スズキ GSX-S1000 ABS
スズキ GSX-S1000 ABS

スズキ GSX-S1000 ABS – 快適で寛容ながらも気分はGSX-R!?

掲載日:2015年08月06日 試乗インプレ・レビュー    

レポート/和歌山 利宏  写真/徳永 茂  記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです

世の中にはレーシングDNAをストリートに落とし込んだとされるモデルは多く存在する。そして、新発売となったGSX-S1000は、それらに対する新指標を提唱しているかのようだ。

快適で寛容ながらも
気分はGSX-R!?

GSX-S1000を端的に言えば、GSX-Rのネイキッド版だ。エンジンは先代のGSX-R用で、スイングアームは現行GSX-Rから流用、フレームも専用設計ながら、それらGSX-Rの思想を汲んでいる。

GSX-S1000が発表された昨秋のインターモトで、プロジェクトリーダーの佐原さんに話を聞くと、「スーパースポーツをネイキッド化したモデルは多くありますが、それだけに終わることなく、ストリートスポーツとして最適化させたかったんです」とのこと。

もちろん、これは我々の望むことでもある。GSX-Rをネイキッドにしただけとか、諸性能をトーンダウンさせただけでは、魅力に欠けるからだ。ただ、スズキが作るバイクだけに、ネイキッドであってもサーキット性能に不足はないだろう。となると、トーンダウンによって、多くの人が扱い切る面白さを堪能でき、さらにバイクとのやり取りが濃厚なものであってほしい。と、理想像を描いてみても、それをどのように実現できるのか具体的にイメージできず、その点で興味が尽きなかった。

そして試乗したS1000。ちょっと感激モノである。ストリートスポーツとしての魅力が、期待を超えた形で具現化されていたのだ。

まず、ライディングポジションが快適な自然体で、スポーツできるフィット感もある。ハンドル切れ角もスーパースポーツの水準より大きく、取り回しもしやすい。エンジンも低中速が豊かでスムーズで扱いやすい。

それにエンジンは上質で、回転フィールも心地良い。ピストンまわりが軽量化された効果もあるだろうが、それ以前に、この3分割クランクケースは剛性も高いみたいで、カチッとした上質感がある。

軽くスラロームすれば、ハンドリングの素性の良さが見えてくる。入力に忠実に反応し、寝かし込みや舵角の入り具合に応じて、車体からフィードバックが返ってくるのだ。サスペンションが荷重状態に応じて常に手応えを伝えてくれることもあるが、感心させられるのは、フレームのしなり感の絶妙さである。GSX-Rよりもフレームは柔軟で、表情は豊かだ。その分、エンジンの剛性部材としての依存度が高いはずで、ねじり中心がピボットとヘッドパイプを結ぶ中央に近く、しなっても軸はブレない感じで安定。完成度の高いダブルクレードルタイプかのような自然さでもある。

だから、コーナーを攻めても、フルバンクに達する過程において、マシンの状態と接地感が如実に伝わってくる。おかげで自信が持てて、楽しい。これはレーシングマシンでも求められることだが、それがストリートスポーツにおいて濃厚に表現されているというわけだ。

タイヤも、この表情と接地感の豊かさに、ひと役買っていると感じられる。専用設計のD214は、こうした良さをさらに高水準化させることにも留意しマッチングが図られたに違いない。すると、リプレイスタイヤでは、良さがあまり期待できないことになりかねないが、それも心配ないだろう。車体側に素性の良さが作り込まれているからだ。

エンジンもまた、他にあまり例を見ないスポーツ性を表現している。低回転トルクが豊かなだけでなく、そのトルクは淀みなく、9,500rpmのピークに向かって、上昇し続ける。145psもその結果であるかのようだ。スポーツライディングでは、トルクの上昇カーブに乗ってのトラクションコントロールが求められるが、これはワイドレンジにスポーツできるわけだ。走りの写真を撮影したコーナーは、攻めると2速を使うことになるが、そこを6速で通過しても、メリハリを作ってスポーツできるほどである。

そうやってワインディングを走っていて、気分はGSX-Rに乗っているかのようであった。その後、走りの写真を見たら、乗っていたのがファイタースタイルのモデルだと分かり、意外に思った次第である。

GSX-RのDNAを公道に還元した

先代K7(2007~08年型)GSX-R1000用をベースにしたエンジンを、専用フレームに搭載するスポーツネイキッド。スイングアームは現行GSX-R用で、K7用よりも32mm長い。ホイールベースはK7の1,415mmよりも45mm長い1,460mmで、キャスター角は23度45分から25度へと寝かされている

GSX-S1000の詳細写真は次ページにて

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