ホンダ VFR800F(2017)
ホンダ VFR800F(2017)

ホンダ VFR800F(2017) – 栄光の歴史に彩られた伝統のV4エンジン搭載モデル

掲載日:2017年03月28日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川健太郎  写真・動画/山家健一  衣装協力/HYOD

栄光の歴史に彩られた
伝統のV4エンジン搭載モデル

1982年に世界初の水冷V型4気筒搭載のスポーツモデルとして登場したVF750シリーズの流れを汲むホンダの中核モデルのひとつとして、実に35年もの間、進化・熟成を重ねてきたのが現在のVFR800Fである。系譜としては86年に発売され、以後は白バイ御用達モデルとして長年活躍したVFR750F(RC24)や、87年にプロダクションレース用ベース車として発売されたVFR750R(RC30)。その後継として開発され、鈴鹿8耐やスーパーバイク世界選手権で大活躍したホモロゲーションモデルであるRVF(RC45)などが特に有名である。98年に排気量が800ccに拡大されて以降は、スポーツツアラーとしての道を歩んでいる。その最新モデルの試乗レポートをお届けする。

動画『やさしいバイク解説:ホンダ VFR800F(2017)』はコチラ

ホンダ VFR800F(2017) 特徴

マフラーの改良で出力は2psアップ
電源も付いて利便性もさらに向上した

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

「大人のスポーツバイク ~Elegant Sport~」を開発コンセプトとして掲げるVFR800Fの2017最新モデルでは、従来のスタイルを踏襲しつつも現代のスポーツツアラーとして求められる機能性をさらに充実させた。

エンジンはVFRシリーズ伝統の水冷90度V型4気筒DOHC4バルブ781ccを搭載。低中回転域での燃費と高回転域でのパワーを両立した独自の可変バルブ機構であるHYPER-VTECが採用されているのが特徴だ。ちなみにHYPER-VTECが導入された2002年型の先代VFRから「ヒューン」という独特のメカノイズが特徴的だったカムギアトレーンを廃し、サイレントカムチェーン方式に変更されている。スーパーバイク由来のアルミツインスパーフレームや片持ち式スイングアーム(プロアーム)などの基本骨格は、現行モデルに合わせて剛性バランスを最適化されたものだ。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

2017年モデルの変更点としては、内部構造を3室から2室に変更した異形テーパー形状マフラーを採用し、従来から2psアップの107psへと出力向上を図るとともにV4エンジンらしい重厚で歯切れの感のあるサウンドを実現。従来よりもコンパクト化したマフラーを車体センター寄りに配置し、マス集中化によるハンドリングの向上を果たしている。

また、新たに左サイドカウル部に各種端末の電源に使えるアクセサリーソケットを標準装備するとともに、前後ホイールに整備性に優れたL字エアバルブを採用するなど利便性を向上。ツーリングに便利なETC車載器と寒冷時に役立つグリップヒーターは継続となっている。カラーリングも新色のデジタルシルバーメタリックを加え、メインフレームや足まわりの一部を黒で統一するなど、さらに精悍さと高級感も高められている。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

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ホンダ VFR800F(2017) 試乗インプレッション

V4ならではの扱いやすさとパワー
熟成の極みを感じさせる仕上がりだ

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

端正なデザインとスマートな上品さをたたえたシルエット。VFR800Fはまさに違いが分かる大人のためのスポーツツアラーである。

VFRと聞くと、40代50代のライダーならかつてのスーパースポーツVFR750F(セイバー)やホモロゲーションモデルのRC30ことVFR750Rを思い浮かべる人も多いはずだ。それほどVFRというネーミングはかつてレース界を席巻したホンダ製レーシングマシンのイメージが強い。その後、ホンダの勝つためのマシンはVTR1000やCBR1000RRへとバトンか引き継がれていくわけだが、当時無敵を誇ったV4エンジンへの憧憬は根強いものがある。それが90年代の終わりに排気量を800ccにかさ上げした新時代のスポーツツアラー、VFRとして登場したときは正直ちょっとがっかりしたものだ。

そこからさらに20年近くが過ぎ、現代の技術とノウハウを注いで進化・熟成を重ねたVFRは、偉大な先達を祖としながらも新たな使命を持ったモデルとして生まれ変わった。かつてのバイク少年が、粋な大人のライダーへと成長したように。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

さて、スタイリングは整然とした美しさの中に精悍さも秘めていて、見た目にも落ち着きがある。シート高はローポジションで815mmと極端に低くはないがV4エンジンのスリムさのおかげで足着きも悪くはない。ライポジはツアラーとスーパースポーツの中間ぐらいの前傾具合で、前後サスペンションもソフトすぎず硬すぎずの程良い感じだ。

ただ、車重が240kg台ということで、取りまわしの重さがやや気になるところ。でも、これにも理由があって、高速巡行での快適性を考慮した本格的なフルカウル仕様で、しかもタンデム用にリアシートやグラブバー、タンデムステップなどの装備もがっちり実用的に作られているためだ。ついスポーティなイメージが先行してしまうが、れっきとした快適高速ツアラーなのだ。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

エンジンはホンダV4ならではのガッツあるパワーと精緻な回転フィールが特徴。特に中回転域に厚いフラットなトルク特性は、街中でのキビキビした走りや高速道路での追い越しなどでも重宝する。まるで右手とエンジンが直結しているかのようなリニアさで後輪が路面を蹴飛ばしてくれるのだ。V4の鼓動感も独特だ。Vツインやシングルのようなドコドコ感ではなく、もっと細かく澄んだパルス感で回転上昇も速い。加えて直4以上に後輪のトラクション感は分かりやすいので、コーナー立ち上がりなどでも安心してスロットルが開けやすい。そして、開け過ぎたときにはトラクションコントロールが作動して危険なスリップを和らげてくれる。つまり、扱いやすく疲れにくい。ツアラーとしての資質を備えたエンジンなのだ。そういえば、レースでもV4はその優れたトラクション性能で他を圧倒したことを思い出した。

