アプリリア TUONO V4R aPRC
アプリリア TUONO V4R aPRC

アプリリア TUONO V4R aPRC – スーパーバイクを兄弟に持つ過激なネイキッドモデル

掲載日:2011年12月22日 試乗インプレ・レビュー    

アプリリア TUONO V4R aPRCの試乗インプレッション

アプリリア TUONO V4R aPRCの画像

快感極まるパワーフィーリングと
運動性に優れたハイクオリティなシャシー

TUONO V4R aPRC のエンジンは、はっきり言って “速い”。そのうえ狭角 V4 エンジン独特の鼓動感が、実に気持ち良い。スロットルを開き、パルス感を感じつつ車速を上げていくのは悦楽の極み。「官能的」という表現は TUONO のパワーフィーリングを表すためにあるのかもしれない。

出力マップはレース用の「Trac」、フルパワーの「Sport」、出力を全域で20%カットし、スロットルレスポンスが落とされた「Rain」の3種類が設定されている。実際に全てのマップを試してみたところ、確かに「Rain」マップではレスポンスが穏やかになる。だが、出力のダウンはさほど気になるレベルとは感じられなかった。むしろワインディングでは、レスポンスが優しい「Rain」マップは、思い切りスロットルを開けられて楽しく走ることができた。

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だが、これはサーキットに持ち込めば印象が変わるだろう。更にいえば、aPRC を搭載しているのだから、過敏なレスポンスに怯える必要はない。マシンを信じてどんどんスロットルを開いていくのが、パワーを有効に引き出せる走り方なのだ。さて、この aPRC だが、実に良く働いている。介入の度合いを最大にすると、普通に発進しただけでも作用する。我々が思っているより、後輪は頻繁にスリップしているようだ。もっとも、それが解るのはインジケーターが点滅するからで、aPRC の介入はまず体感できない。それほど自然に作用するのだから、完成度は相当に高い。

エンジンで不満に感じたのは、レブリミットが低いこと。8,500回転でシフトランプが点滅し、9,500回転以上には回ろうとしない。タコメーターの文字盤は15,000回転まで切られているのだから興冷めだ。すぐレブリミットに達してしまうせいもあるが、レブリミット付近のパワー感は中速域に比べ弱い。これは、日本仕様のパワーが抑えられているためなのだろう。日本仕様の TUONO は最高出力 106ps、対してフルパワー仕様では 167ps を発揮する。回り切らないようにすることで、パワーを抑えているようだ。

アプリリア TUONO V4R aPRCの画像

だからといってパワー不足を感じるわけではない。スペック上の最高出力で TUONO を上回るバイクはいくらでもあるが、体感的な速さでは劣るどころか TUONO の方が速く感じるほどだ。TUONO の走りはそれほどエキサイティングで、特に中間加速の気持ち良さは筆舌に尽くし難い。とにかく一度乗って欲しい。これほどまでにスロットルを開けるのが楽しいバイクは、そうそうない。

剛性感が溢れるシャシーも好ましい。専用設計のフレームは、安定性を高めた設定だが、十分以上に俊敏な運動性を示す。サスペンションは、前後ともダンピングが効いており、スロットルを閉じたくらいではピッチングを起こす気配もない。その分、ハードブレーキングでも “腰砕け” になることなく、荷重をしっかりと受け止めてガッシリとした安定感を保ったままコーナーに飛び込んでいける。2次旋回も強力で、マシンを寝かせたままスロットルを開けていくと、狙ったラインに向けグリグリと向きを変えていく。この時、バイクを操っているというフィーリングが実に強く、とても面白い。ブレーキのコントロール性の高さも好感触だ。

アプリリア TUONO V4R aPRCの画像

だが、安定感を向上させたという割には高速のスタビリティは物足りない。ギャップを踏んでも暴れることはないし、不安定というわけではないのだが、ステアリング操作に敏感に反応するせいか気を抜けない部分があるのだ。メーターバイザーの位置が低いので風圧も相当キツい。小排気量のレーサーに乗るように、上体を折り畳まなければメーターバイザーの恩恵は受けられない。これは前方の視認性も落ちるし、ストリートの走り方として現実的ではない。サスペンションが硬く、乗り心地も良いとはいえないので高速クルージングには向かないようだ。やはり TUONO は攻める走りでこそ活きる。

また、ネイキッドだからといってユーティリティの高さは期待しないで欲しい。薄く硬いシートは1時間も走ればお尻が痛くなってくるし、ハンドルの切れ角も小さいので取り回し性もいまひとつ。燃費もあまり良いとはいえない。もっとも、燃費の方はスロットルを開ける誘惑に抗えないことが大きな原因ではあるのだが…。なんにせよ、そういうつまらない事柄を気にするのなら TUONO は買わない方がいい。コイツは生粋のスポーツバイク、ワインディングを駆け抜け、サーキットを思い切り攻めるためのバイクなのだ。万能性には欠ける、だがその割り切った作り込みにより、TUONO は類い稀なライディングプレジャーが持つに至ったのだと考える。そして、その「走るのが楽しい」という一点だけでも十分以上に価値がある。TUONO V4R aPRC、本当に面白いバイクである。

アプリリア TUONO V4R aPRCの詳細写真は次ページにて

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