カワサキ ZX-14R 試乗インプレ・レビュー

カワサキ ZX-14R
カワサキ ZX-14R

カワサキ ZX-14R

掲載日:2012年04月19日 記事カテゴリ 試乗インプレ・レビュー

取材・文/佐川 健太郎  撮影/渡邉 英夫(MOTOBASIC

カワサキが追い求めてきた最強伝説
今の時代におけるその価値とは…

Z1 から GPZ900R、ZZRシリーズに ZX-12R …。いつの時代でも常に「世界最強最速」の座を守ることが運命づけられてきたカワサキのフラッグシップモデル。その最新版が 『ニンジャZX14-R』 である。ただ、ひと昔前とは社会状況もユーザー意識も変り、単に速いだけでは評価されない時代になった。現代のニーズに対応すべくさらなる進化を図った ZX-14R は、排気量アップでゆとりのパワーと快適性を。トラクションコントロールとパワーモード、ABSにより、扱いやすさと安全性をもアップグレードさせてきた。カワサキが誇る伝家の宝刀、その真価のほどをとくと確かめてみたい。

カワサキ ZX-14R 特徴

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排気量拡大とトラクションコントロールにより
戦闘力を大幅にアップ

カワサキ ZX-14R 写真常に「世界最強最速」を目指してきたカワサキのフラッグシップスポーツの最新モデル、ZX-14R が熟成に留まらない大幅なバージョンアップを果たした。伝統の水冷直4エンジンは、排気量を 89cc 増やして 1,441cc に拡大。吸気・排気バルブとポート形状の変更、シリンダーヘッド改良により高圧縮型としたことでエンジンパフォーマンスを向上。 従来モデルと比べ、全回転域においてトルク向上と高速回転域における大幅な性能向上を実現している。また、エンジンの高出力化に伴い、アルミ製モノコックフレームも剛性を見直し、ステアリングヘッドを強化することでハンドリングを向上。スイングアームピボット周辺構造にも変更を加えるなど、フレーム剛性を高めているのが特徴だ。

 

足回りは、前後サスペンションのスプリング設定と減衰特性の変更により、超高速域での安定性に加えてスポーティな走りにも対応。 ラジアルマウントキャリパーとラジアルマスターシリンダー、放熱性に優れるペタルブレーキディスクの組み合わせにより、強力な制動力と優れたブレーキフィールを実現。ABS システムのサポートを受けてより安全に進化した。

 

また、ZX-14R には最新スペックの KTRC (カワサキ・トラクション・コントロール)が搭載され、ライディング状況に応じた3つのモードによって、路面状況に応じて安定したトラクションを確保。さらに、フルパワーとローパワーの2つのモードから選べるパワーモード機能により、ライダーのスキルや好み、シチュエーションに合わせて最適なモード選択が可能になった。

 

スタイリングも一新され、空力特性もさらに向上。高性能化に見合ったよりアグレッシブで洗練されたボディラインと精悍さを増したフロントマスクが与えられている。

カワサキ ZX-14R 試乗インプレッション

速さ、快適さ、安全性
そのすべてがトップクラス

カワサキ ZX-14R 写真目の前に現れたフルカバードの巨体。薄暗いガレージの隅に横たわるその姿は“黒い悪魔”を連想させる。従来型より彫りが深くエッジの効いたフォルムになり、顔つきも一段と鋭くなった。見ただけでより強力にアップデートされた機体であることを理解させてしまう説得力が ZX-14R にはある。

 

エンジン始動。排気量 1,441cc が奏でる図太い排気音が響き渡る。跨ってみるとシートは意外と低く足着きは良好だが、ハンドルはやや遠い感じで、腕に余裕を持たせようとすると上体を軽く前傾させた姿勢になる。スーパースポーツとツアラーの中間的なライポジだ。

 

ギアをローに入れ、クラッチをじんわりリリースすると、アイドリングだけでガレージの坂をぐんぐん登っていく。それだけでもエンジンの力量が分かるというもの。

 

街を流してみるが、スロットルはほとんど開けなくてもいい感じ。何も意識しなくても、排気量にものを言わせてスルスルと前に出てしまう。まるで大排気量のアメ車のようだ。

 

カワサキ ZX-14R 写真大柄で重量感のある車体は、混雑した市街地ではさすがに本来の機動力を発揮できないが、そこは余裕でどっしり構えたいところ。こちらにはその気はないのに、信号待ちで横に並んだバイクが前に出ようとしないのには笑える。皆知っているのだ。ZX-14R が世界最速マシンであることを。

 

