【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

掲載日:2019年06月08日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/栗栖 国安 写真/井上 演

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HONDA GOLD WING

風を感じさせるバイクらしさを追求し
原点に立ち返って再構築

ホンダのフラッグシップである大型ツアラー「ゴールドウイング」が昨年生まれ変わった。優雅で快適なロングクルージングを実現してくれるゴールドウイングは、約70の国と地域で販売累計台数およそ80万台を記録している人気の大型ツアラーだ。1975年の初代GL1000が登場以後、40数年に及ぶ歴史の中で完成度を高めてきた。だが、装備が充実するほどに大きくて重たいバイクになっていた。走り出せばたしかに軽快だが、取り回しは重く、見た目にも威圧感が強くなってしまっていた。そこでバイクの魅力の原点に立ち返って、ゴールドウイングを再構築することから開発をスタート。上質さを消すことなく軽量・コンパクト化を実現してモデルチェンジした。

ホンダ ゴールドウイングの特徴

最新技術で優雅さを高めると同時に
軽量化によりスポーツ性も融合

【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

バイクは多くのパーツの集合体である。エンジン、フレーム、それにサスペンションと構成するパーツを新たに開発するだけでも膨大な労力を要する。加えてゴールドウイングの場合にはロングツーリングの快適性を高めるための装備の充実も必要となる。しかもそれらをコスト度外視ではできない。製品価格を抑えつつ開発コンセプトを実現させなければ意味はない。多くの難題を一つひとつクリアしていった開発陣の努力によってゴールドウイングは、狙いどおりの軽量・コンパクト化を達成したのである。

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ゴールドウイングらしい優雅さを見せつつシャープなスタイリングとしたボディは、従来比38kg軽量化。特徴的な水冷OHC水平対向6気筒1833ccエンジンも、ひと目でわかるほどコンパクトに仕上げられている。ミッションはマニュアル式6速と第3世代7速DCTの2タイプ。さらにスロットルバイワイヤの採用で4種に切り替え可能なライディングモードを装備する。他にもさまざまな電子制御システムを導入し、新時代にふさわしいツアラーへと変貌している。

ホンダ ゴールドウイングの試乗インプレッション

ナチュラルなハンドリングで
軽快な走行性が一段とアップ

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試乗したのはスタンダードタイプのDCTモデル。最上級のゴールドウイングツアラーと見比べると、トップケースの装備がなくショートウインドスクリーンが採用されているので、スポーティなバガースタイルとなっているのが印象的だ。シートに跨ってみると、ソファーに腰を沈めるような居住性がある一方で、積極的なライディングに適した適度な硬さを併せ持つ。もちろん、座面が広いシートの座り心地は快適そのもの。シート高も745mmと低いので足つきへの不安はない。さらに重心も低いので、引き起こし時に感じる重さもわずかだ。リラックスできるポジションと合わせて、長距離移動がラクにこなせる。

【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

エンジンを始動し走り出してしまえば、その動きは驚くほど軽快だ。従来型もボディの大きさの割に軽やかなハンドリングだったのだが、さらに軽快に身を翻す。それでいて低速での安定性は抜群なのでまったくといっていいほど不安がない。新採用されたウォーキングスピードモードやリバース機能によって取り回し性も格段に向上している。これならだれもが、重量車を軽々と扱う喜びを実感できるはずだ。

通常走行ではなんといってもフラット6ならではの滑らかなパワーフィーリングが特徴的だ。DCTの変速も実にスムーズで的確なので、上質でシルキーな乗り心地を与えてくれる。ツアラーとしての快適性も確実にアップしているのだ。

【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

最新のゴールドウイングではホンダ独自の二輪車用ダブルウィッシュボーンフロントサスペンションを採用しているのだが、操舵性に違和感はなく、ナチュラルな操縦性と快適な乗り心地を見事に両立させている。荒れた路面を通過しても、前後サスペンションが衝撃をすべて吸収してくれ、車体にゴツゴツした乗車感は及ぼさない。エンジン特性と合わせて非常に滑らかな走行性を見せてくれる。

【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

こうした快適性を実現する一方で、積極的にコーナーワークを楽しむスポーツ性も高まった。もちろんそれは、スーパースポーツのスポーツ性とは違うのだが、軽量・コンパクト化の実現とディメンション設定がスポーツ性の向上に大きく貢献している。高速道路はいいけど山道は苦手……なんていうことは、最新のゴールドウイングには当てはまらないのだ。

【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

各スイッチの配置もより使いやすくなっているし、スマホと連携できるディスプレイを採用したインパネも新時代にふさわしい。そして標準装備された大型サイドバッグの使い勝手も良くなっている。このように、かゆいところに手が届くようなきめ細かなユーザーフレンドリーも、ゴールドウイングをさらに魅力あるツアラーへと高めている。

【ホンダ ゴールドウイング試乗記】優雅さを昇華しつつ、大きく重たいバイクから走りを楽しめるバイクへと刷新

ホンダ ゴールドウイングの詳細写真

一般的なテレスコピックフロントフォークと異なり、ショックを吸収するクッション機能と操舵機能を分離することで、軽快なハンドリングと上質で快適な乗り心地を実現するホンダ独自の二輪車用ダブルウイッシュボーンフロントサスペンションを採用。

ライダー、パッセンジャー双方の頭部の快適性向上を図って採用された小型電動ウインドスクリーン。高さ調整は左手のスイッチで無段階にアジャストできるので、あらゆる走行状況で高い快適性を実現してくれる。

独自のパワーユニットである水冷4ストローク水平対向6気筒エンジンは軽量・コンパクト化が図られた。さらなる低燃費化も実現している。ミッションは6速マニュアルとウォーキングスピードモードを採用した7速+リバースの第三世代DCTの2タイプ。

ボディにインテグレートされた大型サドルバッグが、大容量の荷物も収納。ETC2.0車載器も標準装備する。さらにフロントカウルのインナーパネルには、小物入れに便利なコンソールボックスも装備している。

DCTミッション車には、ボディの左サイドにパーキングブレーキレバーを装備。坂道での駐輪にも安心だ。

リアステップには格納式のボードステップが装備。足置きスペースが広いので、パッセンジャーにも快適で疲れにくいタンデム走行を提供する。また格納式なのでデザイン性も損なわない。

段つきの大型シートは、ライダーに操る楽しさを、パッセンジャーには快適なツーリングを体験させるため双方の空間を分けた構成。長時間走行にも疲労が少ない快適な座り心地と、優れた足つき性を実現している。

従来はコックピット左右に分かれていた操作系スイッチを、手の届きやすいセンターコンソール部にコンパクトに集約。高級感を高めただけでなく、使い勝手も大きく向上させている。また使用頻度の高い機能はハンドル周りに配置している。

メーターパネルには視認性が良いアナログ式スピードメーターとタコメーターを採用。中央部のフルカラー7インチTFT液晶画面には、オーディオなどのインフォテインメント情報をはじめ、トルクコントロールのON/OFFやプリロードアジャストなどのセッティング画面の役割も持たせてある。

専用キーを携帯した状態でイグニッションON/OFF操作、ハンドルロックを可能としたHonda SMART Keyシステム。キーを持って車両に近づくと、メインスイッチノブ部が明るく光る“イルミエントリー”機能も搭載。さらにサイドポケットやサドルバッグのボタンを押すだけで、キー操作なく開閉が可能だ。

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