダイヤモンドフレーム、左右非対称のテーパースイングアーム、F:2.75×17/R:4.00×17のY字5本スポークホイール、リンクレスタイプのリアショック、中空仕様の前後アクスルシャフトなどは、従来型の構造をそのまま踏襲。

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従来型ではバイアスのミシュラン・パイロットストリートを履いていたR3だが、運動性と快適性を高めるべく、2019年型はラジアルのダンロップ製GPR-300を導入。なおR25は、2019年型も従来型と同じバイアスのIRC RX-01を採用している。

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