VIRGIN TRIUMPH | トライアンフ トロフィー 試乗インプレッション

トライアンフ トロフィーの画像
TRIUMPH TROPHY

トライアンフ トロフィー

トロフィーの名が
10年ぶりに復活

かつてトライアンフが、1991年に “新生トライアンフ” として英国・ヒンクレーを拠点として復活した際、その主幹となるツーリングモデルとして 『トロフィー』 は登場した。当時のトライアンフは徹底した部品の共有化による生産の効率化を図る “モジュラーコンセプト” を導入し、トロフィーにも共通の車体に並列3気筒 900cc および並列4気筒 1,200cc を搭載する、『トロフィー900』 と 『トロフィー1200』 という2つのバリエーションモデルが用意されたのだった。

その後、モデルレンジの統廃合を行う中で、トロフィーというモデル名は2003年に一旦消滅するが、今回10年の時を経て完全新設計のブランニューモデルとして復活したのである。ハイテクノロジーを満載したラグジュアリーツアラーとして蘇った、ニュー・トロフィーの実力を確かめてみたい。

トライアンフ トロフィー 特徴

トライアンフ トロフィー 写真
トライアンフ トロフィー 写真
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最新の電子制御に支えられた
3気筒ハイテクツアラー

新型トロフィーを開発するにあたって、トライアンフでは大規模なユーザー調査を行ったと言う。そこで浮き彫りになったのは、ユーザーニーズの変化だった。現代のユーザーはツアラーに対して、スポーツ性能より “快適性や安全性” を求めることや、“メンテナンス性” を重視していることが判明した。これらの結果から導き出された新型トロフィーのコンセプトは、最新のハイテクと快適性を備えた、シャフトドライブの “ラグジュアリーツアラー” だった。

トロフィーに採用されるエンジンは、タイガーエクスプローラーと共通の水冷並列3気筒排気量 1,215cc。134ps/8,900rpm のパワー、120Nm/6,450rpm の余裕のトルクを発揮する、トライアンフ最新のパワーユニットだ。ちなみに 137ps を発生するタイガー用に比べると、吸排気系の見直しなどにより、若干マイルドな出力特性が与えられている。

駆動系にもクランクシャフトの振動を打ち消すバランスシャフトや、トランスミッションからドライブシャフトへの動力伝達の衝撃を吸収するトーションダンパーシステムが採用されるなど、スムーズな乗り味を追求しているのも特徴だ。

シャーシは軽量高剛性なアルミツインスパーフレームに、トライアンフ初となる WP 製前後サスペンションを装備。フロントは伸び側ダンパー調整機構を備えたφ43mm倒立フォーク、リアは油圧式プリロード調整および伸び側ダンパーを備えるなど、幅広いセッティングを可能にしている。

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注目したいのは電子制御テクノロジーの進化だ。新型トロフィーには、タイガーエクスプローラー同様 “ライド・バイ・ワイヤー” 方式が採用され、トラクションコントロールやクルーズコントロールなどの機能が盛り込まれるだけでなく、エンジンの効率化により燃費向上も同時に果たしている。また、ブレーキにもトライアンフ初となる電子制御式の前後連動 ABS を標準装備している点もポイントだ。

これら以外にも、メモリー機能付きの電動スクリーンやタイヤ空気圧モニタリングシステム、12V電源ソケット、片側容量31リットルのツインパニアなど、快適なロングライドを可能にする便利な機能が標準装備されている点も見逃せない。技術的に最も進化したトライアンフ、それがトロフィーなのだ。

トライアンフ トロフィー 試乗インプレッション

ラグジュアリーな旅とともに
スポーティな走りも楽しめる

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見た目はトライアンフらしい、端正でスマートなデザインが印象的。タイガーエクスプローラーのような威圧感はなく、初対面でもすんなり溶け込める感じだ。跨ってみると、思いのほか足着きは良い。日本仕様でシート高が 790mm ということもあるだろう。同じツーリングファミリーの 『スプリントGT』 と比べても、シートは低くハンドルは高めで楽な姿勢だ。

取り回しはさすがに重いが、走り出すと意外と軽い。それどころか “ヒラリ感” さえある。直接ライバルとなるであろう、BMW R 1200 RT に比べるとやや重心位置が高い感じで、落差を生かして倒し込む軽快感がある。その巨体からイメージするよりはるかにスポーティな印象だ。最近のトライアンフで注力している、ディメンションチューニングの効果も大きい。最近試乗した 『タイガースポーツ』 や新型 『ストリートトリプル』 と同じく、フロントの分布荷重を高めて前輪の接地感を出すとともに、コーナリング初期における旋回力を高めている。それはライダーにとって安心感と曲がりやすさとして感じられるはずだ。

