掲載日:2014年04月10日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一 動画/倉田 昌幸 衣装協力/HYOD
『隼(ハヤブサ)』が生まれた1990年代は、最速マシンの時代であった。カワサキZZR1100やホンダCBR1100XXなどが当時の最先端技術と巨大なパワーにモノを言わせ、天井知らずの最高速競争を繰り広げていた。300km/hという数字がひとつのマイルストーンであり、各メーカーが威信をかけてその“魔の領域”に挑んでいた時代である。こうした中、20世紀も終わろうという1998年、衝撃的なデビューを果たしたのが『GSX1300R 隼』であった。実測で初めて300km/hオーバーを記録した量産市販車としてギネス認定を受けたり、当時のWGP500ccマシンと同等のラップタイムで欧州のサーキットを走った等々、隼の栄光を物語るエピソードには事欠かない。あれから15年の月日が経った今、ついに隼の日本仕様が誕生した。しかもフルパワーというから、期待もひとしおである。
今回発売された隼の日本仕様のトピックスは2つ。ひとつは欧州仕様と同じ最高出力145kW(197PS)と最大トルク155N・m(15.8kgf・m)を実現していること。もうひとつは国内の2輪車で初めてETC車載器を標準装備している点である。
隼は元々、欧米向けの高性能ロードスポーツモデル『GSX1300R Hayabusa』として1998年にデビュー(発売は1999年)。“アルティメイトスポーツ=究極のスポーツバイク”をコンセプトに開発され、その圧倒的な動力性能と優れた空力特性によって300km/hオーバーの世界を現実のものとした最初のマシンとして知られる。
2008年に大幅な仕様変更を受けた2代目隼は排気量を拡大し、エアロダイナミクスを向上。ドライバビリティを高めるSDTV(スズキ・デュアル・スロットル・バルブ)やバックトルクリミッターを採用する他、ライダーの好みに応じて出力特性を3モードから選択できるS-DMS(スズキ・ドライブ・モード・セレクター)を新たに搭載した。隼の車体面に注目すると、出力向上に合わせてフレーム強化とショートホイールベース化が図られ、サスペンションも前後KYB製フルアジャスタブルタイプに強化されている。
隼は2013年にマイナーチェンジにより、フロントブレーキにブレンボ製モノブロック・ラジアルマウントキャリパーを装備し、同車初のABSが搭載されるなど“止まる”性能をアップグレード。なお、日本仕様の正式名称は『隼』となるが、テールカウルには”隼”ではなく初代以来の『GSX1300R』のロゴが入る。