もうひとつ感心したのはHYPER-VTECだ。7,000rpmを境に2バルブから4バルブに切り替わるが、そのときのターボ的な加速は他のモデルでは味わえない感覚だ。排気音もジェントル系からワイルド系になるなど、その変わり映えが凄い。最近ではパワーモードなど電気的に出力特性を変化させる仕組みもあるが、こちらは機械的な仕組みなのでそこも興味深いところだ。プラス2馬力の上乗せ分は微妙だが、サウンドは以前よりたしかに弾けるようになった。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

ハンドリングは軽快だが、切れ味鋭い感じではない。取りまわしで感じた車重も良い方向にプラスしているようで、どっしりとして車体剛性も高い感じだ。あくまで安定性重視の方向性らしく、直線でもコーナリングでも地に足が着いたような安心感がある。サスペンションの動きもスムーズで、コーナリング中の車体の姿勢も作りやすいし、なおかつ乗り心地も快適だ。ブレーキも扱いやすく制動力も確実でABSの作動もスムーズ。シフトフィールもホンダらしいカチッとした節度感があり、気持ちよく操作できる。また、新たに12Vの電源ソケットが標準装備されて出先でのスマホ充電にも便利だし、従来からのETC車載器やグリップヒーターもツーリングにはありがたい装備等々、まさにスポーツツアラーとしての熟成を極めた感ありだ。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

VFR800Fはパフォーマンスと快適性を兼ね備えたミドルクラスの高速スポーツツアラーとして、とてもバランスよく完成されたモデルと言える。普段使いから長旅まで、幅広いライダー層におすすめしたいモデルだ。

詳細写真

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

82年登場VF750がルーツの水冷V型4気筒DOHC4バルブ781ccエンジン。高回転・高出力と環境保護対策を両立させるため、バルブリフターに油圧機構を内蔵する直押し動弁系可変バルブ制御システム「HYPER-VTEC」を搭載する。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

マフラーの内部構造を従来の3室構造から2室構造にした異形テーパー形状マフラーを採用し、出力向上とともにV4らしい歯切れの良い重厚なエキゾーストノートを実現。同時にマスの集中化も図られている。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

フロントはTOKICO製ラジアルブレーキキャリパーを備えたABS付きダブルディスクと、プリロードおよび減衰力調整機構を備えたSHOWA製正立フォークの組み合わせ。フロントブレーキディスクハブ、フロントアクスルホルダーはブラックで統一された。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

リアまわりはVFRかレースで活躍した時代からのホンダ十八番、プロリンク式モノショックと片持ち式プロアームの組み合わせ。耐久レースなどでのタイヤ交換における時短など優位性を誇った。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

インテリジェンスを感じさせる端正なフロントマスクは2014年のフルチェンジから採用された。LEDヘッドライトとバックミラービルトイン式のウインカーを装備。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

テールランプとブレーキランプもLEDタイプを採用。ウインカー類も含めてテールカウル内に一体化されて収まるスマートなデザインだ。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

21リットルの大容量フューエルタンク。高さはあるが後端部が絞り込まれたデザインのため、ニーグリップするとスリムに感じる。シルバーメタリックの塗装が美しい。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

虚飾を排したシンプルで機能的なデザインがVFRの魅力。ニーグリップと足着き性にも貢献する独立型ライダーシート、コンパクトだが安定感のあるリアシートなどシート形状にもそれは表れている。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

左カウル部に定格36W(12V3A)までのアクセサリーソケットを新たに標準装備。純正のアクセサリーソケットもオプション設定としてシート下に増設が可能だ。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

左手グリップの手元にあるのがグリップヒーターのスイッチで、クラッチマスターシリンダーの手前にはトラクションコントロールのスイッチも設置される。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

リア側のサスペンションには手で回して簡単に調整できる油圧式リモートプリロードアジャスターを装備する。時計回りが強めるハイ(H)、反時計回りが弱めるロー(L)の設定。

ホンダ VFR800F(2017)の試乗インプレッション

タコメーターをセンターに据えた見やすいレイアウトのコックピット。左側には速度と燃料残量、右側には距離、時間、シフトポジションなどを表示。上部にはトラコンなどのインジケーターが並ぶ。

ホンダ VFR800F(2017) 動画でチェック!

SPECIFICATIONS - HONDA VFR800F

ホンダ VFR800F(2017) 写真

価格(消費税込み) = 138万2,400円
※表示価格は2017年3月現在

「大人のスポーツバイク ~Elegant Sport~」を踏襲しながら、さらに装備を充実させた快適スポーツツアラー。最新型ではマフラーを改良し、電源とETC車載器を標準装備。

■エンジン型式 = 4ストローク 水冷V型4気筒DOHC4バルブ
■総排気量 = 781cc
■ボア×ストローク = 72.0×48.0mm
■最高出力 = 107PS (79kw) / 10,250 rpm
■最大トルク = 7.9kgf-m(77N・m)
■トランスミッション = 6速リターン
■サイズ = 全長2,140mm× 全幅750mm ×全高1,210mm
■車両重量 = 246kg
■シート高 = 835/815mm
■ホイールベース = 1,390mm
■タンク容量 = 20リットル
■Fタイヤサイズ = 120/70-17
■Rタイヤサイズ = 180/55-17

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