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前後サスペンションは程良くダンピングが効いていて、スムーズで気持ちの良い動きをする。WP製と聞いて納得。同じエンジンを積むタイガーエクスプローラーより乗り心地にもグレード感がある。ただし 300kg 近い重量だ。あまりいい気になって “スパンッ!” と倒し込むと、慣性力が顔を出して揺り戻しがくる。ペースを上げてワインディングを走る場合は、サスペンションを調整したほうが良いだろう。今回は試すことができなかったが、今後発売される予定の上級グレードモデル 『SE』 には、WP製の電子制御サスペンションが搭載されるというから楽しみだ。

エンジンは極めてパワフル。134ps のピークパワーもさることながら、特筆すべきはトルク特性。トライアンフが誇る3気筒エンジン特有の超フラットトルクは、1,215cc の排気量を得てさらにそのメリットが際立っている。2,500~9,500rpm の回転域において、なんと最大トルクの 80% 以上である 100Nm を超えるトルクを発生させるのだ! 『デイトナ675』 の最大トルクが 72Nm であることを考えれば、その凄さをイメージできると思う。何速何回転からでもアクセルひとつで加速できるワイドなパワーこそが、トロフィーの真骨頂だ。

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一方で、出力特性はタイガーエクスプローラーより穏やかで、スロットル開けしなのツキも1枚オブラートに包んでいる感じはある。排気音もサイレンサーでだいぶ消音されているようで、タイガーのそれと比べるとむしろジェントルと言える。ただし、スロットル操作自体は非常に軽いので慣れが必要かもしれない。トロフィーには “ライド・バイ・ワイヤー” 方式が採用されている。これはスロットル開度をセンサーで感知し、ECM(コンピュータ)を介して F.I. に燃料噴射量とタイミングを指令する仕組みだが、ワイヤーレスであるが故にスロットルドラムを回すときのフリクションが無い。手首が疲れないのはありがたいことだが、長年ワイヤーの重さに親しんできたクセで、つい回し過ぎてしまう。キャブレターから F.I. に変わっていったときと同じで、ライド・バイ・ワイヤーは今後の主流になるはずだから、この感覚に慣れていくべきだろう。

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最近つくづく思うのは、電子制御テクノロジーの進化だ。今までなら乗り手を選んだ大型ツアラーを、より安全で快適な乗り物へと変えた。トロフィーもその恩恵に預かった最新モデルである。巨大なトルクは 190 のワイドタイヤをもってしても、スロットル加減ひとつで破綻させる。しかしそこで助けてくれるのが、トラクションコントロールだ。普段から積極的に使うものではないだろうが、たとえば雨の日や滑りやすい路面など、いざというときのセーフティネットとなってくれる。タイトコーナーの立ち上がりでわざと乱暴にスロットルを開けてみたが、後輪から伝わるわずかな振動とともに、駆動力が間引かれているのが分かる。トラクションコントロールが作動中であることを知らせるメーター内のインジケーターによってもそれは確認できるはずだ。

また、トライアンフでは初となる前後連動 ABS も非常に使いやすくて便利だ。ブレーキペダルを軽く踏むとリアブレーキのみ作動し、強く踏むと前後が作動。ブレーキレバー操作でフロントのみ作動する仕組みだ。たとえばUターンなどでは、リアブレーキを軽く引きずると安定するが、そこでフロントまで作動してしまうと逆に扱いずらくなる。でも、トロフィーの方式だとUターンや低速バランスではリアだけ作動させることが簡単にできるし、ワインディングではペダルの踏み加減によってフロントも連動させながら、けっこうなペースで走れてしまう。さらに強いブレーキが必要なときは右手でレバー操作を加え、最終的にグリップ限界を超えたときは ABS がサポートする。実際の使い勝手に合わせてよく考えられたシステムだ。トラクションコントロールや前後連動 ABS と同じことを、人間技で、しかも 300kg のマシンでやろうとしても、到底無理である。その意味でも、電子デバイスは現代の大排気量モデルに必須装備と言っても良いだろう。

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4輪高級車を思わせるメモリー機能付きの電動スクリーンは風の巻き込みも少なく、オーバードライブ設定の6速とクルーズコントロール、余裕しゃくしゃくの大トルクにより高速道路は快適そのもの。独自の緩衝機構を備えた大容量ツインパニア、12V 電源ソケット、一体型オーディオシステム(オプション)、実質メンテナンスフリーのシャフトドライブなど、ロングツーリングをゴージャスかつ快適に楽しませてくれる装備の数々も大きな魅力だ。ひとつ欲を言えば、デザイン面でもう一歩突っ込んでほしかった気もしないでもないが…。アドベンチャーツアラー全盛時代に、あえて挑戦するかのようにラグジュアリーツアラーとして復活を遂げた、新時代のトロフィーにまずはエールを送りたいと思う。