高速道路は ZX-14R の独壇場だ。加速しながら本線に合流していくが、いつもと流れる景色が違う。スーパースポーツの軽さを生かした鋭い瞬発力とは異なる、エネルギーの塊のような重厚な加速感! 「ちょっと待てよ…」と速度計に目をやると、ああ打ち止め。1速でちょっと引っ張るだけで、法定速度を遥かに上回る速度に達してしまうため、とにかく自制心が必要だ。ただ、その加速感も決して暴力的なものではなく、どちらかといえば穏やかと表現できるほどよく調教されている。新型モデルからパワーモードが装備され、「ローパワー」では 75% にパワーを押さえられているため、それはさらに顕著になるのだが、「フルパワー」でも従来型以上に力強くかつ扱いやすい出力特性になっている。いつもながら、技術の進歩というのは素晴らしいと思う。

 

カワサキ ZX-14R 写真あり余るパワーは実用面では快適性に大いに貢献する。高速巡航がとにかく楽で疲れないのだ。テストでも都心からワインディングまで 100km ほどの距離を移動したが、飛ばしているわけでもないのに、いつもより時間が短く感じる。安定した車体としなやかなサスペンション、回さなくても速いエンジン、優れたエアプロテクションなどのお陰だろう。しかしながら、本当の意味での空力特性は完全に最高速狙いで、低いスクリーンに潜り込むように、上体を伏せたときに風切り音は静まり返り、上空をきれいにエアフローしていく感じ。逆に上体を起こしたツーリングポジションだと適度に風を感じる。このあたりの設計思想からも、ZX-14R は真の最速マシンであることがうかがえる。

 

ハンドリングは正しくメガスポーツのもの。軽快感の中にもしっとりとした落ち着きがあり、コーナーの倒し込みでも車体の反応が鋭すぎないので安心できる。軽量級スポーツモデルのようにヒラヒラと切り返すことはできないが、重量のある分、どっしりとした接地感を伴った手応えのあるコーナリングを楽しめるはずだ。従来型の ZZR1400 は、ピッチングによる姿勢変化を生かしたスーパースポーツ的なハンドリングが魅力で、新型にもその血筋は受け継がれているが、より安定志向が強くなったような気はする。スペックデータ的にもホイールベースが 10mm 伸び、重量が増えていることからも、スケールアップした排気量とパワーに見合った、余裕のある車体が与えられたと考えていいだろう。

 

カワサキ ZX-14R 写真特筆すべきはトラクションコントロール 『KTRC』 だ。実際に試してみたが、最も介入度の高い「レベル3」に設定すると、マンホールや水たまりでちょっと後輪が空転しただけですぐにパワーカットされてグリップを取り戻してくれるし、コーナー立ち上がりで不用意にスロットルを開けすぎたときなど、点火を間引いたような感じでリアスライドをコントロールしてくれる。個人的に最も自然に感じたのは「レベル1」。たとえば加速中、あり余るパワーにフロントが浮き気味になったときでも、KTRCが適度にパワーをコントロールして唐突なフロントアップを防いでくれる。しかも、トラクションコントロールが作動していることをメーター内のバーグラフがリアルタイムで教えてくれるのだ。KTRC に加えて ABS も装備されているので安心だし、これら最新デバイスによって、精神的なバックアップが得られることが大きいと思う。200馬力オーバーのマシンを安全に乗りこなすためには、もはや必要不可欠な装備だろう。

 

ZX-14R のスペックを本気で試せる場所など日本の公道には存在しない。否、世界を探しても無いかもしれない。でも、それでいいではないか。この地上で最も速いバイク、『量産市販車世界最速』 という称号。それだけで所有するに値すると思うのだ。

やさしいバイク解説:カワサキ ZX-14R

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SPECIFICATIONS – KAWASAKI ZX-14R <ABS>

カワサキ ZX-14R 写真

価格(消費税込み) = 163万2000円

カワサキが誇る「世界最速」のメガスポーツ。最新型は新たに『Ninja ZX-14R』のネーミングが与えられるとともに排気量を拡大。トラクションコントロールとパワーモードを新たに装備するなど、さらなる進化を遂げた。

■エンジン型式 = 水冷4ストローク DOHC直列4気筒

■総排気量 = 1,441cc

■ボア×ストローク = 84.0×65.0mm

■最高出力 = 200HP/10,000rpm

■最大トルク = 16.6kg・f/7.500rpm

■トランスミッション6速

■サイズ = 全長2,170×全幅770×全高1,170mm

■車両重量 = 268kg

■シート高 = 800mm

■ホイールベース = 1,480mm

■タンク容量 = 22リットル

■Fタイヤサイズ = 120/70-17

■Rタイヤサイズ = 190/50-17


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