トライアンフ トロフィー の詳細写真

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パワーユニットはタイガーエクスプローラー用に開発された水冷3気筒DOHC4バルブ1,215cc。最高出力は134ps/8,900rpmで、タイガー(137ps/9,000rpm)に比べてツアラーらしいマイルドな出力特性が与えられている。6速のギアレシオも異なり、よりハイギアード設定になっている。
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右1本出しのマフラーはサイレンサーの内部構造もタイガーとは異なり、ストレート構造のタイガーに対してトロフィーは多段膨張式を採用し、より消音効果を高めている。
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フロントブレーキはφ320mmツインフローティングディスク+ニッシン製4ピストンキャリパーを採用。ブレーキにはトライアンフ初となる前後連動ABSシステムを採用し安全性を高めている。
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シフトショックを吸収するトーションダンパーを装備したシャフトドライブ一体型片持ち式アルミキャスト製スイングアーム。リアブレーキはφ282mmシングルディスク+ニッシン製2ピストンスライディングキャリパーを採用。
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リアサスペンションは油圧式プリロード、伸び側ダンパー調整機構を備えたWP製リンク式モノシッョクを採用。フロントも同じくWP製φ43mm倒立フォークで伸び側ダンパー調整機構を備える。
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エアロダイナミクスを追求した電動スクリーンは、エンジンを再始動させると自動的に最新の設定位置に調節されるメモリー機能を搭載。最大で高さ164mmアップできる。
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グレード感漂うコックピット。アナログタイプの2連メーターに挟まれる形で収まるディスプレイには、トリップコンピューター、燃料残量警告、サービスインターバルインジケーター、シフトポジションインジケーター、気温計、路面凍結警告などを装備。
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左側グリップまわりには、電動スクリーンのスイッチやセンターディスプレイに表示されるインフォメーションの切り換えボタンなどが並ぶ。シートヒーター、グリップヒーターはオプション装備。
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右側のグリップまわりにはクルーズコントロール用のスイッチ類を配置。フォークトップに見えるのは伸び側ダンパーアジャスターで、工具なしで調整できるタイプ。
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左側のグローブボックスには、クレジットカードなどを収納するのに便利なカードホルダーと12Vソケット電源を装備。
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立ちゴケなどでダメージを受けやすいバックミラー先端部分には、衝撃を緩和する柔軟な樹脂素材を採用する。パーツのみ交換可能でリペアコストの負担を減らす狙いもある。
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トライアンフ史上最も広い面積を確保したというシート。前後ともスペース、肉厚に十分なゆとりがあって快適だ。ライダー側はせり上がったフロント部分とリアシートとの段差によりホールド感も高い。
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ライダー側のシートは、裏側のフックにシャフトを引っかける位置を変えることで2段階に高さ調整が可能。シート高は国内仕様が770/790mm。本国仕様は800/820mmの設定となっている。
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片側31リットルの容量を持つツインパニアを標準装備。ケースをフローティング構造とし、バイクの挙動に合わせて左右5度まで、振り子のように動くことで外乱などの影響を低減する“ダイナミック・ラゲッジ・システム”を採用。

SPECIFICATIONS –TRIUMPH TROPHY

トライアンフ トロフィー 写真

価格(消費税込み) = 229万8,975円

トライアンフ伝統の名を持つトロフィーが、電子デバイス満載の3気筒ラグジュアリーツアラーとして復活。トライアンフ初の前後連動ABSやWP製前後サスペンションなどが投入された意欲作。

  • ■エンジン型式 = 水冷4ストローク並列3気筒 DOHC 4バルブ
  • ■総排気量 = 1,215cc
  • ■ボア×ストローク = 85.0×71.4mm
  • ■最高出力 = 99kW(134PS)/8,900rpm
  • ■最大トルク = 120N・m/6,450rpm
  • ■トランスミッション = 6速
  • ■サイズ = 全長2,235×全幅975×全高1,435~1,555mm
  • ■車両重量 = 297kg
  • ■シート高 = 800/820mm(日本仕様は770/790mm)
  • ■ホイールベース = 1,542mm
  • ■タンク容量 = 26リットル
  • ■Fタイヤサイズ = 120/70-17
  • ■Rタイヤサイズ = 190/55-17

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